激安で10代女性に大人気…中国の越境ECアプリ「SHEIN」のユーザー数が急増中
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
同社のオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、2021年第3四半期(7~9月)のアプリ利用動向について聞いた。
中国の越境ECアプリ「SHEIN」の魅力とは
――毎回、四半期ごとに躍進したアプリを紹介していただいていますが、今期(21年7~9月期)はどんなアプリが躍進しましたか?
日影耕造氏(以下、日影) 若い女性に支持されたアプリが躍進していますね。まず、中国の越境ECアプリ「SHEIN(シーイン)」です。App Apeのデータを見ると、21年3月時点から半年でユーザー数を約5倍に伸ばしています。
従来、EC、ショッピング系のアプリはお金がある層が牽引するものでした。楽天、アマゾン、ヤフーショッピング、フリマアプリであるメルカリも、基本的には30~50代の利用が多いのですが、SHEINは10代の利用が4割なんです。
10代がECサービスを牽引できる理由として、SHEINはとにかく安いんですね。ファッション、コスメでだけでなく生活雑貨なども売っていますが、どれも安いんです。
――加湿器が300円台で売られていますね。100円、300円ショップ同様に生産側は奴隷労働では……と闇も感じますが、限られたお小遣いの中であれこれ買いたいティーンエージャーの消費者側にしてみれば、「買い物の喜び」を痺れるくらい味わえるだろうなとも思います。
日影 SHEINは品揃えも豊富です。ファッション、メイク、日用雑貨などで毎日4000~1万点のニューアイテムがあると、アプリに表示されていますね。ただ、サイズや色違いを一点ずつ、とカウントしていると思われるため、「アイテム別」で考えればかなり減るとは思いますが。
ユーザーがPRしてくれる「SHEIN」の強み
日影 安さ、品ぞろえと、SHEIN側の独自性についてお話してきましたが、SHEINのすごさは購買層にもあります。購入したユーザーが「SHEINで爆買いした」と、戦利品の画像や動画をティックトック、ユーチューブ、インスタグラムなどに投稿していて、これが人気コンテンツになっているんですね。
インスタグラムで「#shein」で検索すると、401.7万件(21年10月時点)もの投稿があります。越境ECなので、世界中のユーザーが投稿していることがわかります。こういったものを見たユーザーが自分も買いたくなり……といった循環ができているんです。
――SHEINにしてみれば、ユーザーがいいねほしさにタダでPRしてくれている状況ですよね。なお、国内ファストファッションの雄、「#gu」はインスタグラムで投稿365.8万件、「#しまむら」は投稿164.9万件でした。
日影 そして、SHEINは中国のアプリです。ティックトックもそうですが、中華系アプリはレコメンド機能が強いんですね。各々のユーザーの利用状況に応じてレコメンドエンジンが好みの商品を察知し、最適化していってくれます。
まとめると、SHEINは「激安」「グローバル」「強いレコメンドエンジン」を兼ね備えており、さらにはユーザーが「UGC(User Generated Content/一般ユーザーによってつくられたコンテンツ。今回のケースではSHEINの爆買い動画や画像など)」をつくってくれる、そんな手堅いECアプリと言えます。
――確かに、アマゾンや楽天など既存のメガECは「早く届く」「ポイントがたまる」などの魅力はありますが、ショッピングモール的なECであるアマゾンや楽天で「これを買った」的UGCをつくりたいか、また、そういったコンテンツがあれば見たいか、となると微妙です。また、SHEINがつかんでいる10代女子は、SNSに関する情熱やエネルギーがあふれんばかりというのも大きいですよね。
銀行らしくない「みんなの銀行」のアプリ
日影 また、福岡銀行などを運営しているふくおかフィナンシャルグループが5月末よりサービスを開始したデジタルバンク「みんなの銀行」も、ユーザー数を伸ばしています。
――リリース記事などを見ると「国内初のデジタルバンク」とありますが、「実店舗を持たないネット銀行」なら、楽天銀行もそうですよね。また、口座開設に「印鑑」や「郵送」がいらずスマホだけで完結するというのも、楽天銀行でも導入されています。みんなの銀行はどういった点がユニークなのでしょうか?
日影 明らかにユニークなのは、銀行らしくないデザインでしょうね。こちらがみんなの銀行のメニュー画面です。
SNSみたいですよね。サービスメニューも銀行にしては驚くほど少ないですが、多くの人にとっての必要最低限は揃っています。
――銀行のサービスメニューなのに、スクロールや複数ウィンドウ前提でない、画面が余るほどの「すっきりさ」は確かに異色ですね。また、「物理的なキャッシュカードがなくスマホだけで取引できる(ATMではQRコードを用いて入出金する)」もみんなの銀行の特徴ではありますが、これはPayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)も同様のサービスをしています。
日影 そして、以下がみんなの銀行の現時点のユーザー性年代比です。30代男性が一番多く、30代女性も多いです。
――ちょっと意外ですね。サービスのコンセプトから、20代などのデジタルネイティブが多いのかと思いました。30代はすでに口座を持っているでしょうから、これ以上口座を増やしたりするのはむしろ億劫に思いそうですが……。推測ですが、結婚して夫婦共同の口座になった人が自分用の口座をこっそり持ちたい、副業用、みたいなニーズがあるのでしょうかね。
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後編も引き続き、日影氏に21年7~9月の人気アプリについてうかがう。
(構成=石徹白未亜/ライター)
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