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中学・不登校児でも受験できる東京都立高校?内申点への誤解、新宿山吹高校の現状

文=A4studio
中学・不登校児でも受験できる東京都立高校?内申点への誤解、新宿山吹高校の現状の画像1
東京都立新宿山吹高校のHPより

 今年8月、Twitter上であるツイートが話題となっていた。その内容は、中学校時代に不登校だった生徒でも受験できる都立高校が複数あるというもの。中学の成績不問で入学できる高校について言及されており、面接や小論文で合否が決まるチャレンジスクールや、少人数で中学内容の学び直しができるエンカレッジスクールが紹介されていた。

 また、チャレンジスクールやエンカレッジスクールとは異なるが、定時制高校である都立新宿山吹高等学校は、自由な校風や好きな科目を選んで時間割を自分で設定できるという学習カリキュラムで、注目を集めているとのこと。生徒はのびのびとした環境で過ごすことができて進学実績も良好のため、不登校生徒や保護者から支持されているそうだ。

 そこで今回は、こうした都立高校の実態や、不登校児を抱える保護者の高校進学に対する誤解、内申書や内申点に関する噂の真偽などについて、NPO法人 高卒支援会 会長であり、一般社団法人 不登校・引きこもり予防協会 代表理事の杉浦孝宣氏に話を聞いた。

不登校生徒も受け入れるチャレンジスクール

 東京都にはチャレンジスクールは都内に6校、エンカレッジスクールに分類される普通科の高校は4校、工業高校は2校ある。チャレンジスクールやエンカレッジスクールとはどういった学校なのか。

「チャレンジスクールは昼夜間定時制の高等学校で、不登校の経験がある生徒や、何らかの事情で学校に行くことが困難になった生徒が行く傾向が多いです。もちろん入試はありますが、中学校の内申書(調査書)の提出は必要なく、選抜方法は志願申告書、作文、面接となっています。

 一方エンカレッジスクールは、小中学校の学び直しを望んでいる生徒や発達における障害がある生徒が行く傾向にあります。また、こちらは中学校の内申書の提出が必須です。エンカレッジスクールはチャレンジスクールと違って毎日の登校が求められるため、中学時代に不登校であった生徒が受験するのであれば、エンカレッジスクールは除外したほうがいいかもしれません」(杉浦氏)

 内申書とは中学校の成績や日常態度などが記載された書類のことで、高校受験の際に高校側が合否を決める判定資料の一つとしているもの。都内在住の中学生は基本的にすべての都立高校を受験することができるが、不登校だった生徒は内申書で高評価となりにくいため不利になってしまうといわれている。

 不登校の生徒は、内申書の各教科の内申点の部分が「測定不能」を意味する斜線、つまり1~5の評価ではなく、実質「0」になってしまうともいわれている。一方で普段は登校しなくても、中間テストや期末テストといった定期試験を受けていれば内申点はつけてくれるという話も聞かれるが、実際はどうなのだろうか。

「まず前提として、中学校によっても担任の先生によっても変わりますし、保護者と学校、もしくは保護者と担任との関係性によっても大きく変わってきますので、ケース・バイ・ケースです。

 例えば私が知っている事例では、私立の中高一貫校に通っていた中学の不登校生徒が、別の高校を受験したいという話になった際、保護者と学校や担任の関係が良好だったため、定期試験だけを受けて主要科目の内申点がオール3になったということがありました。さすがに4や5はつかなかったのですが、その不登校生徒は成績が優秀だったため3が取れたということでしょう。

 ですから定期試験を受ければ、測定不能の斜線になってしまうことはほぼないと思います。とはいえ、オール3になったというのは良い例で、定期試験だけ受けてもやはり授業には出ていないので、1や2になってしまうということも充分ありえます。また、体育や音楽など授業中の実技の評価が重視される教科の場合は、定期試験だけ受けても測定不能になってしまうかもしれません」(同)

目先の高校生活だけでなく長期的視点が重要

 では、チャレンジスクールへの進学割合はどの程度なのだろうか。

「チャレンジスクールや話題となっている都立新宿山吹高等学校は、東京都の進学調査表のカテゴリーでいうと定時制にあたります。公立学校統計調査報告書によると、2020年度の通信制高校への進学率は5.1%、定時制が3.7%となっているので、今は不登校で悩んでいる生徒が行くのは通信制高校が主流になっているのではないでしょうか。

 2017年度までは定時制のほうが進学率は高かったのですが、2018年度からは定時制と通信制の進学率が逆転していますし、不登校の生徒における進学傾向に変化が訪れているように感じますね」(同)

 この進学率の変化の理由について、不登校の生徒が9年連続過去最多となったことが大きいという。

「文部科学省は10月27日、全国の学校を対象に2021年度に実施した『問題行動・不登校調査』の結果を公表したのですが、小中学校で約24万人、高校も含めると30万人もの生徒が不登校になっていることがわかりました。そのなかでも、55%以上が90日以上学校に行っていない長期欠席者といわれている生徒なのです。

 私が代表理事を務める不登校・引きこもり予防協会への相談内容のなかでも、一番問題となるのが子どもの生活の乱れ。学校へ行かずにゲーム漬けやYouTube漬けの日々が続き、結果昼夜逆転の生活を送ることになってしまうというケースがよくあります。そういった生活習慣を根本的に解決できなければ、全日制の高校はもちろん、たとえ定時制高校やチャレンジスクールに入学しても、決められた日数分をしっかり出席しないといけないため、卒業は難しいかもしれません。

 保護者のなかには、現状不登校の状態でも受験して受かればちゃんと通うだろうと期待を込め、全日制や定時制の高校を探す方も多くいらっしゃいます。しかし、受かったとしても結局途中で辞めてしまい通信制の高校へと行くことになる――それが文部科学省の統計や東京都の進学調査表の数字に顕著に表れているのでしょう」(同)

 目先の高校入学だけを考えるのではなく、長期的視点が大事なのだと杉浦氏は続ける。

「高校を卒業できたとしても引きこもり傾向の生活がそのまま続いてしまっていれば、就職にも大きく関わってくるわけです。ですから高校進学だけでなく、もっと長い目で考えて高校卒業後、職に就くことを重点的に考えるべきです」

全日制の高校を受験する場合に内申点が低いのは不利

 今回取り上げられている都立新宿山吹高等学校に進学するには、中学校時代の内申書や内申点がどのように関わってくるのか。

「新宿山吹高等学校の受験は、数年前まではほとんど学力試験の点数だけで判断されており、内申書は参考程度に見ているというだけだったため、内申点がかなり低い不登校の生徒でも、受験のテストで良い点が取れれば合格できていました。ただ現在は内申書と学力試験の比重が7対3程度に変わっており、一応、内申点が重要になっています。今回、改めて新宿山吹高等学校に問い合わせたところ、当日の学力試験が取れていれば、斜線は不利にならないように扱うと回答がありました。

 東京都に限らず公立高校は内申点を重視していますし、全日制の高校を受験する場合に内申点が低いのは非常に不利となります。東京都の不登校向けのチャレンジスクールのように、多様な生徒に対応できるところは大都市圏を中心にはありますが、それ以外の地域では内申書がなければ、全日制の高校に行くことは困難でしょう」(同)

 最後に、不登校の生徒やその保護者に対する今後の取り組みや見解を聞いた。

「不登校・引きこもり予防協会では、不登校と引きこもりを切り分けて対策を取るように情報提供し無料判定サイトも開設しています。学校に行かなくなったから不登校と決めるわけではなく、不登校となった生徒が自宅でどのような生活を送っているのかを確認することが非常に重要です。

 不登校の生徒への対策はさまざまで、担任の先生が不登校児童に公的フリースクール=教育支援センターの紹介、民間フリースクールなどやり方はたくさんあります。ですが、引きこもりとなった生徒の場合はそもそも自分の部屋から出てこれず、家族とのコミュニケーションさえ断っているケースがあるので、引きこもり対策を取る必要があるのです。一緒くたにされることもありますが、不登校と引きこもり対策は大きく異なっていますので、若者が100万人以上引きこもり、9060問題(キュウマルロクマル問題/90代の高齢の親が長年引きこもる60代の子を支える社会問題)に発展しないよう予防活動に努めていきます」(同)

(文=A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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