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「WBCやW杯の試合中は救急外来の患者激減で閑散」は本当?救急車の出動も激減?

文=Business Journal編集部
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東京消防庁のHPより

 現在開催中の「2023 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」。日本代表は9~12日に行われた試合を4連勝し、1次プールBを首位で通過し準々決勝ラウンドに駒を進めた。4試合の地上波テレビ中継はすべて平均世帯視聴率が40%超え(ビデオリサーチ調べ、関東地区)となり多くの人が試合に釘付けになっていた様子がうかがえるが、ある医師がTwitter上に、WBCやサッカーのワールドカップ(W杯)の日本代表戦が行われると、その時間帯だけ病院の救急外来に来る患者が急減すると投稿し、話題を呼んでいる。

 日本代表は大谷翔平、ダルビッシュ有、佐々木朗希らが顔を揃えるドリームチームで挑む今回のWBC。9日の中国戦、10日の韓国戦、11日のチェコ戦、12日のオーストラリアをすべて大差で勝利し、準々決勝ラウンドに進出。16日には、プールAから勝ち上がったイタリアと激突。すでに栗山英樹監督は大谷が先発投手を務めることを発表しており、日本中で勝利への期待が高まっている。

 そんななか神経内科専門医で医学博士の高橋宏和氏は11日、自身のTwitterアカウントに以下のように投稿。

<夜の救急外来はどこでもてんやわんや。でもそんな救急外来がぴたっと静かになる時があります。まるで凪。そんな時、「今晩は何故こんなに患者さんが来ないのだろう」と不思議に思うと、たいていの場合、WBCかワールドカップか日本シリーズの中継やってます>

<中継が終わるとどっと混んだりします。あと大雨の日とかは救急外来が空いたりしますがこれは病院によります>

<救急外来を受診するなら様子を見て真夜中に受診するのではなく少しでも早く受診してください>

 これを受けSNS上には以下のような反応が多数寄せられ、話題を呼んでいるのだ。

<昔は大晦日の紅白歌合戦もそうでした>

<元救急隊ですがほんまに減るってかほぼなかった気がします>

<実際ワールドカップの時は試合終了と共に呼ばれました>

<「本来は救急では無い程度の患者が救急外来を利用し過ぎている」という事なのだと思いますが。1分1秒を争う救急患者が、野球観てられる程度の患者に時間取られて助からないとか怖しい>

<国際戦で救急暇になるとか普段どれほどみんな不要不急で救急利用してるのかと涙出ますね>

<病棟でも、その時期の中継時間は患者さんがベッドにいてくれるので検温しやすく、クレームも少ない傾向にあります>

<ラグビーW杯の時に入院していたけど仲良くなった看護師さんから笑点とW杯の時間だけはナースコールが少なくなるって聞かされた記憶>

逼迫する救命救急の現場

 こうした声について東京都内の病院に勤務する医師はいう。

「W杯のときなどに救急外来が『閑散とする』かどうかは、地域や病院によっても事情はまちまちなので何とも言えないが、患者が減る傾向があるのはたしか。一概にはいえないが、夜間に救急車で搬送される人の半数くらいは緊急性を要しないケガや病気という印象。現場に駆け付けた救急隊は、その患者さんは搬送の必要が低いと考える場合も、患者さんの混乱を落ち着かせたうえで『とりあえずこのまま様子見でも大丈夫だと思いますが、病院に搬送することも可能ですが、どうしますか?』と意思を確認し、それでも救急外来に行きたいと言われれば基本的には搬送する。または自力で病院の救急外来まで来る患者さんもいるので、結果的に症状の軽い人の割合が高いのかもしれない」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、医療逼迫とともに救急搬送の現場の逼迫も社会問題化している。総務省消防庁の発表によると、2021年の全国の救急車出動件数は対前年比4.4%増の619万3581件、搬送者数は同3.7%増の549万1744人。22年12月には昭島市で救急車の単独での横転事故が発生し、乗っていた救急隊員は事故前日から17時間連続で勤務していたことが発覚し、世間に衝撃を与えた。

「コロナが一番ひどかった時期は、都内では救急隊が12時間以上も救急車に乗ったまま連続業務を強いられるということもざらだった。本当に緊急性を要する患者さんを優先して搬送するためにも、一般の人々が救急車を適正に利用するという意識を持つことはとても重要。一方、高齢者のなかには、コロナで医療が逼迫しているというニュースを見て、病院に迷惑をかけまいとして、本当に救急搬送が必要な状態なのに救急車を呼ばなかったり、通院を避けて重症化が進むケースも多く、難しい問題ではある」(前出・医師)

救急搬送された患者の半数が軽傷

 東京消防庁のHPによれば、「救急搬送された方のうち初診医師により軽易で入院を要さない軽症と判断された割合は51.4%」だといい、半数以上を占めていることになる。また、通報の約2割が緊急性のない問合せや消防に関係のないものであり、なかには「電気が消えなくなった。なんとかしてほしい」「症状の相談がしたい」といった通報もあるという。一方、意識障害や「けいれん」、大量の出血を伴うケガ、交通事故で強い衝撃を受けた際などは、ためらわずに通報するよう消防庁は呼び掛けている。

 では、今回のTwitter投稿で指摘されているとおり、WBCやW杯の日本代表戦の中継などがあると、救急搬送の通報は減るのだろうか。東京消防庁広報課はいう。

「救急車の出動件数についてデータは集計しておりますが、特定のイベントとの紐づけはできないため、お答えはしておりません。昨年の夏は猛暑でコロナと熱中症が重なり出動件数が大きく膨らみ、対外的に呼びかけをさせていただきましたが、出動件数と特定のイベントについては特に公表しておりません」

(文=Business Journal編集部)

東京消防庁:取材対象

東京消防庁:取材対象

昭和23年3月7日、自治体消防として発足。都民の生命、身体及び財産を災害から守るため、島しょ地域と稲城市を除く東京都のほぼ全域の消防防災業務を担う。高層マンションや商業施設が多い都市部、緑深い山々が広がる山間部など約1770平方キロメートル、人口約1400万人を、約1万8600人の職員が、都民の安全・安心を守るため消防行政を強力に推進。管内の各消防署に最新鋭の消防車両などを計画的に配置するとともに、災害にいつでも対応できるよう職員が24時間体制で勤務している。令和3年4月1日現在の職員数は1万8661人、消防車両等は2075台。
東京消防庁

Twitter:@Tokyo_Fire_D

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