6月11日には、三井住友信託銀行、野村ホールディングスと、個人向け資産を運用する共同出資子会社を設立する方向で大筋合意したと報じられた。運用と開発のノウハウを持つ2社と提携して低リスクの金融商品を共同開発し、郵便局の窓口で販売するという。実現すれば日本郵政グループと民間の金融機関、証券会社との共同出資会社は初のケースになる。その金融商品が投資信託であれば、ゆうちょ銀行は販売手数料だけでなく、信託報酬のような運用会社が得る収入も子会社を通じて得ることになる。
投資信託など金融商品や保険商品を窓口で販売し、販売手数料を得るという業務は、ゆうちょ銀行だけでなく金融機関全体にとって今、「おいしい収益源」になっている。メガバンクも地銀も、15年3月期決算の決算内容はまるで判で押したように「低金利が続く中、貸出金利の競争激化で本業のもうけが減った分を、それ以外の収益で補った」という趣旨の説明で横並び。その「それ以外の収益」で販売手数料収入は重要な部分を占める。もしそれがなかったら、海外業務を行っていない地銀などは業績がボロボロの銀行が続出していただろう。
その最もおいしく、頼りになる収入源を、「3年で1兆円上乗せが目標」のゆうちょ銀行に食い荒らされてはたまらないというのが、他の金融機関に共通する懸念だとされている。金融庁の認可待ちの個人や企業向け貸付業務(新規事業)と違って、この業務はすでに競争状態。約2万4000の郵便局窓口という販売チャネルの「数の力」が脅威ととらえられ、「他の金融機関との間で手数料収入の奪い合いが起きる」「地銀あたりは割を食うだろう」と予想されている。
窓口で「手数料収入の奪い合い」は起きるか
だが、窓口で販売される金融商品を細かく見ていくと、以前ほどではないが、銀行と郵便局では商品ラインナップに違いがある。一言でいえば、銀行は「低リスクから中位リスク商品まで揃う」、郵便局は「比較的低リスクな商品の品揃えに力を入れる」という傾向がある。三井住友信託、野村との共同開発商品も低リスク商品と報じられている。
「郵便局は低リスク、小口に強い」は、歴史の長い新発国債の販売でもみられた傾向だった。郵便局では郵貯の1000万円の上限枠や、かつての「マル優」枠を超えた人に、「満期まで持てば政府が元本保証」というニュアンスや「マル優別枠」を示して国債購入を勧めてきた経緯がある。「低リスク・小口」の投資信託の販売に強いのはその流れで、それに合わせて設計され郵便局だけで買付できる「郵便局専用投信」というものもある。一方、銀行も毎月少額の「投信積立」をPRしているものの、やはり利用者側の意識としてはボーナスや退職金など「まとまったお金」の預入・運用先の選択肢として投資信託がある。
ゆうちょ銀行も取り扱い商品ラインナップを順次拡充しており、郵便局の窓口職員にフィナンシャル・プランナー(FP)の資格取得を奨励するなどして、銀行と同じくオールラウンドな金融商品の販売窓口を目指しているが、利用者側にある棲み分けの意識はなかなかぬぐえないだろう。