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ふるさと納税訴訟、再び国が市に敗訴…総務省の懲罰的ルール変更に違法性、揺らぐ制度

文=Business Journal編集部
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総務省のHPより
総務省のHPより

 ふるさと納税をめぐる訴訟で3月10日、総務省敗訴の判決が出された。ふるさと納税で多額の寄付を得て財政に余裕があることを理由に国から特別交付税を減額されたのは違法だとして、大阪府泉佐野市が国に減額取り消しを求めた訴訟である。

 大阪地裁(山地修裁判長)は、国の減額決定には法改正が必要であり、総務省令での減額は地方交付税法の委任の範囲を逸脱した行為で違法だとして、泉佐野市の訴えを認め、総務省の減額決定を取り消したのだ。これを受け、3月14日、総務省は大阪地裁の決定を不服として控訴した。

 問題の発端は2019年3月に遡る。ふるさと納税で日本一の寄付額を集めるなどしていた泉佐野市は、返礼品にネット通販・アマゾンのギフト券を上乗せするキャンペーンを展開したことなどを総務省から問題視され、他の3市町とともに、国からの特別交付税を減額された。総務省は法改正ではなく、省令を改正するかたちで交付税の減額を決定。表向きには「ペナルティではない」と言うものの、突然のルール変更だった。

 この決定により、泉佐野市の特別交付税額は、減額前の18年度12月分が4億3502万円だったのに対し、19年度12月分は710万円まで大幅に減った。加えて、19年5月には、総務省が17年から導入した「返礼品は寄付額の3割以下」「地場産品に限る」という規制に従わない自治体をふるさと納税の制度から除外することも決定。泉佐野市は制度から外された。

 これら2つの決定を不服として、泉佐野市は2つの訴訟を起こし、国と全面的な法廷闘争に入った。除外決定の取り消しを求めた裁判は、20年3月に最高裁で総務省の敗訴が確定している。今回の減額取り消しの裁判でも、同様に国の強権的ルール変更を戒めるかたちの司法判断で1審敗訴となり、総務省完敗の雲行きなのである。

菅前首相の負の遺産

 だが、総務省は控訴して徹底的に戦わざるを得ない。総務省内部からは「菅義偉前首相の目の黒いうちは引き下がれない」という声が聞こえてくる。08年に創設された「ふるさと納税制度」は、菅氏が総務大臣だった時に発案した肝入り政策。故郷への貢献が本来の趣旨だったが、実際には出身地に関係なく、どこへでも寄付でき、住民税の優遇措置も受けられるので、返礼品目当ての寄付が常態化している。その結果、自治体間で返礼品競争が起きるとともに、自治体間の寄付額に格差が生じ、東京23区など、大幅な税収減に不満を表明する自治体も出ている。

 14年に当時官房長官だった菅氏から寄付額の上限倍増などを指示された際、返礼品競争が起きることを予測して問題点を指摘した総務官僚は、菅氏の逆鱗に触れて、その後左遷させられた。

 菅氏にとっては、それほど思い入れの強い制度であり、「俺に楯突くヤツは容赦しない」という菅氏の体質が、泉佐野市などを特別交付税減額や制度除外という“懲罰”たらしめたといえる。泉佐野市が返礼品にギフト券を上乗せする企画を始めると、菅氏は19年2月の官房長官会見で「良識ある対応を行っていただきたい」と苦言を呈した。その後、ルール変更が行われたわけで、菅氏の意向が働いているのは想像に難くない。

「しかし、官僚から指摘されていた返礼品競争が現実になったのは、菅氏が自ら招いたようなもの。自治体が独自に工夫をして税収を増やすのは、菅氏が好む『自助』の側面がある。泉佐野市のような自治体が出てくることは、菅氏にとって皮肉です」(自民党関係者)

 2つの裁判のうち、1つは最高裁で敗訴確定。もう1つは高裁の判断を待つことになるが、たとえ2連敗が濃厚でも総務省はこのまま突き進むしかない。

「新型コロナ対策の失敗で自民党総裁選に出られず、政権を退いた菅氏ですが、最近は復権の兆し。新たな勉強会も立ち上げるようで、岸田首相がコケることでもあれば、まさかの再登板もあり得なくない。菅氏の『天領』といわれる総務省は、とことん付き合うしかないでしょう」(霞が関関係者)

 総務省にとっては悩ましい「負の遺産」だ。

(文=Business Journal編集部)

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