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鈴木領一(すずりょう)のビジネスの超ヒント!

会社も社員も不幸にする「正社員採用」というギャンブル 甚大な労力をかけても無駄?

文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネスプロデューサー

ミスマッチをなくす「恋愛」式採用

「採用には、ギャンブル的な要素が多く含まれています。人の真価など、実際に働いてみなければわかりません。特に日本は欧米に比べ解雇条件が厳しいため解雇の自由度はなく、企業のリスクは高くなります。また、採用には、求人広告費、入社手続きなどの社員受入工数、新人教育費用などさまざまな経費がかかります。

 企業は、そろそろ採用というギャンブルに多額のお金を払うのをやめ、いま在籍している派遣社員の中から良い人材を正社員へ引き上げたほうが確実なのではないでしょうか。『がんばれば正社員になれる』という目標は派遣社員のモチベーションを上げ、結果として企業の生産性の向上につながります。

『恋愛』式の採用手法は、採用のリスクとコストをともに減らし派遣社員のモチベーションもアップさせるという、企業にとっては都合のいい手法なのです。

 たったひとつの失敗を引きずり可能性を閉ざしている若者や、自分には向いていないと知りながらも職場にしがみついている若者にも、希望やチャンスが巡ってくると思います。雇用の流動性こそが若者を救う唯一の道であり、『恋愛』式の採用手法は閉鎖的な日本の転職市場に新たな風となるはずです」

 野中氏が指摘するように、現在の日本における企業の採用にはギャンブル的要素が多く、働く側にもチャレンジするチャンスが少ないのが現状だ。たまたま最初の職場の相性が悪かっただけで、その後の人生の可能性を見失う若者がいることは社会的に大きな損失だといえる。

 ブラック企業で若者達がストレスを抱え精神を病んでしまう問題も、日本の閉鎖的な転職市場に原因があるのではないだろうか。雇用の流動性が増せば、仮にブラック企業に勤めていても、その会社を辞めて転職すればいいだけだ。ブラック企業がいつまでも問題になるのは、ブラック企業から人がいなくならないからだ。

 日本企業が転職者に対して閉鎖的なためにブラック企業を辞められず、最後は精神を病んでしまう結果となっているのではないだろうか。

精神を病んでしまった社員への対策

 一方、相性の良い職場にいたとしても、ストレスなどの要因で精神的に病んでしまうケースがある。その場合の対策はないのだろうか。引き続き野中氏に聞いてみた。

「精神的に病んでしまった人を救う仕組みをつくることは可能です。精神を病んでしまった人の受け皿を用意するのも会社の責任だと思います。弊社の事例をご紹介します。

 弊社にはエンジニアが多く所属していますが、エンジニアのようなクリエイティブな職種は、毎日が創造的な作業の繰り返しです。だから、いくら職場環境と相性がよくても精神的に病んでしまうケースがあります。そこで弊社では、沖縄の派遣会社であるヒューマンサポートと組んで、新しい試みを企画しています。弊社のエンジニアが精神的に疲れたら、半年から1年くらい休んで、沖縄で地元の人と交流しながらバカンス気分で仕事をしてもらう仕組みをつくります。沖縄で生活ができるだけの仕事はヒューマンサポートのメンバーが紹介し、たとえばレストランなどエンジニアとはまったく違った職種を経験するのもリフレッシュになると思います。

鈴木領一/コンサルタント

鈴木領一/コンサルタント

 思考力研究所所長。行政機関や上場企業の事業アドバイスをはじめ目標達成のためのコーチングも行っている。プレジデント誌などビジネスメディアへの記事寄稿多数。また100の結果を引き寄せる1%アクション(サイゾー刊)は、氏のコーチングメソッドを初公開した書籍で、主婦から経営者まで幅広い層に支持されロングセラーとなっている。また、出版プロデュースの活動も行い、代表作には小保方晴子氏の『あの日』(講談社刊)がある。

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