コロナワクチン、接種後に副反応があっても2回目の接種は可能?1回では効果が不十分?
6月11日、コロナ禍の中で開催されたG7サミット(先進7カ国首脳会議)で、菅義偉首相はあらためて東京オリンピック・パラリンピック開催への意欲を表明。「安全、安心な東京大会の開催に向けて万全な感染対策を講じ、準備を進めていく。世界のトップ選手が最高の競技を繰り広げることを期待する」と述べた。日本がどのように感染拡大を制御し、予防策を講じ、いかにオリンピックを成功させるかに世界の注目が集まる。
G7でも「東京オリンピックは開催する」との認識を得た以上、今後、中止となる可能性は限りなく低いだろう。オリンピック開催を前提に考えれば、ワクチン接種率を上げることが急務といえる。しかしながら、ワクチン接種は他の先進国に比べ日本は出遅れている。高齢者に対しては2回目のワクチン接種が7月末に終了する見込みの一方、16~64歳への1回目の接種がようやく拡大されつつあるものの、2回目の接種完了はオリンピック開催には到底間に合わない。
また、ワクチンへの期待が高まる一方で、1回目のワクチン接種を済ませた高齢者が入居するグループホームでクラスターが発生したというショッキングなニュースがあった。ワクチン2回接種の重要性について、慶應義塾大学医療政策・管理学教室特任助教の坂元晴香氏に聞いた。
「現在、日本で主に使用されているのはファイザー製とモデルナ製の2つですが、基本的にこれらは2回の接種が必要とされています。研究によっては、1回の接種でもそれなりに抗体価が上がるとするデータもありますが、2回接種と比較するとその数値は小さいです。また、1回では十分に抗体価が上がりきらないという研究報告もあり、十分な抗体価を有するためには、現時点では2回接種したほうが確実な効果が得られるとされています。十分な抗体が得られるのは、2回目を接種してから約2週間後とされています。したがって、必ず2回接種すること、そして2回目を接種してから2週間が経過するまでは、まだ十分な抗体はないと思って生活をすることが大切です」
また、変異株への効果にも、1回と2回接種では違いがある。
「5月上旬に発表された横浜市立大学の研究によると、2回接種したほうが、1回接種に比べて変異株へも高い効果が示されることがわかっています。1回接種のみだと変異株に対しては効果が不十分な可能性があり、やはり現時点では2回接種したほうがよいと思われます」
クラスターが発生した施設は、ワクチンの1回目の接種を終えた高齢者が利用していると報道されている。やはり、1回接種では感染リスクを大きく下げられないと考えるべきなのだろう。しかし、ワクチン接種に関しては、1回目よりも2回目の接種後のほうが副反応の起こる割合が高いとの噂から、接種に不安を感じる人も多い。
副反応への懸念
「アレルギーに関してですが、ファイザー、モデルナのmRNAタイプのワクチンが接種できない人は、『1回目の接種でmRNAワクチンに対してアナフィラキシー反応が起きた人』『 PEG(ポリエチレングリコール)にアレルギーがある人』に限られます。それ以外の物に対してアレルギーがあったとしても、基本的には問題なくmRNAワクチンを打つことが可能です」
PEGは多くの医薬品や化粧品等に含まれており、広く流通しており、PEG自体がすべての人にとってアレルギーを起こしやすい成分というわけではない。しかし、PEGにアレルギー反応を起こす人は存在するため、過去に薬によるアレルギーがある人は、医師に相談をしてほしい。
「1回目のワクチン接種後にごく軽度のアレルギー反応が起きた場合でも、PEG以外に対してアレルギーがある場合は、基本的には問題なくmRNAワクチンは接種できます。一方、PEGにアレルギーがある場合、及び1回目でアナフィラキシーが起きた場合には、mRNAワクチンを打つことはできません。将来的に、日本でも認可されたアストラゼネカ製のワクチンが利用できるようになった場合には、そちらを接種することも一案です。それまでの間は、引き続き感染対策行動を継続することが必要になります」
ワクチンの2回接種が完了しても、日本の社会全体が集団免疫を獲得するまでには、まだ相当な時間を要するだろう。ワクチン接種の有無にかかわらず、マスク、手洗い、3密を避けるなどの感染防止対策は、今後も励行する必要がある。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)