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NTT接待問題で辞職の総務省幹部が「NTTグループ企業」副社長に就任…波乱必至

文=Business Journal編集部
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谷脇元総務審議官(総務省のHPより)

 ネット接続サービス、インターネットイニシアティブ(IIJ)は、東北新社とNTTからの接待問題で処分を受け、辞職した谷脇康彦・前総務審議官を取締役副社長として招く。6月28日に開催する定時株主総会を経て正式に決定する。

 谷脇氏は1984年、一橋大学経済学部を卒業し、郵政省(現総務省)に入省。NTT再編などに関わり、2000年代には日本の情報通信政策のロードマップ「新競争促進プログラム2010」や携帯電話業界の改革案「モバイルビジネス活性化プラン」の策定を主導するなど、通信行政のエキスパートとして腕を振るった。

 2019年に郵政・通信担当の総務審議官に就任し、菅義偉前首相が近年進めてきた携帯電話料金の引き下げなどの政策を後押しした。こうした経緯もあって、21年夏の事務次官就任が有力視されていた。

 NTTの澤田純社長やNTTデータの幹部などが、谷脇審議官と総務省出身で前内閣広報官の山田真貴子氏らに対して高額な接待を行っていたと「週刊文春」電子版が21年3月3日に報じた。NTTグループの関連会社が運営するレストランで、総額約91万2000円の接待を複数回受けていた。

 NTTはNTT法に基づき総務省から事業計画などで許認可を受けているため、総務省幹部がNTTから接待を受けることは国家公務員倫理法に抵触する。谷脇審議官と山田広報官は、菅前首相の長男・正剛氏が部長職を務める東北新社からも接待を受けていた。NTTとの問題が発覚したことで、山田氏は内閣広報官の職を辞し、谷脇審議官は減給処分を受け、3月16日に総務省を辞職した。

 捨てる神あれば、拾う神ありだ。IIJが谷脇氏を副社長として迎え入れることを内定。「次期社長候補」として注目を集めるスカウト人事である。IIJの鈴木幸一会長は、71年に早稲田大学文学部を卒業し、日本能率協会に入社。「若くてもエンジニアには自由にカネを使わせて遊ばせておく勇気を経営者は持つべきだ」というホンダの創業者、本田宗一郎氏の持論に感銘。30代半ばで日本能率協会を退社して米国に渡り、コンピュータや通信技術のエンジニアたちと交流を深めた。

 92年、42歳で日本初の商用ネット接続会社インターネットイニシアティブ企画(現IIJ)を設立した。当時の日本はインターネットの黎明期。スタートアップ企業への無理解から免許取得にとても苦労した。鈴木氏は日本経済新聞に『私の履歴書』を19年10月の1カ月連載した。このなかで監督官庁である郵政省(現総務省)との折衝に一章を割いている

<郵政省の係官は登録の条件として「通信は公益事業で、倒産は許されない。当初の計画通り設備投資をし、一方で3年間1件も契約が取れないと仮定しても、会社が潰れないという財務基盤を示せ」という。私は「3年間、契約ゼロなどあり得ない」と反論するが平行線のままだった>(『私の履歴書』より)

 郵政省と1年以上にわたって折衝し、特別第二種電気通信事業者の登録にこぎつけた。

NTTグループの傘下に入る

「日本がベンチャー企業に寛容な国だったらIIJが米グーグルと肩を並べる巨大企業になったかもしれない」という仮定の話がある。しかし、米国のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック=現メタ、アップル)のような巨大IT企業は日本には誕生しなかった。

 草創期の国内ネットビジネスの行く手を阻んだのは、監督官庁の郵政省(現総務省)と通信業界のガリバー、NTTに代表される既得権益を持った勢力だった。それでも鈴木氏は、反骨精神をテコにインターネットの草分け企業IIJとして船出した。1998年、トヨタ自動車、ソニーと共に日本初のデータ通信会社クロスウェイブコミュニケーションズ(CWC)を設立、鈴木氏は社長に就任した。CWCは2000年に米ナスダックに上場。だが、ITバブルが崩壊し、トヨタ、ソニーは支援を打ち切り、CWCは03年8月、負債総額684億円を抱えて会社更生手続きを申請した。

「『トヨタとソニーが支援を継続してくれていたら、CWCは世界的な超優良企業になっていた』と、鈴木さんは後々まで悔しがっていた」(新興IT企業トップ)

 CWCは米国のGAFAになれなかった。それどころか、CWCの破綻でIIJが経営危機に陥った。このとき、NTTグループが出資して救済した。IIJは2005年12月、東証マザーズに上場。NTTが25.95%を保有する筆頭株主NTTコミュニケーションズも5.24%を保有する第6位の株主だった。事実上、NTTグループに組み込まれたIIJは06年12月、東証1部に昇格した。

「10年に1人の大物次官」の異名を取った財務省の勝栄二郎・元財務次官が13年6月、IIJの社長の椅子に座った。「影の総理」といわれた勝氏は日本銀行総裁や日本取引所グループの会長に天下るとみられていたが、当時は天下り批判が厳しく吹き荒れ、結局、財務行政とは無関係な“NTTグループ”のIIJが身元引受人になった。

 今回、前総務審議官の谷脇康彦氏を副社長に迎え入れる。「ポスト勝」の社長候補と取り沙汰されている。

「NTTの高額接待で失脚したため、“NTTグループ”のIIJが救済するという構図が見え隠れする。NTTは現在も21.59%を保有するIIJの筆頭株主であり、NTTコミュニケーションズも4.36%保有する4位の株主だ(21年9月中間決算時点)。通信担当の前総務審議官がNTTグループに天下る。ひと波乱があるのは免れそうにない」(通信業界担当のアナリスト)

 IIJは出発時点の大きな夢とは無関係な会社になり下がってしまったのだろうか。

(文=Business Journal編集部)

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