今月発売されたコンビニエンスストアチェーン・セブン-イレブンの「はみだす板チョコパンケーキ」がSNS上で「バカが考えたパン」「普通に美味しかった」「やっと改心したか」などと話題を呼んでいる。正方形の板チョコとホイップクリームを丸いパンケーキでサンドしたスタイルで、板チョコがパンケーキからはみ出している見た目のインパクトが強いが、果たして149円(税込み)に見合うクオリティなのか。専門家の見解を交え追ってみたい。
業界最大手のセブンの総菜・弁当類の新商品は何かと話題になるケースが珍しくない。以前から値段の割にサイズが小さいといわれることが多いが、有名なネタとしてあげられるのが「容器の底上げ」だ。過去、お弁当やパスタ、麺類などの容器の中央部分が盛り上がっている容器への疑問がSNS上で沸いたことは一度や二度ではない。これについてセブンは、2020年9月にニュースサイト「WEZZY」の取材に対し「昨今の環境課題であるプラスチックごみ削減の目的で容器素材を薄くしており、強度を保つための設計であると同時に、レンジ加熱の際に中心まで温まりやすい形状にしております」とコメント。純粋にエコの観点に基づく取り組みだと説明している。
また、サンドイッチなどで陳列時に客から見える前面に具材を寄せる「ハリボテ」が話題になったことも。21年の当サイト記事の検証では、確かにハムとレタスのサンドでは前方に片寄せされていたが、ファミリーマートとローソンの同類商品でも同様の事象が見られ、セブンのたまごサンドは全面にぎっしり具が詰められており、他社よりもお得感が強かった。
ちなみにセブンのサンドイッチをめぐっては、昨年末から今年初めにかけて「ツナサンドにツナが入っていない」という報告がSNS上で相次いだが、今年2月の当サイト記事の検証では、確かにツナの量が著しく少ないことが確認されている。
物議を醸したのが21年に販売されていた「練乳いちごミルク」だ。セブンはTwitter公式アカウントで「プルプル食感のタピオカと、ゴロッとしたいちご果肉のW食感が楽しめます」とPRしていたが、透明なプラスチック製のカップには帯状に「いちご」の果肉ピューレを表現する赤色の塗装が施され、さらにカップ底部にも果肉が沈殿しているかのような塗装がなされていた。これに「カップ詐欺」「優良誤認」だとの声が多数寄せられた。同類の事例としては、20年に発売された「sonnaバナナミルク」が、透明の容器の一部にバナナのピューレを視認させるかのようなプリントが施され、さまざまな指摘がなされたこともあった。
そして今年5~6月には、北海道の店舗で販売していた、おにぎり「炭火焼き室蘭風やきとりおむすび」「炭火焼き美唄風やきとりおむすび」について、実際には海苔を使用していないにもかかわらず、パッケージに海苔の画像がプリントされているとして、優良誤認に該当するのではないかという指摘も相次ぐ事態となっていた。
「セブンの自社開発の総菜やスイーツのサイズが小さいというのは事実だが、クオリティが高いことは認めざるを得ない。価格とボリュームを勘案するとファミリーマートやローソンのほうがオトクなのは間違いないが、クオリティ面ではセブンが圧倒している。セブンの食品が割高であったとしても、国内に限っていえば客数・客単価ともに上昇トレンドで業績は順調そのものなので、戦略としてはうまくいっていると評価できる」(コンビニ業界関係者)
すべての層に受け入れられる味
そんなセブンが今月新たに投入した「はみだす板チョコパンケーキ」。サイズを計量してみると、パンケーキの直径は約10cm、正方形の板チョコは一辺が約9cm、商品全体の厚さは約3~4cmとなっている。パンケーキといえば2010年頃からブームに火がつき全国各地に多くの専門店がオープンし、人気店では長い行列ができる光景がみられたが、それから約10年が経過した今も、各コンビニチェーンのパン陳列棚にはパンケーキ類が並んでいる。セブンは今回のユニークな新商品を発売した狙いについて、12日付「ねとらぼ」記事の取材に対し「見た目、味ともにインパクトのある魅力的なパンケーキを開発したい」という考えから発売に至ったとコメントしているが、気になるのはそのクオリティだ。日本スイーツ協会認定スイーツコンシェルジュで『スイーツ男子はなとものI loveパンケーキ』(KADOKAWA)著者、はなとも氏は次のように解説する。
「ブームを経て今や国民食となったパンケーキですが、今回のセブンの商品は一言でいえば『とても美味しい』。小さいお子さんも含めて老若男女、誰が食べても美味しいと感じられる商品だといえます。店舗で目に入ると『これなんだろう?』という疑問から手に取ってしまい、『食べてみたい』と購買意欲をかき立てられる点も面白いです。
パンケーキ部分のクオリティは非常に高く、モッチリ系ではなくフワフワ系。モッチリ系だとパリッとした板チョコに食感的に合っていなかったのではないでしょうか。甘さの度合いとしては甘すぎず、マクドナルドの朝マックで提供されているパンケーキなどと比べると甘さは控えめ。板チョコも甘すぎずダークなテイストでもなく、全体として『中間的な』テイストに仕上がっており、若い女性など特定のターゲット層を意識しているというよりは、すべての層に受け入れられる味になっており、その点はビジネスとしてとても上手いと感じます」
また、コンビニ業界関係者はいう。
「見た目から想像されるとおりの味、期待を裏切らない最大公約数的な味になっている。セブンの自社開発の食品には意外に尖ったものも少なくないが、今回の商品は極めてオーソドックス。特にパンケーキの部分は板チョコにマッチするよう改良を重ねてかなり入念に開発されていると感じ、そのあたりは『さすがセブン』と認めざるを得ない。板チョコの代わりに、あんこやクリーム、ジャムなどを挟むスイーツ系や、チーズや玉子、ソーセージパティを挟むハンバーガースタイルなど、今後いろいろな方向のパンケーキサンドに展開していけば面白いのでは」
(文=Business Journal編集部、協力=はなとも/スイーツコンシェルジュ)