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早慶W合格者、早稲田への進学者数が慶應を逆転?早大、大学改革が魅力を創出

文・取材=海老エリカ/A4studio
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早稲田大学の大隈講堂(「Wikipedia」より)

 難関私立大学として名を馳せる早稲田大学慶應義塾大学。早慶合格に向けて必死に努力を重ねた受験生のなかには、見事両校の合格を勝ち取るW(ダブル)合格者も多く出てくる。そんな早慶W合格者たちは、早稲田か慶應、どちらの大学を選ぶのか。

「早稲田と慶應」を特集した「AERA」(朝日新聞出版/2021年12月13日号)によると、平成の時代は慶應を選択する人が多かったそうだ。だが、それが現在は早稲田が巻き返しているというのである。いったいなぜ、このような逆転現象が起きているのか。

 そこで今回は、早慶逆転現象の原因を知るべく、大学通信の常務取締役、安田賢治氏に話を聞いた。

昭和から平成、そして令和へ……早慶の人気の変遷を紐解く

 今回のような早慶の逆転現象は、これまでにもあったことだという。

「実は昭和の時代では早稲田を選ぶ人が比較的多かったんです。特に地方の受験生は、スマートなイメージを持たれていた慶應より居心地の良さで早稲田を選ぶ人が多かったようですね。しかし、平成に入ると今度は慶應の人気が上がっていきました。

 その原因の一つとして考えられるのが、慶應が1990年にSFC(湘南藤沢キャンパス)を設立し総合政策学部、環境情報学部といったまったく新しいコンセプトの学部を新設したことです。それまでなかったような学部をいち早くつくったうえに、学生全員にパソコンをもたせて授業をする体制をとり始めたことから多くの注目を集め、慶應の人気が高まっていきました」(安田氏)

 だが、そんな慶應は近年、早稲田に比べて“ある点”が不足しているという。

「近年は、令和に入ってから特に慶應はグローバルイメージが薄まったのではないかと感じますね。大学全体でグローバルな取り組みをしているとは公表しているものの、慶應には“国際”や“外国語”といった名前がついている学部は存在していません。一方で早稲田には2004年に国際教養学部が設立されます。国際教養学部は全授業が英語で行われており、留学が必須の学部でもあります。加えて、学生の約半分が留学生です。

 グローバルが意識される現代、早稲田のこうした改革の取り組みは、世間の需要に合致したのでしょう。昭和時代にあった早稲田のバンカラなイメージからの脱却に一役買ったのには、こうした戦略があったわけです。もちろん、グローバルな取り組みをすることは今の時代ある種、当たり前になってきてはいますが、それが中心となった学部が見えると人気は高まりますよね」(安田氏)

早慶W合格者が早稲田を選ぶ要因は幾多の改革にあった

 もちろん慶應でも学部改革に関して力は入れているようだが、早稲田など他大学とはとは一味違っている印象があるという。

「現在慶應は、共立薬科大学と合併したり、東京歯科大と合併予定であったりと医療系に力を入れているように感じられますね。ですが、慶應の受験生の大半は文系です。確かに大きな改革をしているとはいえ、慶應を目指している文系学生からすれば、“よし、受けられる学部が一つ増えたぞ”というような、受験願望を高めてくれる喜びは少ないでしょう。

 同じく文系の受験者が多い早稲田が、文化構想学部や国際教養学部を新たに設立し、文系学部の改革を進めていることに照らしても、慶應側の狙いは目先の受験生ではなく将来の大学の在り方を考えての改革なのでしょう。ですから、どちらも魅力的な大学だというのは前提ですが、今、比較的に早稲田に惹かれる学生の割合が多いのは自然な流れだと考えています」(安田氏)

 また、早稲田は単に学部改革を行うのではなく、受ける受験生の“併願意識”を刺激しているという。

「文系学生となると、経済学部を受けたら同じ社会科系統ですから商学部も受けておこうと併願する人も増えます。しかし、理系は医学部と理工学部を受けようとはならないでしょう。医学部を目指している人は医学部を中心に受けますよね。薬学部を目指している人は薬学部を中心に受ける。早稲田は文系学部が多いので、自然と併願する生徒も多くなり、志願者も増えるのです」(安田氏)

受験方式改革では早稲田と慶應どちらも選別に成功している

 だが、受験方式の改革という点では、早稲田も慶應も共に革新的だったという。

「早稲田は、文系では政治経済学部だけに大学入学共通テストで数学を導入しました。これによって志願者は3割減ってしまったのですが、同時に政経への第一志望者が増加する結果になったのも確かです。これはつまり数学を課すことによって、受験生のなかでは文系でありながら数学を勉強してでも政経に行きたいという志望度が高くなったわけですね。このような、他の私立大学にない科目を課すという改革を行うと、とりあえず政経も受けておくか、というマインドの受験生は減りますが、一方で第一志望者が増える傾向が出てくるのです。

 こうした取り組みは慶應も同様です。慶應では入試科目に国語ではなく小論文を導入しています。そのため、小論文対策は受験に必須。ですが、小論文は他の私立大学併願のときに一般選抜ではほとんど使いません。そのため、慶應のための小論文対策をすることによって、慶應に入りたいという気持ちが高まるわけです」(安田氏)

 では今後、早慶はどのような発展をしていくと予想されるのだろうか。

「W合格者たちが早慶のどちらを選ぶのかは、時代によってかなり変動があります。今は少し早稲田が勢いを取り戻していますが、おそらく今後もサイクルがあり、2校のあいだで人気が移ろうものだと思います。どちらにせよ、今後ともこの両校が私学の先頭を切ることは間違いないでしょう。また、早慶はお互いの存在を意識しているとは思いますが、実際最も気にしているのは世界の大学ランキングのはずです。おそらく、両校とも世界で戦える大学にしていきたいと考えていることでしょう」(安田氏)

(文・取材=海老エリカ/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
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