ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 日産、西川社長解任は当然  > 2ページ目
NEW
山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

日産、西川社長解任は当然…不正に報酬水増しの一方、社員1万人削減&利益99%減

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

 西川氏はそもそもゴーン氏が逮捕される直前までは「日本人としては随一の側近」という立場にあった。その「もっとも近かった側近」の「No.2経営者」がゴーン被告の日産や社会に対する不法行為を知らなかったはずはない、同罪ではないかという指摘もあった。逆に「知らなかった」とすれば自身がCEOとしてゴーン氏に対する監督不行き届き、つまりガバナンス上の責任が問われる立場だった。

 ケリー氏が指摘していた西川氏の報酬不正問題とは、ストック・アプリシエーション権(SAR)に関するもの。西川社長は13年5月にSARに基づいた報酬を受け取る期日(権利行使日)を設定し、報酬を受け取る権利を行使した。その後、日産の株価が上昇した。西川氏は行使日を1週間ほど後ろにずらして権利を再行使し、当初定められたよりも約4700万円多くの報酬を受け取っていたのだ。業績連動型の報酬制度であるSARでは、一定の期間中に株価が事前に決められた水準を上回ると、差額部分が現金で支払われる。

 本事案が9月4日の監査委員会で報告されたことで、西川氏は「差額は返納する」としていた。しかし、9日の取締役会ではそれでは収まらず、ある社外取締役は西川氏に対して「ただちに辞任すべきだ」と迫ったと報じられている。

実績を示せなかったこと、経営者はそれに尽きる

 しかし、私に言わせれば、西川氏の最大の蹉跌は、日産の経営者としてなんら顕著な経営実績を挙げられなかったことだ。それどころか、西川時代に入ってからの経営状況は大きく後退し、企業価値は毀損されてしまっている。

 ゴーン氏が実質トップだった逮捕前の18年11月の日産の株価は、1020円前後だった。ところが、今月6日の終値は674円と、34%も下落している。企業価値(株式総資産額)としては、なんと約1兆4000億円も毀損している。日産の株主を中心としたステークホルダーとしては、これが西川経営の「1年間の決算」だとしたら憤激に絶えなかったのではないか。西川退陣の正式決定を受けて、9月10日の日産株価の終値は697円となり、市場はこれを歓迎した。

 日産の直近の19年度第1四半期(4~6月)決算をみてみると、売上高は2兆3724億円で対前年同期比12.7%減。トヨタは同3.8%増、ホンダが同0.7%減だった。日産の2桁減収というのは「一人負け」ということだ。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
有限会社MBA経営 公式サイト
山田修の戦略ブログ

日産、西川社長解任は当然…不正に報酬水増しの一方、社員1万人削減&利益99%減のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!