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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

「シミが消える」喧伝する化粧品は虚偽…医師が断言「市販品でシミは消せない」

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
化粧品でシミは消せない
「Getty Images」より

「シミが消える」と謳う化粧品が、勝手に「ニベア」と混ぜることを推奨し、ニベア販売元のニベア花王が注意喚起するという異例の事態に発展した。

 広告としても違法の疑いがある上に、医学的に根拠のない効果効能を謳っている点は、かなり悪質である。女性が美しくありたいという気持ちに訴求する虚偽の広告は、インターネット上で散見される。美容医療の専門家は、こういった現状をどう見ているのか。

 麹町皮ふ科・形成外科クリニック院長の苅部淳医師は、市販の薬品やクリームなどでシミが消えることはあるはずがないと語気を強める。

「市販薬は、副作用が出るのを極力抑えてあるので、効果としても非常に薄いのです。化粧品は医薬品医療機器等法という法律で『人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの』と定義されています」

 苅部医師が言うように、市販のクリームや美容液でシミが落ちることはありえない。実際に苅部医師の運営するクリニックでは、シミの治療には医薬品や美容医療の施術を行うという。

「美容皮膚科医はレーザーやターンオーバーを促すビタミンAの誘導体、シミをつくるのを抑制するハイドロキノンなど医療薬品を使って治療します。

 皮膚の基底層にメラノサイトという色素細胞が存在し、そのメラノサイトが紫外線から細胞核を守るためにメラニンをつくる働きがあります。肌が刺激を受けたり、紫外線を浴びると、メラニンをつくり出します。若い方ですと28日周期でターンオーバーが行われ、最終的には角質となってメラニン色素も剥がれ落ちますが、紫外線などによってメラニンが過剰に生じると肌のターンオーバーが追いつかなくなり、皮膚にメラニン色素が残り、それらがシミとなります。シミは細胞の中に残ってしまったゴミのようなもので、細胞を破壊するか剥がし落とすしか消す方法はありません」

 一般の化粧品に関して「シミが消える」と謳う広告は、ほぼすべて「虚偽」と思っていいだろう。問題となった広告では、美容液とニベアを混ぜることを推奨しているが、異なる化粧品を安易に混ぜることも望ましくない。

「それぞれに含まれる成分が混ぜることによって反応し、効果が低下したり、肌のトラブルが起きる可能性もあります」

 肌に化粧品を重ねて塗布していく場合は、その都度、肌に成分が浸透していくため、混ぜて塗る場合とは異なる。SNSなどに溢れる虚偽の広告を信じ、思わぬ肌トラブルなどを招くことがないよう、化粧品を正しく使用することが重要だ。化粧品の容器や箱、箱の中のパンフレットなどには「使用説明書」があり、その化粧品の特徴や使用方法、使用上の注意などが詳しく書かれている。化粧品を使用する際は必ず説明文をよく読み、使用してほしい。

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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