パナソニックは大赤字に陥った13年3月期に、松下氏や中村邦夫相談役ら元取締役4人に役員退職慰労金計18億5500万円を支払った。このうち松下氏の分は約15億円とみられている。06年に退職慰労金制度を廃止したが、4氏は廃止前に取締役になっていたため、06年以前の期間が支給対象になった。
しかし、松下氏はすでに取締役を退いており開示義務がなかったため、13年3月期の役員報酬は開示されなかった。同期に1億円以上の役員報酬を受け取ったパナソニックの取締役はゼロだった。
ほとんどの大企業が役員退職慰労金を廃止し、成果主義的報酬制度に一本化している。慰労金相当額を毎期の役員報酬に織り込んでいる。
三菱電機
委員会設置会社は執行役の役員報酬開示が義務付けられている。他方、従来の取締役・監査役制を採用する企業は両者の役員報酬を開示しなければならないが、執行役員の役員報酬を開示する必要はない。
15年3月期に1億円以上の役員報酬を個別開示した企業の中で、人数が最も多かったのは三菱電機の23人。14年3月期の18人を大きく上回った。執行役23人全員が1億円プレーヤーとなった。三菱電機は委員会設置会社のため、執行役の報酬を開示し、柵山正樹社長執行役の役員報酬額は2億6000万円だった。
では、国内最高利益を上げたトヨタ自動車はどうか。委員会設置会社でないため個別報酬の開示は取締役だけである。1億円以上の報酬を得た役員は8人。豊田章男社長は3億5200万円だ。しかし、執行役員がどのくらい役員報酬を得たかは不明だが、業績連動報酬のため1億円以上を得た者が多くいるとみられている。
ソフトバンク
ソフトバンク副社長のニケシュ・アローラ氏に165億円の報酬が支払われていたことが明らかになり話題を呼んだが、アローラ氏は東京商工リサーチの役員報酬ランキングに登場しない。孫正義社長が「後継者候補の筆頭」としてスカウトしてきた人物で、6月19日の株主総会で副社長に選任された。アローラ氏はソフトバンク子会社の米国法人CEO(最高経営責任者)だが、ソフトバンク本体ではバイスチェアマンという役職で取締役ではないため。
ソフトバンクが連結報酬1億円以上と開示した取締役は3人。孫正義社長が1億3100万円、宮内謙取締役が1億5800万円、ロナルド・フィッシャー取締役が17億9100万円だ。では、アローラ氏への報酬額はどこに書かれているかというと、有価証券報告書末尾の「欄外注記」の項目「主要な経営幹部に対する報酬」である。「2015年3月31日に終了した1年間には、ニケシュ・アローラへの報酬、16,556百万円(短期報酬14,561百万円、株式報酬1,995百万円)が含まれています」と書かれている。この「短期報酬145億円」が移籍金の意味合いを含んでいるとされる。
(文=編集部)