フジHDは業績不振から抜け出せずにいる。2015年3月期の売上高は前期比0.2%増の6433億円と横ばい。本業の儲けを示す営業利益は18.7%減の256億円と2期連続の減益だ。主力の放送事業は視聴率が低迷したため、営業利益は26.6%減の133億円と大幅な減益となった。
気を吐いたのは都市開発事業で、売上高は31.6%増の571億円、営業利益は37.2%増の73億円を上げた。同事業の増収が寄与し、フジHDの売り上げは横ばいを保ったが、営業減益は放送事業、映像音楽事業、生活情報事業の不振がストレートに響いた。
特に本業である放送事業の不振は影響が大きい。フジHD傘下のフジテレビは視聴率が低迷し、在京民放キー局5社の中で1社だけ、地上波テレビ広告収入の減少が続いている。
経営体制への批判
今年の総会では業績だけでなく、トップ人事も大きな注目を浴びた。太田英昭社長が退任して関連会社の産経新聞社会長に就き、嘉納修治副社長が社長に昇格。経営責任を取っての退任であれば潔いものだが、日枝久会長は続投する。
そのため、「太田社長1人に責任を負わせた日枝会長の傲慢人事」(新聞記者)との見方も強いが、この点について株主から質問されると会社側は「フジテレビと産経新聞社の連携強化のため」と答えた。しかし、太田氏はフジHDの取締役からも離れるため、果たして連携強化といえるのか。フジHD経営陣のほとんどは子会社や関連会社の役職を兼務しており、産経新聞社に関していえば日枝氏は取締役相談役を、嘉納氏は監査役を務めている。
議案は、取締役16名選任などを含む第1号議案から第5号議案が会社提案、第6号議案から第14号議案が株主提案。株主提案には昨年の「75歳役員定年制」に代わって、取締役の在任期間制限が盛り込まれた。提案株主はこう話す。
「役員の在任期間の長期化と高齢化による弊害が指摘されています。日枝氏は、1983年に取締役に就任して以来その座に32年間も就いており、代表取締役には88年の社長就任以来27年間も在職しています。時代の変化に即応できる経営体制を構築すべきです」
株主が“やらせ”の可能性を指摘
そして、今年は総会の議事運営にも大きな注目が集まった。ある株主が、総会内で次のように発言したのだ。
「昨年の質疑では、質問に立った16人のうち9人が社員株主などの“やらせ”だったという総務局作成のメモがある」