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Meiji社、コロナワクチンの危険性を主張する学会を提訴か…法的措置を検討

文=Business Journal編集部、協力=上昌広/医師、医療ガバナンス研究所理事長
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Meiji Seikaファルマのリリース「日本看護倫理学会の声明文に対する当社の見解」

 新型コロナウイルスの変異型対応ワクチンであるレプリコンワクチン「コスタイベ筋注用」を販売するMeiji Seikaファルマ(明治ホールディングス<HD>傘下)は今月9日、「日本看護倫理学会の声明文に対する当社の見解」と題するリリースを発表。8月7日に「【緊急声明】 新型コロナウイルス感染症予防接種に導入されるレプリコンワクチンへの懸念  自分と周りの人々のために」を発表しレプリコンワクチンの危険性を主張している同学会への反論を行った。Meiji社は同学会の声明について、具体的な記述を取り上げて反論を展開したうえで、

「事実誤認および科学的知見に基づかない問題提起によって、一般市民の不安を煽ることは、医療に関わる社会的責任を持つ組織としてあってはならないことだと考えております」

「わが国の薬事行政およびワクチン接種制度を根底から否定するものであると考えます」

としている。また、Meiji社は8日に開いた会見で「コスタイベを導入した医療機関に対して誹謗中傷や脅迫が寄せられている」として、コスタイベへの批判を繰り返す団体を名誉毀損で提訴する意向を表明した。

 コスタイベは米アークトゥルス・セラピューティクスが開発したワクチンで、今年9月に厚生労働省により承認された。10月から接種が開始され、国による定期接種の対象にもなっている。同社によれば、医薬品の臨床試験の実施基準に関するGCPガイドラインに則して国内外で実施した複数のランダム化比較試験(合計約1万8000人に接種)にて有効性・安全性が確認されているという。

Meiji社による反論

 Meiji社は今回のリリースのなかで、日本看護倫理学会が声明で「海外で未認可であることは何らかの安全上の懸念があるのではないかと疑わざるを得ません」と主張している点について、「既にEMA(欧州医薬品庁)に承認申請がなされ、現在、審査の最終段階となっております。また、米国をはじめとした欧州以外の国と地域においても臨床試験・開発・申請準備が進んでいます」と反論。「主張は、当学会の憶測にすぎず、明らかな事実誤認に基づく主張であると考えます」としている。

 また、同学会がレプリコンワクチン自体が接種者から非接種者に感染(シェディング)する懸念があると指摘している点について、厚労省が示している「レプリコンワクチン接種者から他者にワクチンの成分が伝播するという科学的知見は得られていません」との見解を引用し、科学的知見に基づかない主張だとしている。

 このほか、同学会が「mRNAワクチンの塩基配列がヒトの肝細胞のDNAに逆転写されたと報告されており」「ヒトの遺伝情報に影響しないという言説は根拠を失いつつあります」と主張している点について、Meiji社は「ヒト細胞には通常、逆転写酵素が存在しないため、ワクチンのmRNAがDNAに組み込まれることはなく、人の遺伝情報や遺伝機構に悪影響を及ぼすことはありません」「米国疾病予防管理センター(CDC)は、mRNAワクチンがヒトのDNAに影響を与えないと発表しており、本情報が誤りであるとの注意喚起を出しています」と反論している。

不透明な背景

 レプリコンワクチンの安全性について、医師で特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長、上昌広氏はいう。

「私は、現時点でレプリコンワクチンを法定接種の枠組みに加えることに賛成できない。それは、接種した人が周囲にうつすからなど、一部の人が指摘している理由ではない。このワクチンは、小規模とはいえども、治験にて安全性が証明されている。また、作用機序から考えても、そのような懸念はない。接種したコロナウイルスのmRNAが体内で自己複製されるため、少量のワクチン投与で効果が持続する。今後のパンデミックを見据えれば前途有望な技術だ。

  ただ、ワクチンは健康な人を対象に、何千万人にも接種するため、高いレベルの安全性が求められる。ファイザーやモデルナ製のワクチンの承認が議論された2020年ならともかく、コロナウイルスがオミクロン株となって弱毒化し、さらに大規模な使用経験があるワクチンが他にある現時点で、あえてレプリコンワクチンを使用する必要はない。明治HDは、東南アジアなどで大規模な治験を進めており、その結果が出てから承認、使用してもいいだろう。

  おそらく、今年、レプリコンワクチンを希望する国民、医師は少ない。私は、それでも明治HDは構わないと考えていると思う。それは、コロナワクチンは国が買い上げるからだ。現場で使用されようがされまいが、同社は、今後、毎年数百億円の売り上げが期待できる。在庫リスクもない。

  これは厚労省も認識していただろう。なぜ、こんなことが許されるのか。それは、厚労省が明治HDに借りを返そうとしたからだと考えられる。それは2015年に組織的不正が露見した化学及血清療法研究所(化血研)を、明治HDが最終的に引き受けたからだ。現在のKMバイオロジクスである。当時の塩崎恭久厚労大臣は厳しい処分を求めたが、A型肝炎など一部のワクチンを化血研が半ば独占販売していたため、『倒産』させるわけにはいかなった。アステラス製薬など大手国内企業に打診したが、全て断られ、最終的に熊本県庁や県内企業とともに、明治HDが事業を継承した。

  今やコロナワクチンはファイザー一強だ。まさか明治HDの子会社が、ファイザーと伍して、ワクチンを開発・販売できると考えている人はいないだろう。『国産ワクチン確保』を合言葉に、利権が生じているような気がしてならない。今回のレプリコンワクチンに対する強い拒絶反応は、このような不透明な背景が影響しているのではなかろうか」

(文=Business Journal編集部、協力=上昌広/医師、医療ガバナンス研究所理事長)

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
医療ガバナンス研究所

Twitter:@KamiMasahiro

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