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一般事業会社の場合、税会不一致は法人税等調整額で処理できるが、利益の90%以上を配当に充てることで法人税免税措置を受けているJ-REIT投資法人の場合はそれができない。こうした背景が、J-REIT投資法人の合併を阻害していた。
J-REIT市場では10~11年にかけて約10件の合併が行われたが、これらはすべて08年のリーマン・ショックの影響で経営が破綻した投資法人の救済合併だった。そのため、救済する側には「負ののれん」しか生じなかった。
それが、15年度の税制改正で、J-REIT投資法人はのれん償却費を営業費用として計上できるようになり、「正ののれん」が生じる合併でも、利益の90%以上を配当すれば、引き続き法人税免税措置が受けられるようになった。
野村不動産は「この税制改正をいち早く利用し、J-REIT業界再編の先制攻撃を仕掛けてきた。それに、業界がショックを受けた」(同)というわけだ。
総合型への転換に潜むリスク
では今後、「野村不動産に続け」とばかりに業界再編の気運は盛り上がるのだろうか。
J-REIT関係者の1人は、「いかに投資利回りを良くするかがJ-REITの商売で、特化型や総合型などの投資タイプに損得の違いはない。野村不動産が特化型から総合型に投資戦略を転換したからといって、同社がもくろんでいるような収益安定性と成長性の両立をすぐに図れる保証にはならない」と、お手並み拝見の構えだ。
一方、証券アナリストの1人は「何でもありの総合型に固まって『損益差し引きゼロ』の安定性より、多彩な特化型の中から自分の投資戦略に適したJ-REIT銘柄を選ぶほうが、投資家にとっては妙味がある。野村不動産の新投資法人が物件投資に失敗すると、投資家が一気に離れるリスクもある」と指摘する。
今回の3社合併は、「閉塞感すら漂う」といわれる現在のJ-REIT業界に活を入れることになるのか、それとも逆に閉塞感を強める結果になるのか。今後の成り行きが注目される。
(文=福井晋/フリーライター)
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