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サイゼリヤに無料の粉チーズ廃止情報の真偽を聞いた…悩ましい「大量に使う客」問題

文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表
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サイゼリヤのHPより

 大手イタリア料理店チェーン「サイゼリヤ」が、調味料として客に無料で提供している粉チーズについて、無料での提供を廃止することを検討しているのではないかという情報が一部で広まっている。さらに、その理由として、一部の客が多量に使いすぎるためだという声もみられるが、果たしてこれらの「噂」は事実なのだろうか――。

 全国に1059店舗(2023年3月現在)を展開するサイゼリヤの業績は好調だ。同社の予想によれば、2023年8月期の売上高は前期比23%増の1772億円、連結純利益は同26%減となるものの42億円を確保、営業利益は同14.5倍の61億円となる。連結純利益ベースでは減益となるものの、原材料費やエネルギーコストの高騰を受けて外食チェーン各社が相次ぎ値上げに動くなか、サイゼリヤは値上げをしない方針を打ち出しており、コスト増分を価格に転嫁せず身を削る企業努力を続けている。来店客数(全店合計)は前年同月比増が続いており、そうした取り組みが客から支持されている様子がうかがえる。

 サイゼリヤといえば、300円(税込み/以下同)の「辛味チキン」や300円の「ミラノ風ドリア」、400円の「ミートソースボロニア風」、200円の「フレッシュワイン(デカンタ250ml)」など低価格な商品が多くのファンを惹きつけている。

「自社で農園を持ち野菜を種から開発したり、オーストラリアにハンバーグとミラノ風ドリアのための自社工場を建設したり、ワインやオリーブオイル、生ハム、チーズなどをイタリアのメーカーや農場と共同で開発して直輸入したりと、単なる一外食企業の枠を超え、素材の開発・生産のフェーズからしっかりと関与。それが圧倒的な低価格と高いクオリティの実現につながっている。

 また、サイゼリヤは期間を区切っての安売りセール的なことはしないことで知られているが、昨年は一定の人気があったパスタの大盛り・おこさまサイズについて値上げではなく廃止という判断をするなど、『いつも低価格』という消費者からのイメージを守るための戦略が非常に巧妙。このほか、アルバイト店員が積極的に改善の提案をしたり、自発的に判断して動ける仕組みが整っており、店舗オペレーションでも学ぶべき点は多い」(外食業界関係者)

無料の調味料が人気

 そんなサイゼリヤで人気のひとつとなっているのが、サービスコーナーに置かれている粉チーズやシチリア産の海塩、唐辛子フレーク、特製ホットソース、オリーブオイルといった調味料を無料で使える点だ。これらを使って料理を自由にアレンジして楽しむファンも少なくないが、この粉チーズの無料提供が廃止されるという情報が一部SNS上で拡散。さらに廃止の理由として、一部の客が多量に使いすぎるためだという声もみられるが、果たして事実なのだろうか。

 サイゼリヤの運営会社に問い合わせたが、期日までに回答を得られなかった。また、東京都内の店舗で店員に確認したところ、「今後も無料で提供を続けていく予定です」とのことだった。ちなみに有料のトッピングチーズ「ペコリーノ・ロマーノ」(100円)は従来どおり注文制となっている。

 飲食店では、醤油や塩、ソース、タレなどの調味料や、紅ショウガや薬味、ガリなどが無料で提供されているが、顧客が好きなだけ取れるだけに、店側にとっては大きなコスト負担になっていないのだろうか。また、客による「使いすぎ」を防ぐために店側はどのような対応を講じているのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏に解説してもらった。

調味料の有料化の動き

 一般的な飲食店では、無料で提供する調味料やトッピング、添え物など、顧客が好きなだけ量を取れる食材のコストについて、今まではそこまで明確には考慮していなかった。「月トータルで食材・材料関係の仕入れがいくらあって、売上がいくらだから、材料費率は何%」といったように全体で数字を把握をしているからです。特に個人経営の店では、全体をなんとなくアバウトにしか把握していないところもあります。料理一皿あたりの材料費を計算し、それに基づき価格を決定しますが、料理に使用する調味料は計算に含めるものの、テーブルに配置する調味料までは考慮していないのが一般的です。

 ですが昨今の材料費の高騰や迷惑客の増加、栄養補給の感覚で大量に無料の調味料を使用するお客の増加で、無料の調味料の扱いに見直しが必要となってきています。材料費と材料費率が上がってくると、飲食店は価格を上げたりサービスを削ったりすることを考えます。加えて、迷惑客の行為がクローズアップされるなかで、いろいろ考えなくてはいけない状況になっています。

 有名なクラフトのパルメザンチーズ(粉チーズ)を例に計算してみましょう。1本80gで600円ほどで、お客が大さじ1杯分(約6g)を使用したとして、店側としては約46円のコストに相当します。1000円のパスタであれば約4.6%の材料比費に相当します。飲食店における材料費率の目安は30%なので、4.6%というのはかなり高い比率です。

 もし迷惑客がパスタ1品に粉チーズを1本使ってしまったら、店側は何かしらの対策を考えなくてはなりません。より安価な商品への変更や無料調味料の廃止・有料化という方法が考えられますが、実際に今ではトッピングとして有料化する動きが広まっています。

 すでに提供しているサービスをやめると客離れが起こる懸念もあるため、段階的な対策をとるケースもあります。まずは「告知」として、店内の張り紙や卓上ポップ、SNSを使って常識的な範囲内での使用を呼び掛けます。それでも材料費の上昇により厳しくなってきたら、料理の価格を上げるか、もしくは価格を据え置くことを理由に無料サービスを有料化します。

 原材料費の高騰や迷惑客の悪行がクローズアップされる今、飲食店にとっては、今まで変えられなかったものを変えるチャンスの時期でもあります。もし過剰サービス気味だと感じながらも変えられていなかったところがあれば、適正価格・適性サービスに移行するチャンスです。給料が上がらない、スタッフが集まらない、長時間労働、休みが取れないといった問題は、売上と利益が増えれば多少なりとも改善できる場合もあります。ぜひお客側も、そうした飲食店側の事情を踏まえて、調味料の有料化といった動きに理解を示していただければと思います。

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

Instagram:@masakazuema

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