ベンツ「A250 4MATIC セダン」、ポルシェ「Macan S」…試乗で心をつかまれた輸入車5台
40回目となる日本自動車輸入組合主催の試乗会が、2月に大磯で行われた。ちなみに、大磯プリンスホテルを起点とする私の評価コースは10年以上前に設定したもので、ハンドリング、乗り心地、ロードノイズなどの評価に適した対向車がほとんど来ない荒れた路面の屈曲路に加えて、一般道路、高速道路などを含み、限られた試乗時間の中で総合的な評価が可能なコースだ。
以下の5台は、私の心を捉えただけではなく、生き残りをかける日本のメーカーのクルマづくりにも参考になるものと確信する。
●ベンツA250 4MATIC セダン
4550×1800×1430mm
1991cc直列4気筒ターボ
車両本体価格:485万円
FF化されたベンツのAクラスセダンに追加された4輪駆動のモデルだが、「スポーツセダン」を考えるとき、コンパクトなサイズは非常に重要で、224馬力と圧倒的なパワーではないが、走り始めた瞬間から胸のすく走りをしてくれるとともに、ステアリング・ハンドリングも実にリニアーで気持ち良く、乗り心地が大変しなやかなことにも驚かされた。
居住性はフロント、リヤとも不足なく、リヤシートは分割可倒が可能で、420Lのラッゲージスペースも備えている。しかも、車両本体価格が500万円以下というのもうれしい。
セダン市場に風穴を開ける1台になっても不思議はなく、このモデルも含めてAクラスセダンの今後の販売動向に着目していきたい。日本メーカーでも、このような車種を真剣に検討するメーカーが出てきてほしいと思うのは私だけではないだろう。
●ポルシェMacan S
4695×1925×1625mm
2995cc直列6気筒ターボ
車両本体価格:約875万円
次に私の心を強く捉えたのが、ポルシェMacan Sだった。V6 3Lターボの出力は354psとなかなかのもので、走り始めた瞬間からその動力性能に魅了されるとともに、直進時のステアリングのセンターフィールと、そこから舵角を与えた場合のリニアーなレスポンスが非常に気持ち良く、タイトなワインディングロードの走りも存分に満喫することができた。
オプションで装着されていた車高調整式のエアーサスペンションも大きく貢献しているのだろう、20インチタイヤにもかかわらず、乗り心地、ロードノイズなども非常に良好に仕上がっていることにも感銘した。車両本体価格はベースモデルが712万円、Macan Sが875万円と、ポルシェとしては決して高いとは言えないところも大きな魅力だ。Macanは今や、ポルシェの全販売台数の4割に達しているという情報もある。
●BMW 118i Play
4335×1800×1465mm
1498cc直列3気筒ターボ
車両本体価格:375万円
BMW 118i Playも、乗ることの大変楽しいFFに仕上がっていた。FRの旧型に比べて、ホイールベースは-20mm、全幅は+35mm、全長は-5mmと変化代は小さいが、後席足元のスペースが40mm拡大、ラッゲージルームも380Lとなり(後席を倒すと1200L)、日本市場にマッチしたコンパクトプレミアムだ。
「タイヤスリップコントール」が貢献してか、アンダーステアを感じず、非常にニュートラルなハンドリングに仕上がっており、乗り心地、ロードノイズを含む振動騒音も良好だ。1.5L 3気筒ターボの走りも不足なく、気持ちの良いクルマに仕上がっており、価格もなかなか魅力的だ。
ただし、外観スタイルは大型化&一体化されたキドニーフロントグリル、テールランプデザインなどは悪くないが、先代のFRモデルからの進化が少なすぎると感じるのは私だけだろうか?
●プジョー508SW GT Blue HDi
4790×1860×1420mm
1997cc直列4気筒ターボディーゼル
車両本体価格:526万円
プジョー508SW GT Blue HDiも、私の心を捉えた1台だ。「ステーションワゴンの概念を変えるゲームチェンジャー」を目指したというが、外観スタイルがユニーク、スタイリッシュ、魅力的で、シャープで独創的な内装デザインも悪くない。小径で細めのステアリングホイールの握り感も非常によい。
加えて、前後の居住性、先代に比べて182L増えて530Lとなったラッゲージスペース(後席格納時は1780L)にも二重丸を与えたい。2Lのターボディーゼルは全域で非常に静かで走りも良好な上に、ハンドリングのリニアリティー(追従性)も良好で凹凸路の突き上げも非常に少なく、プジョーの真髄ともいえるしなやかで上質な乗り心地を実現しているのも、このクルマの大きな魅力だ。
●VW T-Cross TSI 1st Plus
4115×1760×1580mm
999cc直列3気筒インタークーラー付きターボ
車両本体価格:336万円
今回の私の心を捉えた最後の1台は、VW T-Crossだ。VWらしい直線的なデザインも含めて全体としてコンパクトなサイズの魅力的なSUVに仕上がっている。ポロに比べて着座位置が100mm高く、140mmのスライドが可能な後席の居住性と、455Lというトランクスペースもなかなかのものだ。
国内向けには、1580mmという全高は大半の立体駐車場の利用が可能となる1550mmまで下げたほうが良かったのではないだろうか? 3気筒1Lエンジンの出力は116psだが、走らせても不足がなく、振動もまったく気にならなかった。ただし、コンセプト、サイズ、デザインが近似しているダイハツ工業/トヨタ自動車の「ロッキー/ライズ」の価格(170~220万円<FF>)に比べて割高なのが気になるが、VWにとって貴重な車種になることは間違いなさそうだ。
(文=小早川隆治/モータージャーナリスト)
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