今年の夏は各地で猛暑が押し寄せて電力逼迫の懸念が強く、政府や自治体が節電要請を行っている。また、大手電力会社のうち東京電力、中部電力、北海道電力、九州電力では電気料金が値上げされ、これを機にお得な電力サービスに乗り換えたいという機運も高まってきている。そこで今回は、携帯キャリアと連携するQRコード決済事業者と電力サービスの関係、そしてそれぞれのお得さを紹介していきたい。
NTTドコモ
d払いを運営しているNTTドコモは3月から一般家庭向け電力小売サービス「ドコモでんき」を開始した。ドコモの冠がついているが、沖縄や離島エリア以外ならドコモ回線の契約の有無にかかわらず利用が可能だ。
ドコモでんきには「ドコモでんきBasic」と「ドコモでんきGreen」の2つのプランがある。ベーシックは基本料金や最低料金、電力量料金が地域電力会社と同価格。グリーンはそれにプラス500円されるが、このプランで提供される電力は二酸化炭素排出量実質ゼロを謳っている。
他のサービスと同価格、もしくは高値となるプランだが、最大のメリットはdポイントの還元だ。ベーシックではドコモ回線契約(ギガホ・ギガライトプラン)、もしくはahamoユーザーならば電気料金の3%が還元される。それ以外のプランとドコモ以外のユーザーは2%の還元にとどまるが、それでもお得だ。
一方、グリーンではベーシックと同じ還元率にプラスしてdカードゴールド会員なら限定の特典が加わる。ドコモ回線契約(ギガホ・ギガライトプラン)、もしくはahamoユーザーで、かつdカードゴールド会員であれば、なんと10%の高還元となるのだ。グリーンは月の基本料金が500円高いが、dカードゴールド会員で電気使用量がそれなりにあれば断然お得なのだ。
支払い方法は、ドコモユーザーであれば携帯電話料金の支払方法と同じ引き落としとなり、ドコモユーザー以外はクレジットカード払いとなる。ちなみに、d払いではアプリを使った請求書払いが可能だが、dポイントが付与されないため、クレジットカード、特にdカードでの支払いが最もお得になるだろう。
au
auPAYを運営しているauが行っている電力サービス「auでんき」は、新電力が解禁になった2016年からサービスを開始している。auでんきはノーマルバージョンと、地球環境に配慮した「ecoプラン」があるが、この「ecoプラン」は後述するようなポイント還元サービスがないため、ここでは割愛する。
ノーマルバージョンのauでんきはauユーザー以外も加入できるが、やはり回線ユーザーのほうがお得に設計されている。au、UQmobileユーザーであれば、毎月の電気料金に応じてPontaポイントが還元され、電気料金が5000円未満であれば1%、5000~8000円未満であれば3%、8000円以上であれば5%の還元となる。
電気料金は2人以上の世帯で平均1万円ほどになるため、毎月5%還元となる確率が高い。つまり、20カ月ごとに約1カ月分が実質無料になる計算だ。貯まったポイントはauPAYへチャージもできるため使い勝手が良い。支払方法としてはauユーザーならば、携帯電話料金などと一括で請求されるので、整理しやすいというメリットもある。
ソフトバンク
ソフトバンクは「くらしでんき」「自然でんき」「おうちでんき」の3種類の電力サービスプランがある。「くらしでんき」は毎月の利用量に応じ1~5%安くなるというメリットがある(電力自由化前に各エリアの電力会社より提供されたプラン比)。120kWhまでで1%、120~300kWhまでで3%、300kWh以上で5%といった具合に従量料金が割引されるのだ。さらに、電気料金1100円ごとに5円値引きされるのもありがたい。「自然でんき」は、その名の通り地球に配慮したエネルギーとなっており、基本料金が0円だ。
一方、「おうちでんき」は利用量に応じた割引はないが、従量料金部分が毎月1%の割引価格となる。さらに、おうちでんきを契約すると、ソフトバンクやワイモバイルのスマホやネットなど1回線につき、通信料が月110円割引になる。例えば、家族でスマホ3回線、インターネット1回線を利用していれば、毎月440円割引されるのだ。
ソフトバンクでんきで特筆すべきなのは、ユーザー専用の「エコ電気アプリ」の存在だ。これは前日までの電気代の確認や1カ月分の電気代も予想してくれるアプリで、さらにアプリ内では月に2~4回ほど「節電チャレンジ」が開催され、それに成功すると報酬として100ポイントがもらえる。100ポイントは100円分のPayPayポイントに交換できるギフトカードに交換可能だ。
つまり、ソフトバンクでんきに変えることで料金も安くなり、節電すればPayPayボーナスももらえる。PayPayユーザーかつソフトバンクユーザーであれば、ソフトバンクでんきへの乗り換えは待ったなしだろう。
ここまで主なQRコード決済事業者と電力サービスを見てきた。どれも決済アプリで支払うメリットはほぼないが、それぞれの電力サービスでお得にポイントを稼ぐことができることがおわかりいただけるだろう。ちなみに、楽天PAYを運営する楽天も自社電力サービスを行っているが、現在は申し込みを停止している。
ポイントや割引をなるべく多く享受するには、やはり回線や電力をすべて同じ事業者に統一することが必要だろう。お得な電力会社を選び、節電の夏を乗り切ってほしい。
(取材・文=清談社)