対するトヨタ自動車は「カローラ」など小型車が好調で、8月は前年同月比20.0%増の9万4200台と、5カ月連続のプラス。ホンダも新型の多目的スポーツ車(SUV)2車種が好調で同50.7%増の7万8277台となり、前年実績を6カ月連続で上回った。
1~8月の累計販売台数は日産が前年同期比1.7%増の76万800台の微増にとどまったのに対し、トヨタは同13.0%増の69万9500台、ホンダは同34.9%増の61万2276台と大幅に数字を伸ばした。日系メーカーでは日産が他社を引き離し快走してきたが、トヨタやホンダが激しく追い上げてきた。
中国市場全体の8月の新車販売台数は前年同月比3.0%減の166万台で、5カ月連続のマイナス成長。1~8月の累計では1501万台と横ばいだった。
かつて中国市場では日系車がシェア1位だったが、12年の尖閣諸島国有化に端を発する反日感情の高まりを受け、販売台数は激減。底なしの状態が続いた。
逆襲に転じたのは15年からだ。日系メーカーのシェアは20%に達し、尖閣事件以前の水準に回復した。高級車はドイツの3大ブランドであるアウディ、BMW、ベンツの後塵を拝しているが、小型車やスポーツ車が好調だ。
販売を伸ばしたのは、新車効果と値下げ策が奏功したからだ。トヨタはカローラを値下げした3月以降、それ以前の倍以上売れ、合弁会社である一汽トヨタ自動車の中で、カローラは売り上げナンバーワンの車種になった。ホンダは新型SUVが若者に圧倒的な支持を受けた。新車と値下げが、トヨタとホンダの販売好調の両輪になった。
巻き返し図る日産
日産は中国市場に軸足を置いてきた。15年3月期のグローバル販売台数は前期比2.5%増の531万台。一方、日本は同13.3%減の62万台と大きく落ち込んだ。中国は0.5%増の122万台で日本の2倍となった。中国と米国(8.9%増の140万台)が日産の営業の2本柱だ。ところが中国市場が失速気味なのだ。景気低迷以外にも不振の原因があった。有力な新車の投入がここ1~2年滞っていることだ。
そこで日産が巻き返しのカードとして切ったのが、SUVである。日産の合弁会社、東風日産常用車は大連工場をSUVの生産拠点と位置付け、昨年10月から人気の「エクストレイル」の生産を開始。さらに今年8月、新型「ムラーノ」の販売を始めた。若者の人気が高まっているSUVでシェア拡大を目指す。
東風日産は新型ムラーノの価格を、機能をアップした上で旧型の588万円から470万円へと100万円以上も値下げした。日産は新車の投入をテコに、前年実績(122万台)以上を目指す考えだ。
外資叩き
ところが、反転攻勢に出た矢先に、独占禁止法違反の処分を受けた。中国・広東省の発展改革委員会は9月10日、東風日産に対し独禁法違反を理由に1億2300万元(約23億円)の罰金を科す処分を決定した。発表によると、東風日産は広州市内の販売店に対し、乗用車の販売価格がメーカー側の想定以上に安くならないよう圧力をかけ、購入者の利益を損なっていたという。
中国では8月まで5カ月連続で新車販売の前年実績割れが続き、販売店の中には大幅な値引き販売に走ったところが出た。そこで東風日産は、価格維持のために販売店に圧力をかけたというわけだ。ちなみに中国では14年に独フォルクスワーゲン(VW)と米クライスラー、今年4月にも独ダイムラーの中国合弁企業に独禁法違反で罰金の支払い命令が下されており、中国政府による「外資叩き」が強まっているとの見方も世界的に強い。
独フランクフルトで開催されたモーターショーに出席した、ルノー・日産のカルロス・ゴーンCEO(最高経営責任者)は9月16日、中国の生産能力について、「能力を縮小することはないが、(自動車市場の)成長率が鈍化しているので増強については慎重に検討しなければならない」と述べた。その一方で、中国市場については楽観的な見方をしており、16年から生産を始めるルノーの工場については計画通り進めると語った。
(文=編集部)