公的支援を受けたJALとの業績格差は歴然としている。ANAの12年9月中間連結決算は、売り上げが前年同期比6.9%増の7532億円、営業利益は同50.2%増の753億円で、過去最高となった。
一方、9月に再上場を果したJALは、売上高が前年同期比5.7%増の6342億円、営業利益は同5.7%増の1121億円。対売上高営業利益率は17.7%と高い水準を維持している。
JALは5250億円の債務免除を受けたこともあり、すでに実質無借金に近い。加えて今後7年間にわたって法人税が免除される。片やANAは1兆円近い有利子負債を抱えたままだ。身軽になったJALの収益性が高いのは当然である。
投資家は数字で判断する。11月13日時点の株式の時価総額はANAが5907億円なのに対して、JALは6873億円。JALの後塵を拝している現状に、ANAは我慢がならない。
ANAとJALの決戦の場は羽田空港の発着枠の配分に移った。来年3月、羽田の4本目の滑走路で国内線の発着枠が1日当り25枠増やされる。年間2万回(1日25往復)拡大され、34万回(1日465往復)となる。JALとの業績格差を縮めるためにもANAは優先的な配分を求めたい、としている。
発着枠の配分基準を検討している国土交通省の有識者会議の8月の会合でANAが「破綻事業者(JAL)は、発着枠の配分を受ける資格はない」と先制パンチを繰り出した。ANAの清水信三・上席執行役員が、こう発言すると、会場の空気は凍りついたという。
配分作業で重視されているのは、「地方に対する貢献度」だ。国交省はこれまで、ANA、JALの大手2社に対する配分を抑え、スカイマークやスカイネットアジア航空、エア・ドウ、スターフライヤーの新規参入組4社に優先的に割り当ててきた。だが、新規参入組は配分された枠を、需要の大きい路線に集中させていることから、大手の不満は強い。
ANAは旅客数が年間40万人未満の路線の便数のシェアが65%と、ほかの5社を大きく上回ると主張。これに対して、JALは離島路線を31路線持ち、6路線しか補助を受けていないと強調する。
一方で、このガチンコ対決に弾き飛ばされた格好なのが新規参入組だ。10月29日に開かれた有識者会議では、新規航空会社への優先枠の縮小と、経営破綻を理由にJALを配分から排除しないことを決められた。新規参入組に泣いてもらいANAとJALの双方の顔を立てる格好になった。国交省は年内に配分の基準を決定し来年3月から、実際に割り当てる。