ファーツリーの提案には、米国の資産運用会社でJR九州株式の1%を保有するモアブ・キャピタル・パートナーズが支持を表明した。また、米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホールダー・サービシーズ(ISS)は、自社株買いや社外取締役2人(3人のうちの2人)の選任などに賛成を推奨。自社株買いは「資本効率の向上につながる」とした。グラスルイスは3人の社外取締役の選任に賛成を推奨した。議決権行使助言会社は、外国人投資家に影響力を持つ。ISSが推奨した2人は40%台の支持率があったが、推奨しなかった1人への賛成率は24.77%にとどまった。
JR九州の海外投資家の保有比率は18年3月期末の38.01%から19年3月期末には44.71%と6.7ポイント増加した。
JR九州はファーツリーが株主名簿に記載のない「実質株主」なので発言を認めないとしたため、ファーツリーは株主総会を欠席した。
JR九州の有価証券報告書には、関東財務局に「変更報告書」を提出した海外の機関投資家が記載されているが、議決権行使の基準日までに所有株式数が確認できなかった。ファーツリー以外にも「実質株主」の海外投資家が多数存在する。こうした「実質株主」を加えると、外国人の株式保有比率は5割を超える。
悲願としてきた上場を果たしてから2年半。JR九州は実質的な官営企業から完全な民営企業に転換したが、さっそく「モノ言う株主」(アクティビスト)の洗礼を浴びた。
彼等が目をつけるのは内部留保だ。会社側に自社株買いを求め、それが実現すれば、手っ取り早く利益を確保できる。
今回の総会では、投資ファンドの株主提案に、会社側が想定した以上の賛成票が集まった。短期的な利益を求める「モノ言う株主」との対峙は今後も続き、一層、激化するだろう。「鉄道会社の公益性、公共性」(JR九州の会社側の主張)よりも、どれだけ稼いで、それをいかに素早く株主に還元するかを迫られる。
関西電力が6月21日に開いた定時株主総会では、原子力発電に反対する団体の株主から脱原発につなげる計21の株主提案があった。このうち、取締役報酬の個別開示を求めた提案の賛成率は43.1%に達した。
三菱UFJ信託銀行のまとめによると、株主提案があった3月期決算企業は54社。前年より12社増え、1981年に法改正で株主提案の権利が付与された以降で最多となった。株主が出した議案数は175件に上る。
持ち合い株式の解消により、金融機関、取引先などの安定株主が減少しており、相対的に個人株主や海外の株主の声が強まっている。来年以降、株主提案はもっと増えるだろう。
(文=編集部)