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介護士「お前らのご家族をお預かりする前に言っておきたい」投稿が話題…異論も

取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio
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「gettyimages」より

 少し前、介護士とみられる人がインターネット上に投稿した以下の書き込みが話題を呼んでいる。

<介護士していて感じる事がある。
お前らのご家族をお預かりする前に 言っておきたい事がある。
かなりきびしい話もするが 介護職員の本音を聴いておけ。
熱があるのに預けようとするな。嚥下関係なく利用者にガムや飴をもたすな。
もっとひどい感染症や悪化しても職員は責任を負えない。
経管にしてるor胃がん利用者に特上うなぎやヨーグルトを持ち込むな目の前で食うな。
くだらない用事(取り皿くださいとか醤油ソースくださいとか)でナースコール鳴らすな。
着替えは利用者のサイズに合うものにしろ。
何度もきれないからと返却したのをそのまま、また持ってくるな。
古着でも子供のお下がりでもいいがとにかくキツすぎるのはやめろ。
なければ新品を買え。ユニクロとかしまむらとかあるだろ。着替えはあるだけもってこい。靴下は捨てるほどもってきて。クッションまくらあると良い。布切れボロキレ寄付たすかります。
出来る範囲で構わないから。

忘れてくれるな。面会時間と面会人数とマスクと消毒。急に追加いいですかはやめてくれ。ナチュナルに遅刻早すぎ当日面会やめてくれ。咳してるのに施設はいるな。
検温しろ>

<近くの席の他の利用者にウザ絡みはやめろ。
帰りたいよね~なんて余計なことは言わんでくれ。
お前がそいつのケアしてくれるならいいが無理だろ。
お前達家族にはお前家族にしかできないこともあるから
それ以外は口出しせず黙ってくれ。
正直どんなこったレクよりも家族の面会の方が嬉しいんだから。
仕事やめて介護やろうなんて思うな。稼ぎがいいなら尚更だ。
ガッツリ稼いでたまに面会してやればそれでいいんだから。さっさと施設に預けるかサービスフル活用してうちらを利用しろ!>

 これに対して、言葉遣いは荒々しいが、介護業界の現実を真摯に伝えてくれていると感じたユーザーが多かったようで、「関白宣言のようなどんでん返しの優しさ」「メモッとく ありがとう」などの好意的なコメントが寄せられている。この投稿内容は、実際に現場で働く介護従事者にとって共感できるものなのだろうか。有料老人ホーム所属の介護福祉士 ケアマネジャーのA氏に聞いた。

書き込みの内容はコミュニケーション不足が要因の一つとして考えられる

 この投稿主が従事しているのは、A氏が勤務する老人ホームとは施設の種類が異なり施設ごとに管理体制も違うため、個人的な要因と施設側の要因を一緒くたには出来ない。その前提でA氏はいう。

「率直にいって、この書き込みの内容には共感できない部分があります。言葉遣いの荒さはネット上の書き込みということを考慮して論点から外すとしても、です。一番の理由は、利用者・入居者様やご家族様とコミュニケーション不足なだけなのではないか、と感じるからです。こんなふうに問題提起するようにネットで書き込まずとも、基本的に利用者・入居者様やご家族様ときちんと意思疎通ができていれば、問題化することは少なく、問題化したとしても対応・改善していけると思います。

 たとえば、ご家族様がガムや飴を持たせるのには、実は利用者・入居者様本人がガムや飴があると、精神的に落ち着くことができるからというような理由があるのかもしれません。そういった事情は、頭ごなしに否定して注意するだけだと聞き出せず、じっくり話を聞く姿勢で接することでお話ししてくださることもあるわけです。ご家族様や利用者・入居者様の想いやこだわりが強く、すぐに聞き入れてもらえないというケースや、ご家族様もご高齢で物忘れしてしまうというケースもありますが、根気よく向き合っていくのも我々の仕事のひとつなのです。

 私たちの施設では、控えてほしい事柄を注意喚起するというよりも、ご家族様と定期的に月に一度行っているお電話での近況報告の際にお伝えしたり、面会時にいらっしゃったときにお話をしたりするようにしています。そのときに、ご家族様がどうしても入居者様のためにやってあげたいことなどがあれば、そのご要望が難しい場合でも無下に断ることもしません。ひとまず一旦受け止めて『では、こうしましょうか?』と、できるだけ意見を反映できるように折衷案を提案するなどしています」(A氏)

 やはり重要なのは、密なコミュニケーションを取ることのようだ。逆にいえば、我々が家族の立場で介護施設に預ける場合や、利用者・入居者として利用する場合も、施設の職員たちときちんとコミュニケーションを取る必要があるということだ。まずは相談というかたちでこちらの要望を伝えることから始め、施設側の状況や職員側の都合も踏まえたうえで、歩み寄っていく姿勢も大事なのかもしれない。施設側や職員側が、こうしてもらえるとありがたいということや、こういうことはやってほしくないということを、我々のほうから積極的に聞いていくぐらいのスタンスがあるといいのではないか。

 ただA氏も、書き込みの終盤である「お前達家族にはお前家族にしかできないこともあるから」以降の言葉には、投稿主の意見に納得できる部分もあるそうだ。

「書き込みの最後の部分に関しては共感できる部分があります。家族にしかできないことがあり、それは数十分の面会でもご入居者にとってはどんなイベントよりもうれしいことであること。普段あまり会話や表情の変化の少ない方でも、ご家族様と会われるときは笑顔でたくさんお話しされている場面を、実際に何度も見させていただいています。ご入居者様の安心できる生活の提供とご家族様の負担軽減、どちらもこの仕事の役割であると思います」(同)

認知症の入居者、本来の「人となり」を知ることが大事

 利用者・入居者のなかには認知症を患っている方もおり、A氏もコミュニケーションの難しさを実感していたという。

「認知症の基本的な症状としては物忘れがありますが、徘徊や暴力などといった周辺症状を改善できるきっかけは、その利用者・入居者様が以前どんな生活をしていたかといったことから、知ることができる場合もあるんです。『この入居者様は暴力を振るう人』というふうに表面的なレッテルを貼って接してしまうと、そこから先、状況を改善させていくことはできなくなってしまうでしょう。

 本人も徘徊や暴力をやりたくてやっているわけではありませんから、『その人自身』と『認知症の症状』を一緒くたにせずに、切り分けて考えることが必要で、そのためにもその方がどのような人物なのかを深く知ることが大切なんです。たとえば、昔の写真を拝見してイメージしたり、ご家族からどんな生活を送ってきたかのお話を伺ったりして、本来の人となりを知れば、うまく接していく糸口が見えてくるのではないでしょうか。

 ただ、その人の『本来の姿』と『認知症の症状』をきちんと分断して考えられるぐらい、ある種の達観ができるようになったのは、私も介護職に就いて5年、10年経ってからだったと思います。ですから、まだ業界経験が浅い人には、いきなりは難しいかもしれませんね」(同)

(取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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