株主23人が質問に立ち、「今回の問題について、室町さんはまったく知らなかったのか。気づかなかったのなら問題だし、黙認なら辞めた歴代3社長と同罪だ」との質問が飛んだ。8月の記者会見でも室町氏の社長就任について、「再生に向けて、アピールできないのではないか」との辛辣な質問が出ていた。株主の質問に室町氏は「第三者委員会の報告、委員長の会見でも、私自身の関与はないと認定された」と述べる一方、「経営責任は感じている」と認めた。
また、総会では議決権行使助言会社、米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が機関投資家に対して、問題が起きた当時取締役を務めていた室町氏ら3人の再任に反対票を投じるよう推奨していた。
室町氏は「危機的な状況を乗り切ったら、後進に道を譲る」と語っており、暫定的な社長就任であると強調してきた。だが、創業以来の危機といわれている状況を打破するには、強力なリーダーシップが必要になる。東芝社員からは、「腰掛け社長では、家電など不採算部門の構造改革や再建などできない」「室町氏からは覚悟もリーダーシップも感じられない」と容赦ない声が聞かれる。
総会で室町氏から、構造改革について具体的な言及はなく、株主らの怒号が飛び交った。壇上にいた7人の社外取締役が発言する機会はほとんどなく、出番はなかった。株主からは「歴代社長の指示による『粉飾決算』ではないか」「(過去に東芝再建を担った)土光敏夫さんの墓前で土下座すべきだ」「(訂正された)決算も信用できない」「日立はパソコンをやめた。東芝はどうするのか」など、経営陣に対する不信の根深さを示す発言が相次いだ。室町氏は「パソコンに加え、家電なども見直しの対象になる」と述べたが、「厳しい構造改革をやり遂げるだけのパワーは感じられなかった」(記者)という。
株主から室町氏への厳しい評価
東芝は10月2日、総会における取締役選任投票の結果を明らかにした。室町氏への賛成率は76.06%。反対は23.32%に達した。株主の4人に1人が反対したことになる。室町氏の社長就任について株主が厳しい見方をしていることを数字が裏付けた。