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ユーザがiPodからiPhoneに流れただけ?

ソニー、携帯音楽プレイヤーでアップル抜きに潜む複雑な事情

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ソニー、携帯音楽プレイヤーでアップル抜きに潜む複雑な事情の画像1携帯音楽プレイヤーが好調な
ソニーのHPより
 携帯音楽プレイヤーといえば、「iPod」で知られるアップルが有名だが、国内市場では異変が起きている。「ウォークマン」で知られるソニーがアップルを抜き返し、首位を堅持しているからだ。“元祖”の面目躍如といったところだが、手放しでは喜べない複雑な事情も抱えている。

「もう10ポイント以上は離しているとは思いますよ」。ソニー関係者はこう語る。国内の携帯音楽プレイヤーは2000年代以降、ソニー、アップルの実質2社がつばぜり合いを演じてきた。とはいえ、09年時点では60~70%のシェアを握るアップルに対して、ソニーは30%程度とまったく歯が立たず、大勢は決したとの見方が支配的だった。元量販店店員も次のように語る。

「ハードの機能が大幅に違うわけではないが、ブランドイメージは圧倒的にアップルが上。iTunesのようなネットワークサービスの利便性も高いですしね」

●ソニーが市場シェア50%に

 ダブルスコアで負けていたソニーだが、徐々に差を縮め、12年秋には50%強にまで国内シェアを高めた一方、アップルは30%台後半まで落ち込む。前出のソニー関係者は「本物の音を求める消費者が増えてきて、原点回帰が始まった」と胸を張る。スマートフォン(スマホ)で音楽を楽しむ層が増えたが、スマホの音質では満足できない層が、携帯音楽プレイヤーを新たに買い求めるようになったというわけだ。「当社は音の作り込みは何十年もやってきた。アップルさんとはそこが大きく違う」(同)

 一方、証券アナリストは「シェア逆転といっても、あまり喜べる状況ではないのでは」と指摘する。「アップルの顧客層がiPodからiPhoneに流れた結果にすぎない。スマホで音楽を聴くのに満足できなくて2台持ちする消費者は、ごく少数。アップルにしても、iPodの販売が落ち込んでも、iPhoneがこれだけ売れていれば、なんの問題もないでしょう」。逆に言えば、ソニーは自社の携帯音楽プレイヤーからスマホへの誘導がうまくできていないのではとのうがった見方もできる。

 実際、ソニーのスマホ事業は苦しい。2012年7~9月期、世界出荷台数では初めて、アップル、韓国サムスン電子に次ぐ3位に浮上したが、シェアはわずか5%。30%前後で競り合う「2強」の背中は見えない。加えて、特にシェアが急伸している欧州の販売では「プライドをかなぐり捨て、たたき売り状態でなんとか販売数を伸ばしているのが実情」(経済紙記者)と前途は明るくない。

●スマホに浸食される携帯音楽プレイヤー市場

 携帯音楽プレイヤーの国内市場は漸減が続く。12年度は11年度の570万台規模に比べて100万台以上落ち込み、400万台前半にとどまる見通しだ。

 携帯音楽プレイヤー市場がスマホに浸食され、今後も縮小を続けるのは関係者の誰もが認める。ソニー幹部は、「小型デジタルカメラや携帯ゲーム機器、携帯音楽プレイヤーがスマホと食い合うとの指摘はある。確かにその通りだが、当社の場合、スマホが売れればまったく問題ない」と語るが、前述のようにスマホで2強を急追する抜本策は見当たらない。

 衰退市場での実質的なライバルの退場に伴うシェア回復を喜ぶのではなく、競合ががっぷり四つで組み合う主戦場での戦い方を模索しなくては、ソニーの復活は見えてこない。
(文=江田晃一/経済ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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