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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

ガソリンスタンド半減でジリ貧の石油元売り業界 過当競争&業界地盤沈下に「激震」

文=鷲尾香一/ジャーナリスト
ガソリンスタンド半減でジリ貧の石油元売り業界 過当競争&業界地盤沈下に「激震」の画像1エネオスのガソリンスタンド(「Wikipedia」より/KDashy)

 7月30日、出光興産昭和シェル石油が経営統合に向けた協議を本格化させると発表した。国内のガソリン需要は2004年にピークアウトしており、国内石油精製市場は過当競争に陥っている。両社の経営統合が実現すれば、過当競争が緩和され、業界全体の収益改善も期待できる。

 7月19日付本連載記事『ガソリンスタンド激減!地方の生活基盤が崩壊危機?』でも触れたとおり、ガソリン需要減少を一因として揮発油販売業者の間では過当競争が起こっており、その結果、全国のガソリンスタンドは減少の一途をたどっている。資源エネルギー庁によると、2015年3月末の全国の揮発油販売業者数は1万6429。14年3月末に比べて774業者も減少。ピーク時の1990年3月末の3万2835業者と比べると、1万6406業者も減少した。つまり半減している。

 では、ガソリンスタンドはどうか。15年3月末時点で全国3万3510店となっており、14年3月末と比べて1196店減少している。ピークだった95年3月末の6万421店と比較すると2万6911店の減少となり、こちらもほぼ半減したことになる。

 ガソリンなどは石油元売り会社が石油精製を行い、系列のガソリンスタンドなどで販売を行う。しかし、石油製品の需要は、14年を基準とした場合に30年には25%も減少すると予測されている。こうした状況のなか、5つの企業グループが競争を繰り広げ、結果、過当競争により利益率の低下が起こっている。

経営統合の歴史

 実は石油産業は、経営統合の歴史でもある。1980年代に石油製品の供給過剰が起こり、96年には石油製品の輸入が自由化された。そして、04年には国内ガソリン需要がピークアウトし、以降、需要は減少し続けている。

 この間、以下のように合併が進んだ。

・85年:昭和石油とシェル石油が合併→昭和シェル石油
・86年:大協石油と丸善石油が合併→コスモ石油
・92年:日本鉱業と共同石油が合併→日鉱共石(93年にジャパンエナジーと改称)
・99年:日本石油と三菱石油が合併→日石三菱(02年に新日本石油と改称)
・00年:東燃とゼネラル石油が合併→東燃ゼネラル
・10年:新日本石油とジャパンエナジーが経営統合→JX日鉱日石エネルギー

 こうして、80年代初頭には17社あった石油元売り会社はJX、出光興産、昭和シェル、東燃ゼネラル、コスモの大手5グループに集約された。それでもまだ過当競争が起こっているのだ。

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

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