新たな取り組みに積極的なセブン-イレブン
こうしたセオリーに従えば、コンビニのリーダー企業であるセブンもローソンやファミリーマートの後を追うことになるはずですが、今回のドーナツに限らず、新たな取り組みへの積極的な挑戦、そして成功が目立っています。
例えば、プライベートブランド(PB)にもかかわらず、高価格で高機能を訴求する「セブンゴールド」では「金の食パン」が大ヒットしています。
金の食パンは、2013年の発売当時、1斤6枚入りで250円、ハーフ厚切り2枚入りで125円と、ほかのPB商品と比較して実に約2倍、一般のナショナルブランド(NB)商品よりも高価格でしたが、発売から5カ月足らずで累計販売数量が1500万食に達するという大フィーバーを巻き起こしました。
この開発に際して、セブンは製パンメーカーはもちろん、製粉メーカーも交えて長期にわたる調査・検討を行っています。
鈴木敏文会長の存在感
セブンがこうした取り組みを他社に先駆けて実行している要因のひとつとして、筆者は鈴木会長の存在に注目しています。鈴木会長のコメントやエピソードは実に理にかなっていることが多く、リーダーにおける覚悟の重要性などは大変勉強になります。
詳しくは『セブンプレミアム進化論 なぜ安売りしなくても売れるのか』(朝日新聞出版/緒方知行、田口香世)などに詳しいですが、例えば、高付加価値PBであるセブンゴールドに関して、鈴木会長は以下のような考えで着手したようです。
「どこも価値訴求に重きを置いたPBを出していないときに、あえて我々はこれをやろうと考え、取り組んできました。また歴史的に見ても、PBは安く売るためということで出てきたのは事実だとしても、その時とは時代がもう違っていると考えたわけです」
「私は持論として、『量を追いかけても、なんの意味もない』『量は決して質を凌駕できない』『逆に質の追求の結果として、量はついてくるので、質を追求する』ということを厳しく言い続けてきました」
実際のメーカーとの交渉においては、「全部引き受けるから最高の品質のものを作ってください。価格は気にしなくていい」と切り出し、相手は「どこにいっても、価格のことばかり言われるのに」と驚いたというエピソードが残っています。