ゴールドカード保有者の6割が年収400万円未満という調査結果が話題となっている。NTTドコモが10月に実施した「全世代のゴールドカード保有・利用に関する調査」によれば、ゴールドカード保有者(1613人)に「現在の個人年収」を質問したところ、約6割の人が個人年収400万円未満という結果を得たという。以前より手に入りやすくなったといわれ、確かにゴールドカードのステイタス性は失われてしまった印象があるが、ゴールドカードの保有者層に変化はみられるのだろうか。また、高所得者といわれる層はどんなカードを選んでいるのだろうか。ポイ活アプリ「ポモチ」を運営する株式会社オモチの取締役であり、個人として40枚ものクレジットカードを保有する足澤憲氏に、現在の各種カードの位置づけや年収ごとにみるお得なカードについて聞いてみた。
ゴールドカードはステイタス性からお得度重視へ
「かつてゴールドカードといえば年収や年間利用限度額の高さなど、ステイタス性を表す印象がありました。しかし現在では、ステイタス性が失われたというより『多様化』したという印象が強いです。基本的にゴールドカードは一般カードよりも利用限度額の高さや旅行時の保険が手厚いなどのメリットがあります。それに加え最近では、一般カードよりもお得な機能がついており、その機能もさまざまです。発行会社側としてはゴールドカードを多く発行して、自社グループの経済圏の固定客を増やしたいという意図があるのかもしれません」(足澤氏)
各社のゴールドカードのサイトを見てみると、確かに還元率やポイントといったお得さをアピールしている。昔のようにステイタス性を訴えるものではなくなっているようだ。発行会社が利用者を増やすべく競い合うように発行した結果かもしれない。
カードはポイントで選ばれる時代
発行会社側はカードのお得さで集客を図ろうとしている印象があるが、一方で消費者側がカードを選択する場合、どのような基準で選ぶことが多いのだろうか。消費者側の視点について聞いてみた。
「今の消費者はポイントで選ぶ傾向が強いです。『ポイ活』という言葉も定着した結果、クレジットカードは昔の『怖いもの』という認識から『お得なもの』という認識に変わりました。お得さを訴える記事も多いからでしょう。割引サービスの付いたカードもありますが、やはり消費者を集めやすいのは付与ポイントの高いカードです。でもキャンペーンなどで一時的に高還元になっているポイントは意外と有効期限が短いものが多く、集客につながっていても消費者側はポイントを失効してしまうことが多いようです」(同)
クレジットカードは付与されるポイントで選ばれる時代になったようだ。コモディティ化が進んだことを表しているのだろう。そしてゴールドカードもステイタス性ではなくお得さが目立つようになった現在、年収1000万円以上の高所得者はどのようなカードを選ぶようになっているのだろうか。アンケートデータを取ったわけではないと前置きしつつ、高所得者のパターンとして次のような傾向がみられると足澤氏はいう。
「高年収の人々は必ずしもステイタスでカードを選ぶわけではありません。高所得層にはマネーリテラシーの高い人々が多く、よりお得なカードを求めるべくポイントやマイルの還元率といったお得さで選んでいる傾向があります。」(同)
足澤氏は「クレジットカードランチ」なるものを開催していたことがあり、それぞれが持つカードの特徴について語り合う機会を設けていたという。そこで高所得者が選びがちなカードを知ったようだ。高所得者もポイントを重視するとは意外な印象である。
年収ごとのカードの選び方
ステイタス性ではなくお得さが重視されるようになったクレジットカードだが、それでもランクごとのカードが提供されており、対象としている客層も異なるように見える。それでは年収ごとにどのカードを選ぶのが正しいのだろうか。
「年間利用額が100~200万円の中間層は 『Oliveフレキシブルペイゴールド』や 『エポスゴールドカード』などのゴールドカードがおすすめです。こうしたカードは年間利用額が100万円を超えると1万円分のポイントが付与されます。そのため基本的な還元率が0.5%でも、100万円を超えた時点で実質還元率が1.5%になります」(同)
外食費や食材費だけでなく、水道光熱費や通信費もクレジットカード払いにすれば年間100万円は簡単に超えそうだ。一方、高所得者の場合は複数のカードを保有するのが良いという。
「年収1000万円以上、年間消費額100~200万円を超える方は複数のカードを併用すると良いです。前述したゴールドカードは100万円分使うと実質還元率が1.5%になりますが、それ以上使い続けると還元率は0.5%に収束してしまいます。100万円ごとにこれらのカードを併用することで、実質還元率1.5%をキープすることができます」(同)
つまり100万円ごとの1万ポイント付与は一回きりなので、何回か付与されるために複数用意しようという考えである。
年収数千万円の人はマイル・ホテル系のカードを
そして年収1000万円台よりさらに上、数千万円単位の場合はジャンルを定めた選び方が良いと足澤氏はいう。
「年収が数千万円単位になる人は海外や旅行に行く機会が多いかと思います。飛行機に頻繁に乗る人はマイル系のカードがお得になるでしょう。高級ホテルによく泊まる人は『マリオット ボンヴォイ・アメリカン・エキスプレス』などが良いかもしれません」(同)
マリオット ボンヴォイ・アメリカン・エキスプレスは「マリオット」や「リッツ・カールトン」などのホテルで100円の支払いごとに4ポイント貯まるカードだ。とはいえこのあたりの年収帯になると、積極的にポイントを貯めるというよりも、普段使いで貯まったポイントをご褒美としてホテルに使おうという発想になるのかもしれない。
今回の取材でクレジットカードが従来の支払い機能やステイタス性の誇示ではなく、ポイ活という側面で利用されていることがわかった。ゴールドカードが発行されやすくなった背景には、発行会社側がポイ活ユーザーを囲い込もうとする意図があるのかもしれない。そして消費者の年収帯ごとにお得なカードが変わるということもわかった。銀行系、流通系と各社が競うようにカードを発行している現在、次にどれほどお得なカードが発行されるか注目しておきたい。
(文=山口伸/ライター、協力=足澤憲/オモチ取締役)