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木下隆之「クルマ激辛定食」

アウディ、電動化時代へ準備万端…RS e-tronGTが驚異的な航続可能距離

文=木下隆之/レーシングドライバー
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アウディRS e-tronGTが驚異的な航続可能距離を実現
アウディ「RS e-tronGT」

 アウディ「RS e-tronGT」が誕生した。すでに「e-tronGT」の販売は開始されている。「RS」の名が証明するように、電気モーター駆動によるe-tronGTの高性能仕様なのである。

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 長く・広く・低くの具体である4ドアスーパーカーフォルムは、e-tronGTと違いはない。全高がやや抑えられている以外に、明確な識別点はない。街中でも明らかに目立つ攻撃的なスタイルであることも同様で、周囲への威圧感も際立っている。

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 ただ、電気モーターパワーに違いをみせる。4輪を駆動させる前後のモーターは、合計すると最高出力475kWに達する。e-tronGTの390kWから大幅な性能アップ。最大トルクはe-tronGTが640Nmなのに対して830Nmに達している。

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 そのパワーをクワトロシステムが余すことなく路面に伝えると、0-100km/h加速は3.3秒。初速の鋭さは、回転と同時に最大トルクに達する電気モーターの特性と、たやすく路面を踏みはずさないクワトロによる。不用意なフル加速は、吐き気をもよおすほどである。加速性能はスーパーカーの世界にあるのだ。

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 だが、乗り味が優しいのも特徴だ。アウディはこれまで多くのハイパフォーマンスカーを開発してきたが、たとえば「R8」がそうであるように、公道を走ることのできるスーパースポーツとして世界レベルの速さを備えていながら、乗り味は優しいのだ。路面からの突き上げを優しく吸収するその素振りや、常に安定傾向にあるコーナリング特性などアウディの哲学に揺るぎはない。

 そもそも大容量のバッテリーを床下に低く広く低く薄く搭載しているから、重心が驚くほど低い。サスペンション剛性をいたずらに高めずとも不快なロールはなく、ピタっと地を這うかのような姿勢でコーナーをあとにするのだ。

 バッテリーは93kWhもの大容量である。穏やかにクルージングすれば航続可能距離は534kmに達するという。BEV(バッテリー式電気自動車)の悩みのひとつである航続可能距離が、これほどまでに長くなれば、一日の移動距離としては十分だろう。旅先での急速充電器さえ確保すれば、電欠を気にせずにロングドライブがこなせる計算である。

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 ちなみに、最大150kWの急速充電に対応しているという。インフラ整備の遅れている日本での急速充電は25kWから50kW対応が一般的であるが、最近になって、90kW対応機が増殖の気配が漂っており、来る高性能充電器時代に備えているというわけだ。

 そもそも、RS e-tronGTは4座席を持つ4ドアモデルである。その攻撃的なスタイルから過激なスーパーカーを想像させるが、乗り味は優しい。アウディの伝統的なスタイルを崩すことなく、走りは紳士的だ。手に汗握りコーナーを攻め立てるのではなく、航続可能距離の長さを生かしたロングクルーズが適している。

 エンジン車最大の存在である内燃機関を持たないために、前後の荷室に余裕がある。たっぷりと荷物を積んで旅に立つには都合がいい。

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 アウディは2026年にすべての新型車をBEVにすると宣言した。残された時間は、わずか4年。品揃えは待ったなしである。というよりも、すでに4年の猶予を残してロングドライブ可能なグランツーリスモを完成させている先進性に頭が下がる。アウディの電動化宣言を時期尚早ではないかと危惧していたものの、どうやら杞憂に終わりそうな気配である。

(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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