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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

マスク着用の弊害が顕在化…“マスク呼吸”のリスク対策はラジオ体操と深呼吸

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
マスク着用でさまざまな不調も
マスク必須の社会だからこそ対応策が重要(「Getty Images」より)

 新型コロナウイルスとの共存も2年が過ぎ、マスクは我々の生活に手放せないアイテムとなっている。オミクロン株の感染者数が日々過去最多を更新するなか、誰もがマスクをしっかりとつけている。しかし、そのマスクによって、さまざまな不調を訴える人が増えている。

 その原因は、“マスク呼吸”にある。マスク呼吸の弊害と対策について、くぼたクリニック松戸五香院長の窪田徹矢医師に聞いた。

 一時期は布マスクやおしゃれマスクをする人も多く見かけたが、最近では圧倒的に「不織布マスク」をつけている人が多い印象だ。やはり、長引くコロナ禍に感染予防という点を重要視する人が増えているのだろう。しかし、不織布マスクをつけての生活は、時に息苦しさを覚える。

「医療現場でも、感染予防のために密閉度の高いマスクをつけますが、確かに息苦しくなるときはありますね。マスク呼吸では、自分の吐き出した二酸化炭素が、マスクの内側に多くある状態になります。マスクをつけていない状態であれば、息を吐いたら二酸化炭素を出して、次に息を吸うことで十分な酸素を取り入れますが、マスク呼吸では自分の吐き出した二酸化炭素をまた吸ってしまうことになります。そのため、酸素が十分に吸えていないということになり、息苦しさを感じやすくなると思います」

 さらに二酸化炭素は、体の不調を起こす原因となることがある。

「二酸化炭素を多く吸い込んでしまい二酸化炭素過多となると、偏頭痛のような症状を招くことがあります。二酸化炭素には脳の血管を拡張する作用があり、偏頭痛でも同様の現象がありますから、マスク頭痛を起こす人がいます」

 偏頭痛は脳の血管が拡張し、血管周囲を走る三叉(さんさ)神経を刺激し、その刺激によって発生する炎症物質がさらに血管を拡張するために発症する。普段から、頭痛を起こしやすい人は、マスクによって頭痛の頻度が高くなる可能性もある。

口呼吸のデメリット

 マスクをしていると無意識に口呼吸になってしまい、呼吸が浅くなる傾向にある。

「マスクをしていると、深呼吸をすることも減っていきます。深呼吸で酸素を取り込み、血液に乗って体の隅々まで酸素が運ばれることで血液が浄化され、血流も活発になります。しかし、酸素が不足すると血流も滞り、体温が低くなる傾向にあります。体温低下は免疫力を弱めるため、好ましいことではありません」

 また、口呼吸によって口腔内が乾燥すると、さまざまな弊害が起きる可能性がある。

「口を閉じていることで口の中は唾液で潤っています。唾液には自浄作用、殺菌作用があり、口内を清潔に保ち、虫歯や歯周病を防ぐ働きがあります。しかし、口呼吸によってこういった働きが低下する可能性があります」

深呼吸でリフレッシュ

 コロナ禍が続く以上、マスク生活を余儀なくされるが、マスク呼吸のデメリットを解消する方法がある。そのひとつは、深呼吸である。

「実は深呼吸によって自律神経のバランスが整うため、テストの前や人前で話す時、さまざまな緊張する場面で多くの人が無意識に深呼吸を行うのです」

 深呼吸をすると肺の横隔膜が刺激されるが、この横隔膜は自律神経が集まっている場所であるため、深呼吸によって自律神経のバランス改善が期待できる。

 そこで、手軽にできる健康法として窪田医師が勧めるのがラジオ体操だ。

「コロナ禍にリモートワークなどで運動量が減っている方も多いと思います。ラジオ体操には、正しい方法で深呼吸ができる動きもあり、コロナ禍に手軽にできるリフレッシュ法だと思います」

 また、深呼吸のみであれば、いつでもどこでもできる。正しい深呼吸の方法は、背筋を伸ばし左右の肩甲骨を寄せて胸を開き、息を吐き切ったら、おなかに息を吸い込むイメージで鼻からゆっくりと息を吸う。そして、息を吸った時の倍の時間をかけて、ゆっくりと息を吐き切る。1日に何度か深呼吸を行う習慣を持つことも良いだろう。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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