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現在、最高の経営者ランキング…3位の永守重信、2位の柳井正を抑えて1位は?

文=有森隆/ジャーナリスト
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日本電産の永守重信会長(同社HPより)

「週刊ポスト」(小学館/2月18・25日号)の巻頭大特集「日本経済を大復活させる最強の経営者100人」選びに参画した。「どういう思考回路」でどういうランキングをしたのかという問い合わせが熱心な読者からあったので、当サイトでお答えすることにした。「ポスト」編集部に提出した回答を一部、修正してある。読者の参考になるとすれば無上の喜びである。

設問1【現在「最高」の経営者】への回答

 企業を大きく成長させるリーダーは大ボラを吹く。日本には「ホラ吹き三兄弟」というトップ経営者3人がいる。ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正、日本電産会長の永守重信である。2010年12月10日、「ホラ吹き三兄弟」が会食した。

 名付け親の永守は、「大げさなデタラメのように聞こえることを、現実にするのが起業家だ」 と言い放つ。「大ボラ」を吹き、本気で取り組み、命懸けで実現させる。ホラ吹きは信頼されないのではなく、ホラを吹いたあとの行動によって評価は変わる。

 1位は、ソフトバンクグループの会長兼社長の孫正義。永守が「ホラ吹き三兄弟」の長男と位置付けた孫正義は、投資先企業の時価総額300兆円をかかげて、M&Aに突き進む。今や、世界の投資家のトップクラスに躍り出た。「大ボラ」の効用である。

 2位は、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正。「ホラ吹き三兄弟」の次男だ。ユニクロを展開するファストリの時価総額が昨年、「ZARA」を展開するスペインのインディテックスを超えて、初めてアパレル業界で世界首位となった。

 3位は、日本電産会長の永守重信。本人は「孫や柳井に比べると、ホラ度は高校生並み」と謙遜するが、突破力は群を抜く。「一番以外はビリ」が信念。二番でいいという考え方はダメ。「買収王」の異名が付く永守は、工作機械メーカーを相次ぎ買収するなど車載やロボット向けモータの拡大を狙い、周辺分野へ進出している。

 トップ3に共通する悩みは後継者問題だ。自分たちを超える人材を探し出すのは至難の業だ。“合わせ技”で後継者を決めるくらいの気持ちにならない限り、3人とも“生涯現役経営者”のままだろう。柳井、永守は早く「世襲はしません」という建て前の看板を下ろして、「世襲もあり得る」と表明したほうが、ご本人だけでなく周囲も気が楽になる。ソフトバンクGは分割統治しか選択肢がないように思える。

 4位は、ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長。昨年、小学4年生になっても自分の名前を漢字で書けない発達障害だったと告白して小売業界を驚かせた。発達障害を強みにして、「お、ねだん以上。」のキャッチフレーズで家具業界を席巻。35期連続の増収・増益を達成して快走中だ。

 5位は、トヨタ自動車の豊田章男社長。コペルニクス的転回が政官財界を驚かせた。コペルニクスが天動説を捨てて地動説を唱えたように、豊田社長がこれまで否定的だったEV(電気自動車)に「転進」すると言い出したからだ。昨年末、「EVに後ろ向き」と評されてきたトヨタの豊田社長が突然の「EV転進」。世界のEV販売目標を2030年に350万台に増やすと宣言した。車載用電池の開発に2兆円を投じるとしたので、業界他社の首脳を唖然とさせた。

設問2【5年後「最高」の経営者】

 アップルの時価総額が一時、3兆ドル、日本円にして340兆円を上回った。アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アルファベット(グーグルの持株会社)、テスラ、メタ(旧称フェイスブック)のハイテク6社の時価総額の合計は、日本の東証1部の時価総額を上回る。巨大IT企業に投資資金が集中する状況が一段と鮮明になった。ハイテク6社に対抗する日本企業が生まれるか。日本経済の将来を占う大きなポイントだ。5年後を占うキーワードは「女性が活躍する時代」。スタートアップの女性起業家にも目配りが必要になる。

 5年後の「最高」経営者の第1位はソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長CEO。脱炭素の本命はEVである。先行するテスラを追って異業種からの参入が相次ぐ。アップルは25年に「アップルカー」を投入するとの観測が流れる。ソニーグループは、EVへの本格参入を表明した。「走るスマホ」化が進むことで、デジタル技術が得意なソニーの強みが発揮できると計算している。「ソニーカー」は「アップルカー」に対抗できるか。

 以下、順不同でリストアップする。

 グリーの田中良和会長兼社長。フェイスブックは社名を「メタ」に変更した。「メタバース」と呼ばれる仮想空間分野への1兆円の投資を公表しており、メタバースに注力する。SNS(交流サイト)のグリーはメタバース事業に参入し、今後2~3年で100億円規模の投資を実施する。子会社が運営するバーチャルライブ配信アプリ上でアバター(分身)が活躍し、ライブ配信やゲームを楽しむ。2030年代ごろまでには、今SNSを使っている人の多くがメタバース上でアバターを持つ時代になると田中は予測している。それに備え、SNSからメタバースに経営の軸足を移す。

 リクルートホールディングスの出木場久征社長兼CEO。「仕事探しはインディード」「バイト探しはインディード」のCMでおなじみの求人情報サイトの米インディードを2012年、リクルートHDが1000億円で買収し、ドル箱にした。米グーグルは日本で、求人サービス「グーグルしごと検索」を始めた。リクルートの「インディード」とグーグルの「しごと検索」がガチンコ対決で火花を散らす。リクルートは負けられない。

 任天堂の古川俊太郎社長。マイクロソフトは今年に入り、ゲームソフト会社アクティビジョン・ブリザードを7.9兆円で買収した。世界のゲーム機市場でソニー、中国のテンセント、任天堂に後れをとっているマイクロソフトが巨額買収で巻き返しに出た。マイクロソフトの猛攻に、ゲーム機「ニンテンドースイッチ」を擁する任天堂はどう対抗するのか。

 5位はStrolyの高橋真知社長。「グーグルマップ」が1強の地図サービスに、手書きイラスト地図を位置情報に埋め込んでスマホで使えるようにするサービスのスタートアップがStroly(ストローリー、本社京都市)である。高橋社長は米カールトン大学美術学部卒。国際電気通信基礎技術研究所(京都府)に入所し、新規事業立ち上げに参画。京都・太秦の映画村で外国人向けのデジタルガイドを提供したところ、外国人に大うけだった。

 2016年に独立。おすすめスポットを記した手描き地図を作り手が自由に投稿し、利用者はそれを使い観光地やレストランを巡る。一般的な地図アプリよりテーマ性がはっきりしており、「デジタル地図に新風を起こした」と高く評価され、京都女性起業家賞を受賞した。日本では珍しいSNSのスタートアップというだけではなく、女性経営者としても注目されている。米テキサス州のイベント「サウス・バイ・サウスウエスト」のスタートアップのコンテストに日本企業として初めて参加した。

 以上5人は、巨大IT企業の対抗軸となりうる経営者だ。

 IT企業という範疇を離れ5年後のリーダーを考えると、現在60歳台前半がベスト。60歳台半ばが年齢的にタイムリミットになる。流通・小売りではファミリーマートの現社長細見研介(59)やローソンの竹増貞信社長(52)が候補だ。竹増は三菱商事への復帰が取沙汰されている。

 メガバンクは三菱、住友のどちらかか、りそなだ。三菱、住友はどちらも異色のキャリアだったと記憶する。三菱UFJフィナンシャルグループの三毛兼承社長(65)、三井住友フィナンシャルグループの太田純社長(64)、りそなホールディングスの南昌宏社長(56)は5年後のリーダーに該当する。

 2月1日付でみずほFGの新社長に昇格した木原正裕(56)は準備不足が心配されている。「営業のほか経営戦略を立案する経験も乏しい」(金融庁幹部)とみられており、みずほFGは企画力に優れた幹部を木原の周辺に配置する方向だ。

 自動車業界はホンダの三部敏宏社長(60)とSUBARUの中村知美社長(62)。マツダの丸本明社長(64)あたりだろう。ダイバーシティという観点から女性経営者を1人、すでに候補に挙げた。外国人を1人挙げるとすると、三菱ケミカルホールディングスのJ.ギルソン社長(58)か。事業再編がうまくいけば、候補になるが、現時点では裸の王様になる懸念が強い。ギルソン社長は経営戦略説明会で「向こう10年、再生医療Museが利益貢献することはない」と発言。株式市場で「Muse細胞開発縮小」と受け止められ、株価が急落するという苦い経験をしたばかりだ。三菱グループの社長会「三菱金曜会」での評判をギルソン社長の取り巻きが気にしているという情報もある。外国人社長が日本の経済・産業界のリーダーになるのは難しいことだ。

 世襲は取り上げないとしたが、1人選ぶならアイリスオーヤマの大山晃弘社長(43)か。ヨドバシカメラの藤沢和則社長(生年月日は不明、20年7月1日付で社長になった時の年齢は54歳)。ヨドバシ・ドット・コムがECサイトの顧客満足度でアマゾンや楽天を上回っている。

 日清食品ホールディングスは副社長の安藤徳隆(44)を取り上げたい。LIXILの瀬戸欣哉(61)も候補だ。高炉メーカーでは日本製鉄の橋本英二社長(66)。“けんか英二”、トヨタにかみついた。おもしろいキャラクターである。

 話題の半導体では東京エレクトロン社長の河合利樹(58)、アドバンテストの社長の吉田芳明(64)、レーザーテックの岡林理社長(63)あたりが5年先に注目を集めているのかどうか。半導体業界は浮き沈みが激しいので、すんなりこのメンツで決まるという自信はない。

 才気走ったリーダーが何人か思いつくが、こけるような気がするのでリストアップしてなかった。総合的に判断して第1位はソニーGの吉田憲一郎会長兼社長。第2位はリクルートホールディングスの出木場久征。第3位は日本製鉄社長の橋本英二(66)。橋本は5年後、経団連会長になっているだろう。

 小生の5年後のベスト経営者の条件である年齢を少しオーバーするが、目をつぶろう。4位はホンダの三部敏宏社長。EV傾斜の経営戦略と米国市場での知名度の高さ、新車の1台当たりの利益率はSUBARUの次である。5位はダイバーシティの観点から高橋真知or J.ギルソンとしたが、番外としたヨドバシカメラの藤沢和則社長or日清食品HDの安藤徳隆副社長を場合によっては繰り上げることも可であるとしておく。

設問3【過去「最高」の経営者】

 日本では大正時代に、大衆文化が花開いた。映画、歌謡曲、大衆演劇、野球などが大衆的人気を博した。戦後の大衆消費社会の先鞭をつけた先達たちを取り上げる。

 1位は、阪急・東宝グループの創始者、小林一三。無から有を生み出すのが独創であり、それを形にするのがベンチャー起業家なら、大衆の夢を結ぶことで娯楽・サービス産業の礎を築いた小林一三は、近代日本が生んだ大先達といえる。鉄道沿線の宅地開発をやり、郊外住宅、終着駅には宝塚歌劇、始発駅には百貨店。大衆の求めるものを安く提供することで、事業を広げていく。当時、だれも思いつかなかった先駆的事業ばかりだ。今日の私鉄経営は、小林イズムを踏襲している。

 2位は、松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助。一代で世界的な総合家電メーカー、松下電器産業を育て上げた松下幸之助は、“経営の神様”と呼ばれた。幸之助は、産業人の使命は生活に役立つものを安く、誰にでも買えるようにすることだと考えた。彼が選んだ方法は、大量に生産し、大量に販売することであった。テレビ、冷蔵庫、洗濯機の大衆消費の先鞭をつけた。

 3位は、ソニー(現ソニーグループ)の創業者、井深大。モノづくりの天才、天衣無縫の技術者。盛田昭夫と手を携えてソニーを創業、戦後日本を代表する企業に育てた井深大には、発明家としての伝説が多い。トランジスタラジオからウォークマンまで、世界に送り出した新製品の多くは、技術では説明しきれない人をひきつける何かをもつ。時代の予兆を製品にする感性が井深にあったのだろう。「日本発、世界初のものを創ってこそ、人より先に進むことができるのだ」。井深のソニースピリットはいまだに輝きを失わない。

 4位は、本田技研工業の創業者、本田宗一郎。荒廃と財閥解体の中から動き出した日本経済。権威や常識を覆した自由競争の時代の出現を、本田宗一郎は待っていた。ホンダの創業者としての強烈な個性と独創性は世界を駆け巡った。オートバイの生産に乗り出す。当時、欧米では日本製のオートバイは見向きもされなかったが、マン島レースで優勝という快挙をなしとげた。オートバイで世界を席巻すると、本田は自動車に挑戦。低公害エンジンCVCCを積んで業界に新風を吹き込んだ。ホンダ以前の日本車に対する評価は「欧米のまねをしてうまくつくったクルマ」の域をでなかった。ホンダの車が登場して初めて世界は、その独創性を高く評価した。

 5位は、壽屋(現サントリーホールディングス)創業者の鳥井信治郎。1960年、自宅で療養していた鳥井信治郎のもとに、次男の佐治敬三(母方の養子となり佐治姓を名乗る)が訪れた。ビール事業への進出を告げるためだった。ビール業界は当時、キリン、アサヒ、サッポロの大手3社がほぼ100%のシェアを握り、販売ルートも大手3社が専属契約を結んでいるため、他社が参入するのは不可能といわれた。

 それでも、洋酒事業をトップに育てた佐治は、ビール事業への挑戦に情熱を燃やした。当時の壽屋の売上高は、わずか300億円。ビール事業は大きなリスクを伴う賭けだった。佐治は父、鳥井信治郎にビール事業への進出を打ち明けた。

 鳥井は佐治に申し渡した。「わてはこれまでウィスキーに命を賭けてきた。あんたはビールに賭けようというねんな。人生はとどのつまり賭けや。わしは何も言わん。やってみなはれ」。

 社名を壽屋からサントリーに変更し、洋酒会社からビールを陣営に加えた総合食品・嗜好品メーカーへと大“変身”を遂げた。

(文=有森隆/ジャーナリスト、文中敬称略)

有森隆/ジャーナリスト

有森隆/ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

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