東京新聞が掲載したひとつの記事がネット上で大きな波紋を広げている。『<突撃イバラキ>カラス肉の生食文化 究極のジビエに挑戦』と題し、茨城県内の猟師の間で連綿と続くカラスの生食をレポートする内容だ。
ひたちなか市で開かれた「カラス料理愛好家の集い」に参加し、ムネ肉の刺し身(しょうゆ漬け)を食したという。合わせて炭火で焼いたモモ肉も食べているが、問題視されているのは、やはり刺し身だ。
記者は県の生活衛生課に問い合わせ、担当者から「食中毒のリスクはかなりある」として「控えてほしい」とくぎを刺されたという。さらに、カラス料理研究家の本に「生食は絶対にやめましょう」との記述があるとも紹介している。
だが、そのうえでカラスの刺し身について「想像以上に魅力的だった」と絶賛し、「この貴重な食文化がゲテモノ扱いされたまま先細ってしまうのはあまりにも惜しい」とも語る。さらに「カラス料理愛好家の集い」の常連客の一人が語った「食べ物への偏見は差別につながる。偏見をなくすことが世界平和につながるんです」との言を用い、カラスの生食に対する“偏見”をなくしたいとの意向を示している。
この記事が公開されると、「野生動物を生食するのは自殺行為」「寄生虫のリスクを考慮していないのは危険すぎる」「新聞記者なのに、美味いかどうかではなく安全性の問題だと理解していないのはおかしい」など、危険性を指摘する声や、東京新聞記者の思慮の浅さを疑問視する声がネット上にあふれた。
さらに、厚生労働省が3月8日、公式Twitterアカウントでシカ、イノシシ、カラスのイラストとともに「食中毒に注意! 中心部までしっかり加熱して食べましょう」と注意喚起している。
「シカ、イノシシ等の野獣やカモ、カラス等の野鳥は病原体を保有している可能性があり、その肉や内臓を生食することは非常に危険です。ジビエは中心部までしっかり加熱して食べましょう」
【食中毒に注意!#ジビエ はしっかり加熱しよう】
— 厚生労働省 (@MHLWitter) March 8, 2023
シカ、イノシシ等の野獣やカモ、カラス等の野鳥は病原体を保有している可能性があり、その肉や内臓を生食することは非常に危険です。
ジビエは中心部までしっかり加熱して食べましょう。#シカ#イノシシ#カモ#カラスhttps://t.co/qw2xGcEu3w pic.twitter.com/8ut2DiyZGa
ツイートではこのように記述しているが、これまでジビエに関する注意喚起ではカラスは含まれていなかった。このツイートが出されたタイミングや文言から見て、厚労省が東京新聞の記事を受けて注意喚起を行ったことは明らかだ。
ネット上の指摘や厚労省のツイートのあと、東京新聞は公式見解を出していない。Business Journal編集部でも見解を問う質問を投げており、返答があり次第、追記する。
(文=Business Journal編集部)