新型コロナワクチンの5~11歳の小児への接種が各地で開始された。多くの保護者が子供のワクチン接種に対して不安を抱いている一方で、現在の新型コロナの感染状況は深刻であり、感染者数は高止まりし、2月の死者数は過去最多を更新している。
小児のワクチン接種について、有明みんなクリニック、有明こどもクリニック、有明ひふかクリニックの理事長で小児科医の小暮裕之医師に話を聞いた。
「これまでの感染拡大の状況をみると、小児の新型コロナウイルス感染症例の大多数は軽症です。しかし、すべてが軽症ではなく、酸素投与などを必要とする中等症例も散発的に報告されています。今後、小児の感染増加に伴い、小児の中等症や重症例が増えることが予想されます」
第6波では小児への感染が爆発的に増加しており、家庭内感染によって、さらに親世代に感染が広がる傾向にある。また、これまではなかった10代の死亡例も報告されている。
「厚生労働省のオープンデータを見ても、10歳未満の小児の感染が顕著に多いことが明らかで、感染拡大を防ぐためにもワクチン接種が急がれます。基礎疾患のある小児患者の重症化リスクは高く、小児のワクチン接種によって感染拡大に歯止めをかけ、重症化リスクが高い小児を守ることができます。また、小児からの家庭内感染も防ぐことができます」
小児へのワクチン接種の安全性
「小児へ接種する新型コロナワクチンは、ファイザー製のみです。小児用ファイザー製ワクチンは成人の3分の1の用量です。海外の報告では、5~11 歳の小児に対する同ワクチンの発症予防効果は90%以上であることがわかっています」
副反応について、大人と同様に個人差もあり、接種してみなければわからないという点に不安を抱く親も多いだろう。
「米国の予防接種安全性監視システム(VAERS)によると、4249 件の副反応疑い報告があったそうですが、このうち97.6%は重い副作用ではなく、重い副作用として報告された2.4%中でもっとも多かった症状は『発熱』という結果です」
アメリカの実績では、わずかではあるが重い副反応も報告されている事実がある。
「同じVAERSの報告で11 件が心筋炎と判断されましたが、全員が回復しています。小児の副反応症状の出現頻度は大人よりも低い傾向にあります。しかし、接種に際しては十分な健康観察が必要です」
接種はかかりつけ医で
「多くの親御さんが、子供へのワクチン接種に慎重になるのは当然だと思います。小児のワクチン接種は、小児科医がいる小児科で行うことをおススメします。最近では、産婦人科などでも小児のワクチン接種を行うクリニックが散見されますが、小児科医が常時いないクリニックの場合、ワクチン接種後の体調変化への対応に不安があります。万が一、重い副作用が出た場合に、小児科医でなければわからないこともあります」
医師とはいえ、専門によって経験値も知識も異なる。かかりつけ医がないという人は、ワクチン接種を機会にかかりつけ医を持つことをお勧めしたい。
「不安がある方は、ワクチン接種前に受診し、既往歴や体質等などを医師に相談することをおススメします」
オミクロン株の感染拡大が続く韓国では、2月に生後7カ月、4カ月、5歳の小児が亡くなった。日本でも同様の事態が起きる可能性はある。小児の命を守るためにも、小児科医によるワクチン接種を迅速に進めるべきだろう。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)