日本、国別ブランド指数世界一に 訪日客爆増、企業業績好調…さらなる世界進出のカギとは?
その他、スーツやセーターなど各社72のアイテムが認証を受けたが、審査時点で約2割が不合格となった。こうした取り組みは、経済効果への即効性を狙うのではなく時間をかけて醸成していくものであり、業界の認識としても中長期を見据えた取り組みと位置づけている点が評価される。
求められるJapanブランドへの基準づくりともたらす効果
Japanブランドを軸とした業界の求心力となるコンセプトとガイドラインを持つことが、業界全体の底上げに寄与し、国際競争力ある売れる高付加価値な製品づくりへとつながっていく。結果として「ものづくり日本」として空洞化しつつある製造分野においても、日本回帰の福音が伴ってくる。例えば、J∞QUALITYの謳う純国産品の基準は、1990年代に50%であった国内での縫製比率が現在、3~4%にまで落ち込んでいる状況への打開策にもなり得る。
かつて日本のクォーツ時計に押され大きな打撃を受けたスイス時計産業も、機械式時計の復権とともに「Swiss made」のブランド力によって見事な成長トレンドを描いている。その背景として、Swiss madeをブランドたらしめる「クロノメーター」や「ジュネーヴシール」といった厳格な品質規定への信奉が定着していたことが大きい。
同様にJ∞QUALITYが衣料品におけるJapanブランドへのイメージ形成につながることで、ブランド信奉への心理的バイアスが醸成され、購買行動へと結びついていくことを期待したい。
「すでに形成されている人のイメージを変えることは容易ではない」からこそ、「人の頭のなかにすでにあるイメージを利用する」ことが、マーケティングの基本を成すポジショニング戦略(アル・ライズ/ジャック・トラウト)の基礎だ。例えば、ラーメンのイメージが定着している北海道ブランドでのうどんは売れにくいが、それを逆手に取る方法はあるといった具合である。
国別ブランド指数で1位となり、世界中の人の頭の中に日本に対する多くのポジティブなイメージが形成されることは、マーケティング戦略において大きなアドバンテージをもたらす。だからこそ今一度、各業界が「Japanブランドとは何か」を意識した明確な品質基準づくりに取り組む価値があるといえる。そうした基準のなかから国際標準化へのチャンスが生まれ、例えば、ISO(国際標準化機構)による国際標準化規格へとつながれば、大きな事業機会と共に国益をもたらすこととなる。
昨年、日本のロボット技術の優れた安全性が認められ、「生活支援ロボットの安全性に関する国際標準化規格ISO13482」が発行されたことは快挙であり、日本へのイメージを形成する「安全(Safe)」とも無縁ではないはずだ。
(文=三村昌裕/三村戦略パートナーズ代表取締役、戦略コンサルタント)