今日も残業、明日も残業。仕事は増えるけれど、残業時間は削減しろと言われる。そんな「残業沼」から抜け出せずに悩んでいるビジネスパーソンは少なくない。
そんななか、定時上がりでも成果を出し、人事評価も高い社員たちはどんなタイムマネジメントをしているのだろうか?
シリーズ累計15万部(2022年5月現在)の最新作『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)のテーマは「時間術」。それも単なる時短テクではなく、実際に5%社員たちの言動をAIで分析し、その行動の本質から誰でも再現できる方法を紹介している。
著者の越川慎司さんへのインタビュー後編では、5%社員たちが投資している意外な仕事道具や何らかの取り組みをした時の継続のコツを教えてもらった。
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。インタビュー前編はこちら(外部サイト「新刊JP」)。
テレワークで95%社員はカメラに投資し、5%社員はマイクに投資する
――本書の中で5%社員は仕事道具にも投資するということが書かれていますが、具体的にはどんな道具に投資しているのでしょうか。
越川:5%社員と一般社員を比較して象徴的だったのは2点です。一つめはキーボードで、5%社員は高級なキーボードを使っている傾向が強かったです。作業に必要なキーボードショートカットを使いこなしているのでマウスの操作頻度は少なかったです。ノートパソコンで仕事をしている人も外付けのキーボードを使っている人が多くて、入力を確実に速める効果があるのだろうと思います。
2つめはマイクです。オンライン会議が増えている中で、95%社員はカメラにお金をかけることが多いのですが、5%社員はマイクに投資している傾向がありました。映像がきれいだからといって営業の成約率が上がるわけではありませんし、確実に音を伝えるという相手主体のコミュニケーションを心掛けているのが5%社員の特徴といえます。
――確かに音が切れていたり、聞き取りにくかったりすると、コミュニケーションが進まなくなりますよね。
越川:テレワークだと家族の声や生活音が入ったり、救急車の音が聞こえたりもしますしね。そのたびに打ち合わせが止まったりしてしまうことってあるじゃないですか。それを防ぐことが時短につながるんですよね。
私も5%社員を真似して、単一指向性のコンデンサ付きマイクを使っているのですが、打ち合わせ相手に話を聞くと雑音がほとんど入らないと言われますね。ミーティングをしながらメモを取っていても、キーボードを打つ音がほとんど入りません。そういった意味では、マイクに投資をするということは理に適っていると実感しています。
それにもう一つ、ノートパソコンのスタンドを使っている5%社員が多いです。その理由として一番多かった回答は、Webカメラで目が合いやすいと。確かに普通に使っていると画角的に上から見下ろすような視点になりやすいんですよね。そうなると相手に不快な思いをさせてしまう可能性があるわけです。
――本書で書かれている5%社員の時間術を95%社員が実践するときに気を付けるべきことはありますか?
越川:すぐに劇的な変化するのではなく、小さな行動実験を積み重ねてほしいです。だから、自分の業務を振り返ってできそうなものをまずやってみて、1回失敗したらもうやらないのではなく、もう一度やってみるということが大事だと思います。5%社員はローリスク・ローリターンを確実に積み重ねて成果を出し続けていますから。
――継続するためのコツがありましたら教えてください。
越川:仕事をしていて何か他の事が気になったり、ちょっと手を止めてしまったりしてしまうのはなぜかということを考えたときに、まず原因の一つは疲れ、ストレスですよね。だから、体調を万全に整えるために睡眠をしっかり取ったり、ストレスを分散させるようなリフレッシュがまず必要です。
もう一つの原因、手を止めてしまう理由が不安や悩みです。「こんなことをやっていていいのか」とか「この資料で本当に評価してくれるのか」といった業務の不安だけでなく、「この会社でいいのか」「両親と上手くいかない」といった人生や人間関係の悩みも含めて、そういうものが仕事を邪魔するんですよね。
だから、仕事に取り掛かる前の準備として、不安や悩みを吐き出して、メモを取って可視化したりしながら、仕事と関係ないものは切り離すといった整理をすることが大切です。不安や悩みが整理されている状態だと圧倒的に継続できることが、95%社員に対する行動実験でも明らかになっています。
――自分のメンタルを整理するという意味では、マインドフルネスに近いものがありますね。
越川:そうかもしれません。1回自分の中を空っぽにするという感じです。多くの5%社員は朝に何もしない沈黙の時間をつくり、自律神経を整えていました。
悩みの姿が見えないから不安になるのであって、それをしっかり可視化できるようにすれば整理できますし、他の人に聞いたりして解決することもあります。それは習慣化が可能ですから、ぜひ真似をしてもらいたいですね。
「残業沼」から抜け出したい人に読んでほしい
――今回の「時間術」を通して越川さんはどのような気づきを得られたのでしょうか。
越川:うちの会社のメンバー全員が週休3日ですし、私自身も20年以上時短仕事術を実践していましたので、時間術にはちょっと自信があったんです。でも、5%社員の分析をしていくうちに、まだまだできることがあるなと思いましたね。
――あとがきに“「5%社員」のテクニックは思った以上にシンプルで、「始めること」「続けること」「気づくこと」の3点に集約されました”と書かれていましたが、時短術の内容自体もすごくシンプルだと思います。
越川:本書に特別なことは全く書かれていないんです。でも、なぜかみんなできていない、やっていないことばかりなんですよね。
「当たり前のことができないのは何故か」ということが本書のテーマだったのですが、そこを大きく分けるのは時短の原理・原則を知っているかどうかなんです。そして、やはりその行動を継続するということがポイントになるのかなと。
だから、本書を読んで、時間術を知って終わりではなくて、行動をしてほしいです。実際にこのトップ5%社員シリーズで「習慣」「リーダー」をテーマに書いてきましたが、「実践した結果、成果が上がりました」「出世しました」という声をいただくことも多いです。それはすごく嬉しいですよね。
――この「トップ5%社員」シリーズは本書で3作目となりますが、これまでどんな方に読まれてきたのでしょうか。
越川:このトップ5%社員シリーズは、もともと30代から40代のビジネスパーソンを想定読者として書いていたのですが、これまでいただいた感想の手紙やフィードバックを読むと、意外にかなり若い方が読んでいるんです。例えば就職活動中の学生が、本を通して会社で働くイメージをしたり、入社して活躍をするために読んだり。
また、都市部の方だけでなく地方の方に読まれています。地方自治体の公務員の方々が感想を寄せてくれました。またエリートの働き方を知りたいというニーズは国外でも高く、複数言語で出版されました。
それに一番嬉しかったのが、医療関係者の読者が多かったことですね。医療現場はマルチタスクで、常に想定外と対峙しなければいけない状況だそうです。人を巻き込むことは当たり前で、ストレスもたまりやすい環境だそうです。そういった方々にこのシリーズを役立ててもらえたのは著者として本当に嬉しかったです。
――業種問わず幅広く読まれている点がベストセラーになったポイントですね。今回の「時間術」についてはどのような人に読んでほしいとお考えでしょうか。
越川:ずばり「残業沼から抜け出したい人」に読んでほしいです。
「残業沼」というのは、今日は残業するけど明日は定時上がりではなく、毎日残業が続いていて、これからもその沼から抜け出す見通しが立っていなくて、気づいたら夜まで仕事しているという状態のことです。
その沼から抜け出したいと思っている人は、実は優秀なんです。優秀だからその人に仕事が集まってしまっているわけで、ぜひこの時間術を実践してみてほしいです。現状を打開できるはずですし、これまで以上に評価されるようになるはずです。
(了)
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。