キャンペーン開始当初から8月9日までの期間限定であることは周知されており、有料プランへ移行を望まない場合は放置、もしくはやめればいいだけだ。しかし、この理不尽ともいえる若者たちの反応は、背景に何があるのだろうか。
これらの反応を見ると、若者の間に「音楽は無料で聴けて当たり前」という感覚が醸成されつつあるのではないかと感じる。企業側が、販売促進のために一定期間無料サービスをしているのに、サービス期間が終了すると文句を言われてしまうという状況には同情すらしてしまうが、「お金を払うだけの価値がない」と思われてしまったことの表れでもある。
無料で音楽が聴けることのワナ
LINE MUSICの無料キャンペーンは、8月9日までの期間限定だったために利用者が一斉にサービスを打ち切られた格好になり、不満が相乗効果で高まっている。その点、AWA MusicやApple Musicはユーザーごとに登録から90日間お試しできるので、不満が爆発するようなことにはならないだろう。
注意しなければならないのは、Apple Musicは90日を経過すると自動的に有料プランに移行されてしまうことだ。有料プランへの移行を望まない場合、お試し期間が終わったらすぐに解約しなければならない。
LINE MUSICに関して若者から批判的な意見が出ている状況は、LINEの主要なユーザー層が10~20代であることを考えると、好ましくないのではないか。加えて、LINE MUSICは取り扱っていない人気アーティストが多く、有料プランへの移行を促すにはマイナスイメージがある。例えば、宇多田ヒカルやB’z、スピッツ、Mr.Children、サザンオールスターズ、DREAMS COME TRUE、BUMP OF CHICKENなど、広い世代から支持されているアーティストの曲が聴けないのだ。
今のままでは、LINE MUSICの成功は極めて可能性が低いといわざるを得ない。まだサービスは始まったばかりだが、まずは国内のレコードレーベルをすべて網羅し、その上で魅力ある特性を打ち出すことが不可欠だ。そうでなければ、「お金を出す価値のあるサービス」とは見なしてもらえないだろう。
ちなみに最近、無料で音楽を視聴できるMusicBoxや中国の無料音楽サイトXiami(シャミ)が話題になりつつあるが、この2つの利用には注意が必要だ。MusicBoxについては、アプリ自体は合法だが、そこで聴ける音楽をダウンロードすれば違法となる可能性が高い。また、シャミに関しては日本のレコード会社からはまったく許諾を受けずに配信しており、完全に違法だ。
2010年に著作物の不正ダウンロードを規制する法律が施行された。YouTubeなどの動画共有サイトに不正アップロードされた音楽や動画の視聴は合法だが、ダウンロードすれば違法となる。2年以下の懲役または200万円以下の罰金(またはその両方)の罰則が定められているので、もしダウンロードしたいコンテンツがある場合、不正アップロードされたものでないか確認するように心がけたい。
ネットで気軽に無料で音楽や動画を視聴できる時代にはなったが、それを利用する側にも高いリテラシーが必要とされている。
(文=編集部)