すっかりしょげてしまった妻に「何も被害がなくてよかった。よく僕に連絡してくれたね」と言って、なぐさめた。相談して、固定電話を留守番電話専用にすることにした。かかってくると自動的に留守録になり、受話器では話せないような設定にした。発信には携帯電話だけを使うこととした。1階と2階の内線電話の使用もやめ、携帯電話同士で話すことにした。住所と妻の姓名がどこで漏洩したのかはわからない。
身に覚えがなければ、無視か警察に相談
当家に到着したハガキの文面側は本記事冒頭の写真とほとんど同じものだった。先方の電話番号はその都度変わるらしく、当家に来たものに記載された電話番号は、警察にまだ把握されていない新しいものだったそうだ。
それにしても、当家の住所や妻の名前などをどうやって把握したのだろう。それによって狼狽した妻が偽ハガキに記載された電話番号に電話してしまったことが失態だったと警察から教えてもらった。
「身に覚えのない訴訟内容に関するはがきを受け取った場合は、はがきに記載されている電話番号には絶対に電話せず、お近くの警察や消費生活センター等にご相談してください」(警察庁 ウェブサイト「特殊詐欺手口」より)
なんらかの理由で漏洩してしまった当家の個人情報によって、このような異様なハガキが到来した。しかも消印がないことから、犯人の手先が直接当家に投函したことが疑われる。妻は電話してしまったことによるショックから、犯人の影に対してすっかりおびえてしまった。
しかし、一般論で言うと、今回のようなハガキによる騙し通達が来ても、無視してこちらから連絡しない限り問題はないという。犯人はなんらかの方法で手に入れた名簿をもとに大量のハガキを送っているので、返信しない限りそれ以上の行動を起こすことはないという。当家の場合、反応して連絡してしまったため、この後いくつかの架空請求や騙しのハガキなどが届くことになってしまうそうだ。
オレオレ詐欺の手口が複雑巧妙化
特殊詐欺のなかで最初に有名になったのが「オレオレ詐欺」だった。今回当家を襲ったのは、特殊詐欺8分類のなかで「その他の特殊詐欺」に分類される、比較的新手の詐欺だ。裁判所を名乗る偽ハガキを大量にばらまき、問い合わせなどでかかってきた電話に対して、「訴訟通知センター」職員なるものが対応し、ほかに弁護士役などが登場して、狼狽した被害者から金を振り込ませるのが手口である。いろいろと情報を調べてみると、こうした詐欺には次のような特徴があるようだ。
・犯人にとっても通報されるリスクが大きいため、実際に犯人が家に押しかけてくる可能性は低い。
・基本的な対策は「無視」。しつこく連絡が来る場合は警察に通報する。
・同居している家族がいる場合は、家族にも事情を説明して、怪しい請求には一人で対応しないように注意しておく。
・本物の裁判所からの書状であれば、書留で送られてくる。ハガキによる通知は偽のものである。
「オレオレ詐欺」の通称で知られる「振り込め詐欺」、今回拙宅を襲った「その他の特殊詐欺」などを含む「特殊詐欺」は、全体としては1万6496件(2018年)と前年から微減している。しかし同年の被害額はまだ364億円もあったという(警察庁の統計による)。
当家のケースが読者の参考となり、他山の石としていただきたい。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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