日立、東芝…最後の砦・白物家電を浸食する中韓勢との最終戦争
(「Wikipedia」より)
白物家電・ニッポンは「最後の牙城」を死守できるのだろうか?
●初の「IFA2012」白物出展で気勢~パナソニック
8月末からドイツで開かれた世界最大級の家電見本市「IFA2012」。パナソニックが白物家電を初めてIFAに出展した。「もはやテレビは本業ではない」と明言する同社だが、改めてグローバルでの白物家電販売強化を鮮明にした。
パナソニックだけでなく、東芝や、デジタル機器事業を縮小した日立製作所も白物の海外拡販には意欲的だ。各社の幹部は「白物は絶対に負けない」と声をそろえる。
●生活密着型で標準化が困難な家電製品
背景には、中核部品の標準化が難しいことやニーズが地域ごとに異なることがある。
かつてのお家芸だったテレビの敗戦は、中核部品の急速な標準化が大きい。「亀山モデル」で知られるシャープのようにテレビ各社はパネルで差別化を図ってきたが、コモディティ化が想定以上のスピードで進んだことで、サムスン電子など韓国勢に規模の勝負で敗戦した。
日本勢ではパネルの自社生産を早い段階であきらめた東芝のテレビ事業が、自前主義にこだわったシャープやパナソニックと比べ、業績へのダメージが軽度であったことからもそれは明らかだろう。
一方、白物家電の中核はコンプレッサーやモーターなど機構部品。日本メーカーが従来から強みを持つ領域である上に、機器別に細かな制御が必要なだけに標準化が難しいとされる。
また、生活に密着した製品であるため、地域によって製品ニーズがテレビなどデジタル家電以上に異なる点も日本勢にとっては戦える余地があるという。電機業界担当のアナリストは「例えば、インドと中国では生活様式は異なるため、同じ仕様の洗濯機を売っても売れない。そこがデジタル家電とは大きく違う。市場ニーズのくみ取りが難しいということは、同一製品の大量生産が難しく、規模の勝負は難しくなる。台湾の鴻海精密工業のような巨大な受託製造業が、白物家電では現れにくいのもそのため」と語る。
●日本市場に切り込んできた、中国ハイアールと韓国LGエレ
ただ、日本メーカーはこうした製品特性があるためか、国内の安定需要に支えられた安心感からか、世界進出に出遅れた。その間に、世界では中国のハイアールが低価格モデルでボリュームゾーンを席巻。日本企業は中下位市場では勝負せずに高付加価値ゾーンで勝負する企業が大半だが、低価格モデルを押さえていないことが新興国の所得の増加に伴い、裏目に出る可能性は大きいとの指摘は多い。
安泰であったはずの国内市場にもハイアールや韓国LGエレクトロニクスが開発拠点を相次ぎ設置し始めている。「日本仕様」の開発に意欲的で市場開拓に本腰を入れだした。高付加価値品でも英ダイソンや欧州最大規模の家電ブランド・エレクトロラックス(スウェーデン)などが店頭では目立つようになった。ダイソンなどは日本のニーズを組み込んだ製品展開に乗り出し、着々と顧客を増やしている。
内憂外患の中、さて日本メーカーはどう動くのか?
スマートフォンとの連携などを打ち出したメーカーも登場したが、果たしてそれが顧客ニーズを組み込んだものといえるのか。
テレビで敗戦した今、負けられない家電最終戦争が始まる。
(文=江田晃一/経済ジャーナリスト)