
中国南部は60年ぶりの豪雨に見舞われ、土砂崩れや河川の氾濫などの被害が広がっている。地元気象当局は「広東省と福建省、広西チワン族自治州では5月初めから6月半ばまでの降水量が1961年以来最多に達した」と伝えた。各地の被災者は計600万人以上になったと推計されている(6月21日時点)。大雨の範囲は貴州省、安徽省、浙江省にも広がっており、今後さらなる北上が予想されている。中国では例年、6月から洪水の季節が始まるが、ここ数年の洪水は激しさを増しており、専門家は「事態は今後も悪化する」と危惧している。
中国で大荒れになっているのは天候ばかりではない。肝心の経済活動にも嵐の予感が漂い始めている。バブル抑制のための不動産金融規制を受け、昨年夏から中国の住宅市場は冷え込み始めた。5月の住宅販売面積は前年比37%減少し、主要70都市の新築住宅価格は前月に比べ0.2%下落した。昨年から続く住宅市場の調整がいまだに続いている。
不動産業が生み出す収益は、関連産業を含めると中国の国内総生産(GDP)の3割近くを占めるとされている。政府はてこ入れに乗り出していたが、春先からのゼロコロナ政策のせいでマンションの購入需要は一段としぼんでしまった。
不動産市場の不調だけでなく、習近平国家主席が今後の成長の柱に据える内需(個人消費)の伸びが芳しくないのも悩みの種だ。中国の携帯電話市場は今年に入り「厳冬」の状態が続いている。今年第1四半期の国内出荷台数は前年比29%減の6935万台、さらに4月は前年比34%減の1808万台に落ち込んだ。消費者の買い控えの影響が大きいといわれている。市場関係者は「上海などの大都市で都市封鎖(ロックダウン)が解除されたのにもかかわらず、消費者は財布のひもを緩めようとしない」と警戒の念を抱いている(6月17日付ブルームバーグ)。
地方政府の厳しい台所事情
中国の消費者はなぜ節約志向に転じてしまったのだろうか。「消費者の懐が急に冷え込んでいることが関係している」と筆者は考えている。上海で約2カ月続いたロックダウンが実質的に解除された6月上旬、公務員の減給状況が記された投稿がSNSで拡散された。その内容は「上海市の係長級の公務員の年俸は35万元(約700万円)から20万元(約400万円)に減額された」「北京、天津などの大都市では20%近く給与がカットされた上に様々な手当も廃止された」など具体的だ(6月18日付ダイヤモンドオンライン)。
公務員の減給について中国政府は公式見解を出しておらず、こちらの投稿内容の真偽のほどは定かではない。投稿はすでに削除されてしまったが、中国政府は公務員の減給を否定する内容の見解を出していない。数字の正確さはさておき、このような事態が生じている可能性は高いようだ。