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「警棒でいきなり殴るとは考えにくい」沖縄県警、詳細非公表の事情…高校生失明事件

文=編集部
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沖縄県警沖縄警察署の公式サイト

 沖縄県の男子高校生が1月27日未明、眼球破裂のけがを負う事故が発生した。この高校生の負傷の理由について「警察官に警棒で殴られた」などとする情報がTwitter上で拡散され、抗議目的の若者や野次馬など約300人が27日夜から28日朝にかけて沖縄県警沖縄警察署(沖縄市)に押しかけ、投石などをして、同署の設備を損壊した。一連の騒動の発端となった「高校生が負傷した事故の状況」とは果たしてどのようなものだったのか。

 朝日新聞デジタルは1月31日、『沖縄署への投石騒動 警察官「警棒持って制止しようと」故意は否定』を公開した。同記事では以下のような県警の説明を述べ、高校生と接触したことを認めた上で、担当した警察官が「故意にけがを負わせる行為はしていない」と話していると伝えた。

「1月27日午前1時ごろ、沖縄市内でバイクが暴走行為をしていると通報があった。警戒中の警察官(29)が、男子高校生(17)が運転するバイクを見つけ、停止を求めた。捜査関係者によると、警察官は手に警棒を持ち、高校生を制止しようとしたが、走り去ったと説明しているという。警棒に大きな損傷は確認できていないという」

制止した警官の警棒が誤って目に?

 今回の朝日の報道に関し、別の全国紙社会部記者は語る。

「あくまで私見ですが、警棒で殴ってはいないが、高校生のバイクを制止しようとして警棒を持った手を広げるなどした際、接触した高校生の目に警棒の先が入ってしまったという可能性もありうるのではないでしょうか。県警は『警棒には大きな損傷は確認できてない』としていますが、バールや木刀とやり合っても、たいして傷つかない警棒の強度からすれば、人にぶつかったくらいで損傷するようなことはないと思います。

 現地支局の記者などの話によると、一連の騒動の発端になった高校生が負傷した事故について、当時から県警の歯切れは悪かったと聞いています。『高校生の単独事故だ』というざっくりとした内容は認めても、事故時の道路状況や事故を起こした運転者の走行の態様、目撃者の有無や負傷の原因など、一般的な人身事故なら話すはずの“事故の詳細なディティール”を明らかにしなかったようですね。

 だから、一部の全国紙やキー局などはシンプルに『単独事故』と報じた一方、沖縄タイムスや琉球新報などの地元紙は、負傷した高校生側の親族などに話を聞くなどして、県警の発表のみのソースに寄らないような取材をしていたようです」

 地元メディア関係者は今回の事案の背景について次のように推測している。

「一般的に集団暴走行為などを行っている道路交通法違反者を、パトカーなどで追跡したり、検問で制止したりしようとした際、逃走する違反者が事故を起こして負傷するケースがあります。警察は『事実関係を整理している』などとメディアに情報を出し渋るケースがままあります。

 身内に関しては甘いと指摘されてしまう部分が“まったくない”とは言えないのが警察組織の実情です。警察側に過失はなかったのか、事故当日の状況を警察内部できっちり調査をしてほしいです。

 ただ、こうした事案では警察官自身が事故当時者だった可能性も高いので、事故状況を客観的に明らかにするために、目撃者や監視カメラなど客観的な証拠を集める必要があります。だから、状況がはっきりするまで、ある程度時間がかかるのはやむを得ないとも思います。

 しかも今回の事案は、県警の担当者が客観的な目撃証言を集めた上で書類を作ったり、上に報告し、許可を得て、メディアに公表したりするという手順を踏む“十分な時間”があったのかは疑問です。警察という組織は規定の手順を踏まなければ話が前に進まないからです。

 事故からほどなくして『警棒で殴られて負傷した』という情報と負傷した高校生の写真がTwitterなどで拡散されてしまった。てんやわんやしているうちに、その日の夜には署に(若者が)大勢集まってきて、投石行為などをするという大混乱が発生してしまったのではないでしょうか。警察の調査や発表、メディアの公表スピードをはるかに上回る、SNSの速報性と拡散力の怖さを感じました」

急所の頭や目を狙って警官が警棒で殴ることはあり得るのか?

 また交通部門での勤務が長かった神奈川県警OBは次のように話した。

「メディアの情報だけで、沖縄県警に過失があったのか、なかったのかはわかりません。少なくとも聞いている限りの現場の状況で、警棒でいきなり人体の急所である頭や目を殴りつけるというのは、警察官の一般的な対応としては考えられにくいのですが……。

 道路交通法第67条1項、2項では『車両等の運転者は、警察官が危険防止等のために出した車両の停止命令や運転免許証提示命令等を守らなければならない』と定めており、これに従わなければ警察官現場指示違反となります。罰則は懲役3ヶ月以下または罰金5万円以下と重いです。

 一般論ですが、スピード違反をはじめとする道交法の違反者の中には、“とにかく現行犯逮捕を逃れさえすれば大丈夫だ”とか、“他にも同じような違反者がいるのに、警察の点数稼ぎのために俺だけ捕まるなんて不公平だ”などと考える人がいます。そして、無理な運転をして事故を起こし、怪我をしてしまう。

 スピード違反や整備不良など軽微な減点で済むはずなのに、大けがもして、下手をすると行政処分などの思い罰を受ける可能性すらあるわけです。若い運転者の中には、容易に警察の制止に応じるのはカッコ悪いという気持ちがあるのかもしれませんが、大けがを負ったら身も蓋もない。警察官だって、違反者が事故を起こして怪我をしてほしくないのです」

(文=編集部)

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