エアバスとしのぎを削るボーイング
ボーイングの弱みに関しては、「開発をはじめ、すべての意思決定のスピードが遅い」ということが挙げられました。創業から約100年の同社の従業員は20万人に迫っており、日本でいう大企業病のような状況に陥っているようです。
具体的には、「テスラモーターズやスペースXを率いるイーロン・マスクのような強いリーダーシップを持った人物が不在で、日本の自動車メーカーのような生産性もない」と語られました。
さらに、「確かに、旅客機は多くの人の命を預かる特殊な商品であり、安全性が強く求められるため、時間がかかるのは仕方ない面もあるが、それでもなんとかしなければいけない」と、この点は強く問題視されていました。
また、ライバルとの対比についても聞くことができました。「これまでは小型旅客機に重点を置いてきたボンバルディアが大型機に着手し、近い将来、中国の航空機メーカーも勢力を拡大してくる」といった前置きの後、最大のライバルであるヨーロッパの国際協同会社・エアバスの話になりました。
30~40年前、ボーイングの国際シェアは70%近かったものの、近年ではエアバスと並んでいます。ボーイングは、技術力では決して負けていないものの、エアバスのほうがマーケティング力で上回っているのが、その要因のようです。
ボーイングのマネージャーは、「航空機の開発には通常10年を要するため、10年先の市場の状況を推察しなければなりませんが、エアバスはそうした力=マーケティング力が長けている」という認識でした。
また、新興国などへの売り込みには、外交など政治力も重要ですが、イギリス、フランス、ドイツ、スペインというEU加盟4カ国が後押しするエアバスは、そういった意味で有利な点も多いようです。
さらに、ヨーロッパといえばなんとなくエレガントなイメージがありますが、エアバスはアグレッシブで、伝統のある大手航空会社より新興の航空会社に売ったほうが、営業マンの評価が高まるシステムになっているようです。
「そういえば、残念ながら経営破綻に陥ってしまったスカイマークに機体を納入することになっていたのは、エアバスだったな」と、妙に納得してしまいました。