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野村不動産、“業界初”の合併は大博打?閉塞感漂う業界の再編促進か自滅か

文=福井晋/フリーライター
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 実際、野村不動産オフィスファンドはオフィスビルに特化した投資が災いし、含み損が膨らんでいる。一方、複合型の野村不動産マスターファンドは、通信販売市場成長の影響を受けた物流施設の需要拡大を背景に、近年の業績は好調に推移している。このため、野村不動産関係者は「業績がバラバラの3社を合併させることで、ミドルリスク・ミドルリターンの安定した事業に変えるのが狙い」と語る。

 また「事業規模を拡大することで、これまでは資金的に困難だった大型物件への投資を進めて収益性を高める一方、3社が個々では手掛けられなかったリゾートホテル、工場などの分野に投資対象を拡大できるメリットもある」(J-REIT関係者)という事情もあるようだ。

 野村不動産も、3社合併の説明会で「オフィスビルのPMO、賃貸マンションのPROUD FLAT、商業施設のGEMS、物流施設のLandportなど、当グループが開発する賃貸物件を新投資法人が取得することにより、物件供給見込み案件が飛躍的に拡大する。第1弾として、3社合併完了後は、野村不動産吉祥寺ビル(東京都武蔵野市)、GEMS市ヶ谷(東京都千代田区)など7物件(売却合計価格231億円)を新投資法人に組み入れる。今後3年をめどに、総資産1兆円規模を目指す」と説明している。

 これについて、「グループ各社が開発した賃貸物件が売れ残った場合は新投資法人に買い取らせればいいわけで、開発物件売却の自由度が高まる。野村不動産の真の狙いは、そこにある」(不動産投資調査関係者)との指摘もある。

税制改正で消えた合併の障害

 話が前後するが、3社合併の報に業界関係者が衝撃を受けたのは、合併自体がJ-REIT市場では画期的な「正ののれんが生じる初の合併」だからだ。「のれん」とは、買収された企業の純資産額と買収価格の差のことである。

 J-REIT投資法人は利益の90%以上を配当金に充当することで、法人税免税措置を受けている。昨年度まで、この措置がJ-REIT投資法人合併の障害となっていた。

 なぜなら、「正ののれん」は日本の会計基準では無形固定資産として資産勘定に計上され、その償却を最長20年で行わなければならない。つまり「正ののれん」を計上すると「のれん償却費」という費用が増加するわけだ。その一方、のれん償却費は14年度まで税務上の費用に認められていなかった。そこで「正ののれん」を計上すると、税務上と会計上の利益が異なる「税会不一致」が生じていた。

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