7月2日、三越伊勢丹ホールディングス(HD)の株価は上場来高値の2354円をつけた。松屋も約7年ぶりに一時2518円に上伸した。年初来の高値である。買いのきっかけは前日明らかになった6月の主要百貨店売り上げ(速報)だ。
三越伊勢丹HDは名古屋三越などを含むグループ全体で前年同月比6.4%増。中でもインバウンド(訪日外国人旅行者)需要に支えられた銀座三越は32.8%の大幅増収で、伊勢丹新宿本店も13.8%と伸びた。免税売り上げはグループ全体で3.6倍になった。松屋銀座も29.8%の増収で、特に欧米の高給ブランド品、化粧品、時計を中心に大きく伸びた。
銀座三越と松屋銀座の圧勝
インバウンド商戦は、銀座三越と松屋銀座の圧勝が鮮明になった。都心の主要百貨店の4月と5月の売上高は、前年が消費増税前の駆け込み需要の反動による売り上げ減だったことから、昨年実績を大きく上回った。6月はインバウンド需要の濃淡がはっきり出た。
西武池袋本店、日本橋タカシマヤ、大丸東京店の6月の売り上げが微増にとどまったのに対して、銀座三越と松屋銀座は引き続き驚異的な伸びを示した。
【都心の主要百貨店の月別売上高前年比(単位%)】
※以下、店舗名:15年4月、15年5月、15年6月
銀座三越:42.7、33.2、32.8
松屋銀座:44.7、30.4、29.8
伊勢丹新宿本店:17.9、15.7、13.8
三越日本橋本店:15.5、7.7、7.5
新宿タカシマヤ:24.4、14.9、6.7
西武池袋本店:14.1、6.5、1.9
日本橋タカシマヤ:16.0、16.3、0.2
大丸東京店:13.8、8.1、0.2
三越伊勢丹HDの15年3月期連結決算の売上高は、消費増税を前にした駆け込み需要の反動で前期比3.7%減の1兆2721億円だったが、インバウンド需要は絶好調だ。14年10月にインバウンド向けの免税対象が化粧品や食料品などにも広がり、三越伊勢丹HDの免税売上高はグループ全体で335億円と前期に比べて倍増した。銀座三越では免税売り上げが全体の売り上げの13%を占めた。さらに今秋には8階を丸ごと改装して、市中免税店を開業する。
百貨店や家電量販店などの免税店は消費税を免税するのみだが、銀座三越が開業するのは、空港の免税店と同じ。消費税だけでなく関税、たばこ税、酒税などを免税する保税免税店だ。沖縄を除いて保税免税店が空港外にできるのは国内初のケースとなる。インバウンドは銀座三越の店内で商品を選び、出国時に空港で受け取ることになる。インバウンド商戦の極めつきが市中免税店なのである。