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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

なぜ楽天の携帯事業開始は遅れまくっているのか?料金プランすら発表できず不信拡大

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季
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楽天・三木谷社長

 今年10月にNTTドコモ、au、ソフトバンクに続く第4のキャリアとして携帯電話業界に新規参入する予定だった楽天。しかし、9月6日の会見では新サービスについて料金プランなど具体的なことを明らかにすることはなく、10月からはユーザーを限定して試行的にサービスを開始すると発表された。8月段階では10月のサービス開始に「完全に間に合う」と豪語していた楽天の三木谷浩史社長だが、事実上の先送りを余儀なくされた。

 このような一連の楽天の姿勢は、今後の同社の携帯事業にどのような影響を与えるのか。立教大学経営学部教授でマーケティングが専門の有馬賢治氏に分析してもらった。

サービス財には「創造財」と「仲介財」の2種類がある

 まず、楽天の携帯事業参入が遅れているのはなぜなのか。

「携帯事業の通信サービスは無形製品ですが、それを提供する事業者は中継アンテナなどのインフラ整備が必要で、これらはリアルに物財を使用するビジネスです。さらに、こうした装置産業は土地や建物を所有する利権者との調整作業が非常に多くなります。バーチャルモールを主要ビジネスとしてきた楽天のような会社にとって、このような現場に出向いて諸事を調整するリアル事業の側面が多いビジネスは、同社が蓄積したノウハウを反映するうえでは思いのほか難しかったということでしょう」(有馬氏)

 有馬氏によれば、楽天の事業はバーチャルモールにとどまらず、楽天証券や楽天トラベルなど数多くのサービスも展開しているが、楽天という事業者は顧客と顧客を仲介する場所を提供している感覚に近いという。

「サービス財には『創造財』と『仲介財』の2種類があるというのが私の仮説です。音楽データのように知的所有権のあるものを『創造財』と呼ぶのであれば、これらはコピーを販売することでお金が入るビジネスモデルがとれます。一方、バーチャルモールの空間を貸したり、旅行を斡旋したりする『仲介財』は、顧客を仲介して一回一回の取引を成立させないと‟仲介手数料”という売上げを発生させることができません。どちらかというと楽天はこれまで後者のビジネスを主力としてきました。ですが、仲介財ビジネスは企業の規模が大きくなると、従業員の人件費確保などを含めて多くの取引を常に発生させなくては会社が維持できなくなってしまいます。楽天が携帯事業に参入を試みようとしているのも、新たな仲介手数料を確保する機会を生み出したいという動機があるのかもしれません」(同)

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