「Slackをパソコンで使う」は古い感覚?20代は圧倒的にスマホで見る派が多い現実
今や中高年層でもスマホを使いこなす時代であり、YouTubeやLINEなどはどの世代でも活用されているアプリだ。一方で、細かく見ていけば、若年層と中高年層のアプリ利用状況には違いも見える。
前編に続き、アプリの利用実態をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーのオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に話を聞いた。
10代は「AI勉強」と「位置情報共有」
日影耕造氏(以下、日影) 今、「利用時間の長いアプリの上位」を見ると、どの世代も「YouTube」「TikTok」「LINE」「Twitter」「Instagram」などで、大差がありません。
ただ、それでは「世代別のアプリの使われ方の違い」がわかりにくいため、フラーでは10代から60代以上の6世代に分けて、各世代のユーザー比率が高いアプリのトップ10を毎年発表しています。今回、その中から特徴的なアプリを紹介します。
まず、10代ユーザーの比率が高いアプリに韓国発の「QANDA(クァンダ)」があります。数学の問題文を撮影して送ると、似た問題と誰かが解いた答えを検索し、表示してくれるAI勉強アプリです。日本以上にシビアな学歴社会である韓国ならではのアプリといえます。
他には、「zenly(ゼンリー)」も10代ユーザーの比率が高いアプリですね。友達や家族と位置情報を共有できるアプリです。
――上の世代では、自分の位置情報が知り合いに知られるなんて勘弁してほしい、と思う人の方が多いと思います。zenlyは、友達の存在が人生においてとても大きな役割を占める、10代ならではの人気アプリなのでしょうかね。
日影 「思春期だから友達とつながりたい」以外に、「ソーシャルネイティブ世代ならでは」という要素もあるのかもしれません。私は今40歳ですが、もうSNSがない生活は考えられないなと思う一方で、SNSがない状態をイメージすることもできます。今の40歳は、ソーシャルネイティブな世代ではないですから。
しかし、今の10代は生まれてからずっと「SNSがある状態」で育ったため、「ない状態」をイメージしにくいのではないかと思います。上の世代よりオフラインとオンラインの区切りがないというか、心情的にシームレスにつながっているんですよね。zenlyは、そんな10代の気持ちを象徴するアプリともいえます。
「Slackをパソコンで」は古い感覚?
日影 次に20代ユーザーの比率が高いアプリとして、グループウェアの「Slack」を紹介します。図1は、App ApeでのSlackの利用者の性年代比です。Slackはパソコンで利用している人も多いかと思いますが、「アプリでスマホやタブレットから利用している」比率が、20代男性はとても高いことがわかります。
――42歳の私の感覚だと、グループウェアはパソコンで見て返信した方が楽だと思ってしまいますが、違うのですね。
日影 20代の場合、パソコンは立ち上げが面倒くさいからスマホでササッと見たい、となるのでしょうね。「スレッドを確認し、読んだというサインとして、いいねを押したい、一言でいい」という使い方だと、スマホの方が手軽なのでしょう。
――ビジネスだからパソコンで、メールできちんと文章を返さねば、という発想自体ちょっと古いのでしょうね……。
日影 今の20代は、10年後にはビジネスのメインストリームになります。ビジネスシーンでも、ますますアプリシフトの傾向が強まっていくかもしれませんね。ただ、アプリならではの弊害もあります。スマホは手軽で便利ゆえに、見すぎてしまい、仕事とプライベートの切り分けがつきにくい。さらに、テレワークの普及で、その区別がますますつきにくくなっている面もあるでしょう。
「Zoom」は無料プラン縮小で失速する?
日影 世代の話からは横道にそれますが、コロナ禍が始まった2020年に大きく伸びたアプリに「Zoom」があります。現在、Slackも画面でミーティングを共有できますし、Zoomとは機能的に差がなくなってきていますね。また、ウェブ会議サービスのZoomに比べ、テキストのコミュニケーションはSlackに一日の長があります。
――テキストでのやり取りはナレッジが蓄積されていき、動画と違って後から検索することもできますからね。Zoomはテレワークが普及した2020年に席巻しましたが、無料プランの時間制限が始まり、今後は失墜も懸念されますね。「Microsoft Teams」や「Google Meet」などもありますし。
30~40代は子育て関連アプリが台頭
日影 世代別の話に戻ると、10代はzenly、20代はSlackと「友達、仲間、同僚とつながるアプリ」を紹介してきました。30~40代になると、ライフステージが変化する方も多く、「家族とつながる」アプリの比率が上がってきます。30代ユーザーの比率が高い「家族アルバム みてね」は家族間を想定した写真共有アプリです。お孫さんの写真をおじいちゃん、おばあちゃんと共有するため、30代の父母が利用するという使われ方ですね。
――「孫の写真見たさ」は、高齢層にスマホ技術を習得させる大きなモチベーションになっていますよね。
日影 続いて、40代ユーザーの比率が高いのは「Nintendo みまもり Switch」です。任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」と連動して、各種使用制御をかけるアプリです。「家族アルバム みてね」で写真を共有していた子どもが大きくなり、Switchで遊ぶようになって……という時間の流れが想像できますね。
――そして、その子どもが年頃になり、zenlyで友達とつながるようになり……と、アプリは生活や人生に密着していますね。
50代は「イトーヨーカドー」「WAON」が上位に
日影 50代になると、子どもが手を離れることもあってか「買い物系」「電子マネー」「ポイントカード系」の利用率が他の世代より目立ちますね。「イトーヨーカドーアプリ」「WAONアプリ」などがトップ10に入っています。
今の50代はデジタルネイティブ世代ではないので、「それまでオフラインで使っていたものがアプリに切り替わる」形で使われていることがわかります。現金が電子マネーに、ポイントカードや紙のクーポンがお店のアプリに切り替わる、という流れですね。
――中高年以降になると、それまで染みついた生活様式もあり、抜本的に新しいものを入れるというよりは、今までアナログであったものが電子化するという、いわば「枝葉」の変化になりがちなのでしょうね。
日影 最後は60代以上ですが、ニュースアプリが目立ちますね。「NHK ニュース・防災」「dmenuニュース」などがトップ10にランクインしています。これも、紙の新聞がアプリに置き換わったという感覚ですね。
前編では10~20代女性に人気の中国系ECアプリ「SHEIN(シーイン)」について触れましたが、こうして世代別に見ていくと、10~20代のデジタルネイティブ世代と中高年の非デジタルネイティブ世代では、ネットの使い方や購買行動に明確な差があることがわかります。
――DX(デジタルトランスフォーメーション)は今までの仕組みを単にデジタルに置き換えるだけでは意味がなく、デジタルを活用し仕組みから抜本的により良いものにしていく、というのが理念ですが、世代別に見ると、年齢が上になるほど「旧来の仕組みを電子化しただけ」のアプリが並びましたね。それでも便利にはなっているのでしょうけれど、変化としては小さいですよね。ユーザーの意識ひとつとっても、アプリの世界に変化をもたらすのは、やはり若年層なのかなと思える結果でした。
日影 この違いは、今後デジタルネイティブ世代の台頭によって、より鮮明になっていくのかもしれませんね。
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