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年商82億円の設備工事会社が挑む「非住宅」シフト…池袋拠点で狙う、施工管理技士の争奪戦

2026.03.11 05:55 2026.03.10 23:54 企業
取材・文=山口伸
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クロスティホールディングス本社外観

●この記事のポイント
札幌の設備工事大手、クロスティホールディングスの多角化戦略を解説 。住宅着工減を見据え不動産事業へ参入し、自社施工によるコスト抑制で中古物件の買取再販を強化 。また、埼玉から池袋へ拠点を移し応募が数倍に急増した事例や、ソフトテニス実業団による採用難克服など、立地と福利厚生を武器にした最新の人材確保策に迫る 。

 株式会社クロスティホールディングスは札幌を拠点に電気・水道・空調などの設備工事を手がける。79年の創業以来、ハウスメーカーや工務店向けに事業を展開し、内装や資材の卸売りも手がけている。近年は新規事業の開拓にも積極的で、2020年に子会社を設立して不動産事業に参入。M&Aによる他社取得も進めてきた。順調に事業を伸ばしたいところだが、最大の壁は「人手不足」だ。単に労働条件を上げるだけでは、肝心の応募が集まらないという。設備工事会社がなぜ不動産事業に参入したのか、そして深刻な人手不足にどう立ち向かっているのか。同社社長の林秀樹氏にその戦略を聞いた。

●目次

なぜ設備工事会社が「不動産事業」に乗り出したのか?

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株式会社クロスティホールディングス社長・林秀樹氏

 クロスティホールディングスは1979年、暖房・電気工事を担う東弘産業として札幌市で産声を上げた。2012年には仙台営業所を設立し、2020年以降は相次いで子会社を設立するなど、着実に事業領域を拡大している。2025年3月期のグループ全体売上高は82億878万円。その内訳は電気・水道・空調などの設備工事が6割、資材卸が2割弱、残りが不動産の内装やメンテナンスだ。

 主力である設備工事の多くは戸建住宅向けだが、同社は2020年、札幌市に株式会社コネクトを設立して不動産業へ本格参入した。その背景を林社長はこう明かす。

 

「設備工事事業では、ハウスメーカーなどから受注する形で戸建の工事を手がけてきました。しかし、札幌では新設住宅の着工件数が年々減少しており、新規事業の開拓が必要だと判断しました。市場が拡大しているリフォーム事業は魅力的ですが、大切なお客様であるハウスメーカーさんと競合してしまいます。そこで、知見の近い不動産業を選びました」(林社長)

 実際、札幌市における2025年の住宅着工件数は1万2544戸(前年比減)と、2年連続の減少を記録している。こうした市場環境の変化を見越し、同社は2017年に埼玉県川口市へ進出。水道会社や内装会社のM&Aも実施し、エリアと事業の両面から「住宅需要の減少」に対応する構えだ。

「自社で直せる」強みを生かした中古物件戦略

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ハウスドゥ札幌栄町

 不動産事業では、フランチャイズ「ハウスドゥ」に加盟し、札幌市東区で「ハウスドゥ札幌栄町」を運営している。主に2000万〜2500万円の中古戸建を扱い、物件価格が高騰する中で中古を求める現役世代のニーズを捉えている。異業種からの参入にあたり、FC加盟は人材採用の面でも功を奏したという。

「当初は採用に苦労しました。応募はあっても、賃貸仲介の経験者ばかりで、我々が求める売買に強い人材が少なかった。ノウハウを持つハウスドゥの力を借りることで、ようやく体制を整えることができました」(林社長)

 設備工事と不動産、この二つの事業には明確なシナジーがある。

「中古物件の買取再販では、内装や水道工事を自社グループで完結できるため、コストを抑えて安く物件を提供できます。特に北海道の冬に不可欠なボイラーの設置や、販売後のメンテナンスまで自社でフォローできる点は大きな強みです」(林社長)

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 今後は5年以内に不動産事業の売上高を3倍に引き上げる計画で、札幌市内での2店舗目出店も視野に入れている。

埼玉では目標未達だった応募が「池袋オフィス」で2倍に

 事業拡大の要となるのが、関東圏における「非住宅」(工場や倉庫などの法人向け施設)分野の強化だ。そこで求められるのは、施工管理技士などの資格を持つ専門人材だが、採用は一筋縄ではいかなかった。しかし、拠点を変えたことで劇的な変化が起きたという。

「当初は埼玉県を拠点として募集しましたが、採用サイトを出しても応募は目標にほど遠く、志願者のキャンセルも相次ぎました。ところが、都心進出を見据えて池袋にオフィスを構えた途端、応募が2倍にも跳ね上がったのです。今の時代、給与条件以上に『オフィスの立地』が採用力を左右すると痛感しました」(林社長)

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 テレワークからの出社回帰が進む中、若手層を中心に「都心の利便性」を重視する傾向は強まっている。同社の事例は、立地戦略がそのまま採用戦略に直結することを示している。

 また、ユニークな福利厚生も採用に寄与している。同社が抱える実業団ソフトテニスクラブだ。

「野球やサッカーと違い、ソフトテニスの実業団は非常に少ない。強豪チームは一握りで、競技を続けたくても夢を諦める選手が多い世界です。彼らの受け皿になることで、平日は社員として働き、週末は競技に打ち込む優秀な人材の確保につながっています」(林社長)

 このチームは今や北海道でナンバーワンの強豪となり、企業の広報塔としての役割も果たしている。

 クロスティホールディングスは2027年度から、「世の中の「はたらく」と「くらす」を明るくする」という新ビジョンを掲げる方針だ 。住宅設備で培った技術を武器に、不動産、そして「働く場」である非住宅分野へと舵を切る同社。採用難という時代の荒波を、柔軟な発想と立地戦略で乗り越えようとしている 。

(取材・文=山口伸)

山口伸

山口伸/ライター

化学メーカーに勤めながら副業でライターをしている。本業は理系だが趣味で経済関係の本や 決算書を読み漁っており、得た知識を参考に経済関連の記事を執筆する。取得した資格は簿記 、ファイナンシャルプランナー。

X:@shin_yamaguchi_

公開:2026.03.11 05:55