なぜ楽天の携帯事業開始は遅れまくっているのか?料金プランすら発表できず不信拡大
日常サービスでブランドスイッチさせることの難しさ
楽天はこれまで、総務省から携帯電話の基地局整備の遅れなどを理由に3度も行政指導を受けた。楽天側にも言い分があるとは思うが、ユーザーに不信感を抱かせてしまったことは否めない。
「一般的な消費者は、結果からしか企業を評価しません。その点、楽天は事業開始前から不信感を抱かせる要因を振りまいてしまっています。さらに、実際にサービスが開始されても、既存のキャリアユーザーを自社にブランドスイッチさせるためには、消費者にそれ相応のメリットが明示できないと難しいでしょう。最近の例であればPayPayの“100億円キャンペーン”などがありますが、当時新興ビジネスだったスマホ決済アプリと比べて、すでに地盤が強固な三大キャリアに割って通信ビジネスに入るのは簡単なことではないと思います」(同)
会見で三木谷氏は楽天モバイルの料金プランについて「他社にはなかなか真似できない料金体系になる」と話しており、これが実現できれば次なる勢力として居場所をつくることができる。だが、これまで事業の進捗状況を見ると、それも半信半疑とならざるを得ない。現状で公開されている試行サービスの「楽天モバイル無料サポータープログラム」では、2020年3月末日までは通信・通話サービスが無料となるが、その他の特典として掲げられているものは対象製品購入時の10,000楽天ポイントの提供とアンケートなどに回答した場合の半年間の毎月1,000楽天ポイント提供であり、他社で実施している特典と比較しても突出した印象を与えるものではない。ユーザーの信頼を回復するためにも、今後楽天は本格的サービス開始までにどんなことをするべきなのだろうか。
「新規事業では早い段階で具体的な内容を示すことが重要です。具体性を欠くと疑心暗鬼を増幅させてしまうからです。試行的サービスの内容をみても、残念ながら楽天は現状でこれができているとはいえません。なるべく早く料金プランなどを明確にして、他社にない自社サービスの魅力を打ち出すべきでしょう。メリットがはっきりと伝わらないことには、前述のように顧客にブランドスイッチの動機を起こさせることは非常に難しいと思います」(同)
いずれにしても、この携帯事業が失敗してしまえば楽天全体の信用問題にもかかわってくる。社運を賭けたプロジェクトだけに、楽天には本格的サービスの開始前にもう少しユーザーの“スイッチ欲”をそそる情報を発信してほしい。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)