2018年頃から一気に普及したQRコード決済サービス。社会全体のキャッシュレス化の促進ムードもあり、これまでの4年間で多くの「〇〇ペイ」が生まれていった。潤沢な資金とキャンペーンで市場を支配するサービスもあれば、鳴り物入りで参入したものの、影が薄くなってしまったサービスも。そこで今回は「そういえば、あった」と言いたくなるマイナーなペイ関連の現状をレポートする。
現在、QRコード決済の国内シェアは、PayPay(45.4%)、d払い(16.7%)、楽天ペイ(16.7%)、au PAY(13.5%)、メルペイ(3.0%)、LINE Pay(2.5%)、FamiPay(1.5%)、ゆうちょPay(0.4%)となっている(MMD研究所調査/2022年1月時点)。お得なキャンペーンを連発してきたPayPayが圧倒的なシェアを獲得しているが、他のサービスも熾烈な覇権争いをなんとか生き残った優良サービスだといえる。
なにせ、生き残れなくて消滅したり、シェアが伸び悩んでいるペイも存在するのだ。まずは、残念ながらサービスを終了してしまったものを紹介しよう。
7pay
コンビニ最大手のセブン-イレブンが莫大な資金を投入して開発したオリジナルのQRコード決済サービスが「7pay」だ。2019年7月にサービスが開始され、セブン-イレブンでお得に買い物するにはこれ一択と期待されていたが、本格運用直後に不正利用被害が続出、被害総額約3000万円にのぼる大騒動になってしまう。そして、わずか3カ月後の9月末に同社はサービスの廃止を発表。7payの決済音はミュージシャンのヒャダイン(前山田健一)が作曲していたが、それをもはや聴くことのできない、幻のサービスとなってしまった。
ちなみに、この失敗を受けてセブン-イレブンはPayPayとの連携に舵を切り、21年2月末から同サービスがセブン-イレブンアプリに実装されることとなる。
Origami Pay
Origami Payは12年に創業されたOrigamiによって運営されていたサービス。同社は16年5月からOrigami Payを展開していたが、20年1月にメルカリが子会社化し、サービスを吸収。実質的に経営破綻での身売りとなった。そして、20年6月にアプリの全機能を終了し、約4年でサービスを終了。Origami Payは一時期、銀行口座連携で3%還元など、資本が大きくない企業にしてはお得なキャンペーンを展開していたので恩恵に預かったユーザーも多いと思われるが。早くからコード決済に目をつけ先見の明があった同社だが、携帯キャリアなど他に導線を持つ企業に知名度で劣ってしまい、苦杯をなめた格好だ。
pixiv PAY
イラストや漫画、小説などの投稿や閲覧ができるウェブサイト「ピクシブ」もQRコード決済を運営していたが、現在サービスを終了している。17年8月にサービスを開始したpixiv PAYには、同人誌の即売会などで利用できるレジ機能やQR決済機能があった。広く普及したわけではないニッチなサービスだったが、コロナ禍によって即売会などのリアルイベントのあり方が変わり、サービスの継続が困難となったという。こうして、20年12月に約3年続いたpixiv PAYに終止符が打たれたのであった。
Amazon Pay
Amazon PayはAmazonアカウントに登録した支払い方法で決済ができるサービス。15年からサービスを開始し、18年からはQRコード決済にも対応していた。街中にある実店舗でもAmazon Payを使える場所を徐々に増やしつつあったものの、残念ながら22年1月31日で実店舗でのコード決済サービスは終了してしまう。
ただ、Amazonはもちろんのこと、ふるなびや出前館などECサイトでの利用は引き続き可能だ。Amazon Payを使えば、Amazonアカウントに登録している支払い方法や個人情報で簡単に買い物ができるので、同社のサービスをよく利用する人にとってはスピーディで手間がかからないのがメリットのひとつだ。
ここまでは消滅してしまったサービスを見てきた。次からは、一般的にはマイナーだが現在継続中の主なサービスを紹介しよう。
pring
17年に創業されたpringによって運営されているアプリ。送金を容易に行うことができ、店舗の決済も可能だ。そんなpringは、21年7月にあのグーグルによって買収されたことで一躍注目を集める。大手の携帯電話事業者が提供するサービスではないにもかかわらず、国内で地道に業績を伸ばしていたpringに対し、金融デジタル化を加速させたいグーグルが買収に乗り出したと見られ、同サービスのなかでも、特に送金サービスが注目されているという。
ただ、決済サービスも引けを取らず、徐々に利用可能店も増加中。現在はローソンやヤマダ電機グループ、好日山荘、トイザらス、日高屋などで利用が可能だ。今後、グーグルのサポートも受けて、お得なキャンペーンなどを仕掛けてくればシェアが伸びてくるかもしれない。
J-Coin Pay
J-Coin Payはみずほ銀行が提供するサービスで、同行はもちろん、その他銀行口座と紐づけて決済ができる。後発のサービスではあるが、アプリから口座への出入金が無料で行えることがメリットとされている。実店舗での利用も、すき家、松屋、ビックカメラ、セブン-イレブン、ファミリーマートなど拡大中だ。
現在はアプリからモバイルSuicaへのチャージで10%還元を行うなど、こまめにお得なキャンペーンも行なっているので、利用してみてもいいだろう。
ANA Pay
日常生活の決済でもマイルが貯まるという触れ込みのANA Pay。20年12月からサービスが開始され、200円の決済で1マイルが貯まり、クレジットカードや加盟店の組み合わせでさらに還元率を上げることが可能になる。ただ、登録できるカードはJCBに限られ、チャージでマイル獲得できるのは「ANA JCBカード」だけと、制限が多い。ファミリーマート、ローソン、イトーヨーカドー、オーケーなどで利用が可能だが、やはり他社サービスと比べて使いづらさは否めない。マイルシステムは今後も揺るがないと思われるが、ANA Payと共有するメリットがいまいち感じられないため、今後は消滅や他のサービスとの統合などもあるかもしれない。
今回はマイナーなPayサービスについて見てきたが、やはり、使いやすさやお得度などはメジャーアプリに軍配があがる。しかし、ジャンルを絞ったピンポイントな買い物や、時期によってはメジャーに負けない魅力的なキャンペーンを開催しているので、うまく使いこなせば、お得を享受することができる。気づいたら消滅していることもあるので、動向をチェックしておこう。
(取材・文=清談社)