とりわけゆうちょ銀行は、以前から「郵貯が民間金融を圧迫している」と言われ続けてきた。1人1000万円という上限枠はあるが、郵便貯金、特に定額貯金は郵便局の窓口で個人預金をどんどん吸い上げ、預金集めに四苦八苦する他の金融機関から目の敵にされてきた。そんな過去の経緯がある上に、ゆうちょ銀行は全国に約2万4000カ所の郵便局網、民間最大の三菱UFJフィナンシャル・グループの預金残高約153.3兆円をしのぐ郵便貯金残高約177.7兆円を有し、運用資産は205.8兆円とメガバンクの総資産とほぼ肩を並べるという規模を誇る。その「巨人」がまもなく上場するというのだから、他の金融機関にとっては気になる存在だろう。
今年4月1日に発表された日本郵政グループの中期経営計画「新郵政ネットワーク創造プラン2017」によれば、ゆうちょ銀行は向こう3年間に総預かり資産を貯金で3兆円、資産運用商品で1兆円増やすという目標を掲げている。上場後、さらなる拡大路線に打って出ることは確実だ。現状では、ゆうちょ銀行が自前で行う個人、法人向け貸付は、預金担保貸付を除いては認められていないが、すでに12年9月にそれらの新規業務を金融庁に申請済みで、認可を待っている状況である。
だが、ゆうちょ銀行が他の金融機関にとって「最強の敵」になるかというと、現状ではどうしても疑問符がつく。個別分野によって多少違いはあるものの、総じていえば「幽霊の、正体見たり枯れ尾花」で、怖がって騒ぐほどの脅威ではないという見方も強い。なぜならゆうちょ銀行には法律、金融行政、人材、以前からのイメージなどさまざまな面で「縛り」があり、『進撃の巨人』ならぬ「進撃できない巨人」になっているからである。
他の金融機関の“懸念”
「脅威」とみられている一つは、ゆうちょ銀行が「3年間で1兆円拡大」を目指している資産運用商品の販売だろう。すでに郵便局の窓口では05年から投資信託の販売を行っており、手数料収入を得ている。