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没落シャープ、驕りを物語る「土下座事件」 悪評高き傲慢さの代償、危機を笑う人々

文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト
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没落シャープ、驕りを物語る「土下座事件」 悪評高き傲慢さの代償、危機を笑う人々の画像1シャープのロゴ
 池に落ちた犬は叩け――『大辞林 第三版」』(三省堂)には「池に落ちて弱っている犬に、追い打ちをかけて叩くように、最後まで手加減せずに徹底して攻撃することのたとえ」と記されている。現在、弱っているところを徹底して攻撃されている企業といえば、シャープだろう。身から出たサビとはいえ、メディアには経営の迷走ぶりを糾弾され、甘い顔をしてきた銀行団も厳しい姿勢を崩さない。とはいえ、「犬」にも池に落ちてしまったそれなりの理由があるようだ。

驕り

 シャープが6月23日に開催した株主総会は、開催時間が3時間23分にも及び、過去最長となった昨年を1時間も上回った。株主からは業績低迷や経営陣の手腕を批判する声が相次いだ。会場外で取材に応じた株主のひとりは「結局、何も変わっていませんよ。驕りがいまだにあるのでは」とため息を漏らす。
 
 シャープを語る上で避けて通れないのが技術力。近年では「世界の亀山モデル」で家電業界を席巻し、経営危機が訪れても半導体技術「IGZO」への自信は揺らがなかった。電機業界担当アナリストは「技術力に対する絶対的な自信が奢りを生み、経営の目を曇らせたのに自覚がない」と指摘する。

 シャープの驕りを物語るエピソードがある。「リーマンショック前のシャープの姿勢はあまりにもひどすぎた。正直、今回の危機で感情的にすっきりした銀行員も多いと思いますよ」。政府系金融機関でかつて電機業界を担当した職員は、こう漏らす。

 今でも在阪の金融機関担当者なら一度は耳にしたことがあるのが、「シャープ土下座事件」だ。2009年、リーマンショックの傷痕も癒えぬ中、世界的な業績後退からシャープはいち早く回復。この年の秋に約4300億円を投じて、世界最大級の液晶パネル工場を建設した。取引先が軒並み業績悪化で融資先が見つからない銀行にとって、シャープは数少ない貸出先であり上客だった。

 大手銀行の行員は「当行は結果的に取引できなかったが、当時はなんとかシャープに食い込もうと必死だった。ただ、役員クラスが挨拶に行っても、現場担当レベルに対応され、話もまともに聞いてもらえず、けんもほろろに断られました」と振り返る。

 その驕りが前面にあらわれたのが土下座事件だ。「シャープの担当課長が取引先銀行の副頭取を呼びつけて土下座させた」――。もちろん真偽は不明だし、こうした話は尾ひれがつく。事実か否かは今となっては確かめようもないが、「シャープならあり得る」と人々が思い、話が広まったことが、同社の体質を表しているだろう。

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